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俺と彼女と甘々な幼馴染  作者: @山氏
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第2話 後輩

「将太、購買行こうぜ」


 クラスメイトが足早に教室から出て行く中、蓮はのんびりと俺に近づいてきた。


「早く行かないとなくなるぞ」


「近いからそんなに心配しなくて大丈夫だろ? それに食べられるものだったら何でもいいしな」


 俺たちはゆっくり歩きながら購買部