104 運命の月曜日【挿絵有】
百四話 運命の月曜日!
いよいよ待ちに待った月曜日。
オレはソワソワしながらも休憩時間になる度にエマの教室が見える場所へと移動してその姿を観察する。
「ーー……なるほどな」
確かに遠目で見ていてもエマの周囲にだけ人がいない。
エマ的にはあまり気にしていないようで時間潰しのために持ってきたのであろう小説を読んでいるのだが、その様子をニヤニヤ笑いながらコソコソ話している女子がちらほら。
「このままだとエマへの嫌がらせが次の段階に行くのも時間の問題だったかもしれないな」
西園寺がエマのクラスに訪ねてくるのは昼休み。
これで変わってくれるとは思うが……もしもの時は強引に禁じ手のプランBを使うしかないな。
◆◇◆◇
昼休み。 オレは少し遅れて再び教室を出てエマの教室が見える場所へと向かう。
いやーそれにしても杉浦たちがまた少しでもいなくなってた時でよかったぜ……あいつらがいたらこういった単独行動をした瞬間に連行されそうだしな。
「ーー……あれ?」
クラス内に視線を向けるとエマの席の周囲に3人の女子が。
もしかして仲直りした?
声を聞きたくてもここからではまったく聞き取ることができない。
まぁ解決したのならそれに越したことはないが……。
そう思っていると3人の女子に連れられたエマが教室の外へ。
オレは急いで体の向きを変え、聞き耳をたてる。
「ねぇエマさん、伊達さんまだ怒ってるからさ……手毬担じゃなくなったって嘘でもいいから言ったほうがいいよ」
「そうだよ。 伊達さん怒らせたらみんな逆らえないんだから」
「ほらこれ。 ニューシーじゃないグループのプロマイド。 これ持ってたら手毬担じゃなくなったってアピールできるはずだからさ、これ持って見える場所に置いてなよ」
なんということだ。
優しすぎる……優しすぎるぞエマのクラスの女子たちよ!
見た感じエマを心配している女子3人は比較的おとなしめの雰囲気……あの様子からしてエマのことを心配してくれていたんだな。
「あ……ありがト」
「ううん全然。 実は私も手毬くん好きなんだもん」
「私もだよ」
「私も手毬くん寄りのオール担だから。 だから手毬くんの話は伊達さんたちがいないところで一緒にしようよ」
「うン!」
なるほどな、この子たちもサニーズの『ニューシー』担だったのか。
そして皆同じく手毬担。 完全に同志じゃねーか。
オレと工藤もそうだったが、やはり同じ趣味を持つ仲間って必要だよな……なんかオレのことじゃないのに涙が出てきたぜ。
しかしまぁこれならエマも耐えていけるだろうな。
これなら西園寺が来なくても大丈夫かもしれない。
そう思いオレがその場から離れようとした……その時だった。
「聞いちゃったーー」
「「「!?!?!?」」」
感情のない……しかし結構大きめの声が聞こえたので視線を向けると、エマと同志3人の後ろに腕を組んだ女子が1人。
「だ、伊達さん」
同志の1人が小さく呟く。
マジか、あいつが伊達……てかさっきの聞かれてたのか。
「なんかエマさんと話してるなーって思って話聞いてたらなに? あんたらも手毬担だったんだ」
伊達が冷たい視線を同志3人に向ける。
「え……あ、えっと……」
「私にはニューシーのファンじゃないって言ってたの嘘だったんだね」
「だ、だってそれは伊達さんが……」
「なに?」
「ーー……」
伊達が眉間にしわを寄せながら同志3人に詰め寄っていく。
うわあああ……せっかく出来た癒しのグループが崩壊しちまうよおおお……!
どうにかならないかとオレは脳をフル回転させる。
三好と多田を投入してあの伊達って奴に話しかけさせて注意を逸らすか?
それともオレも手毬担だと言ってオレに矛先を向かせるか……?
くそ、どっちが正解なんだ考えろ!!
オレが悩んでいる間にも同志3人と伊達との距離が少しずつ近くなっていく。
「ちょ、ちょっと伊達サン、やめてヨ!」
エマが怯える3人の前に立ち伊達を睨みつける。
「なに?」
「怖がってるじゃナイ」
「それは手毬担ってことを内緒にしてたのが悪いんじゃないの」
おいおいエマ、相手は小五女子だ。 心理戦に持ち込めばお前が確実に勝利するのは分かってるが、こういった公の場でキレて本性出してもいいことねぇぞ。
オレはヒヤヒヤしながらその様子を見守る。
「別にいいじゃナイ、同じアイドルのことを好きでモ」
「だめ! 手毬くんは私だけのものなんだから! それに私にそんな態度とっていいの!?」
伊達が教室の壁をバンと叩く。
その音にエマ以外の同志3人がビクッと体を震わせて半泣きに。
「5年と6年は同じクラス……私を敵に回したらどうなるか分かってるよね!?」
そう4人を脅した伊達が目の前に立つエマの制服のリボンを引っ張りながら教室内を見渡した……その時だった。
「どうなるの?」
「ーー……!!!」
なんというタイミング! なんという覇気!
現れたのはそう……待ちに待った救世主!! 西園寺希!!!
「どうなるの?」
西園寺が再び伊達に尋ねる。
「さ、西園寺……さん? どうして」
「エマちゃんに用があって来たんだけど……その手はなに?」
「えっ?」
西園寺は腕を組みながら視線を少し下へ……エマの制服のリボンを掴んでいる伊達の手をジッと睨む。
「あ……これはその……あはははは」
焦った伊達はリボンから手を離して愛想笑い。
「エマちゃん私の友達なんだけど」
「え……」
「伊達さん、私の友達に手を出したんだ」
「い、いや……そういうつもりじゃ……」
「じゃあその手はなんだったの?」
「ーー……!!!」
圧倒的な形勢逆転。
伊達の脅威が崩れ去ったことによりその近くで様子を伺っていた伊達の取り巻きたちが一瞬でその場から散っていく。
ていうかこの久々のドン・西園寺の風格……ゾクゾクするぜ。
その後昼休み終了のチャイムが鳴りオレも西園寺もその場から退散。
帰り道でエマから聞いた話ではあの後伊達は体調不良を理由に早退……そして西園寺のおかげでクラスのみんなともまた気兼ねなく話せるようになったとのことだった。
「ーー……ていうかエマ、オレはヒヤヒヤしたぞ」
「なんで?」
「お前あの言い争いのとき結構イラついてただろ?」
「うん」
「オレはいつお前が手を出すんじゃないかと思ってもう……な」
オレはエマの手に視線を向ける。
「え、なんでエマが殴らないといけないわけ? エマ、そんなすぐに手が出る性格じゃないよ?」
「嘘つけい! お前土曜の夜にオレがエルシィちゃんとお風呂入ったの知ってすぐにオレをボコボコにしたじゃねーか!!」
「あれは当たり前でしょ!? 可愛い妹の裸を見たんだから!!」
「しかしあれだな、やはり姉妹は姉妹。 お前とエルシィちゃんって結構似てるし……ということはお前の裸も基本はエルシィちゃんみたいな感じの……」
「へ、変態!! 想像すんな!!」
エマが顔を赤らめながらオレのお尻に蹴りを入れる。
「おいおいそんな激しく蹴ったらスカート捲れてノーパン見えるぞ?」
「ふんだ! エマ今日はパンツ履いてきたから大丈夫だもんねー!」
エマが目の下に指を当てながら舌を出す。
ーー……ん?
「え、エマ今日パンツ履いてんの?」
「もちろん!」
「じゃあ先週したパンツ見せるって言った約束覚えてるよな」
「ーー……あっ」
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今回の挿絵西園寺高画質VERは後ほど作者ツイッター:よすぃ@小説投稿挑戦中(@mikosisaimaria)に載せるのでよろしければ見にきてやってください♪
それにしても丸くなりましたねぇ西園寺。よかったよかった!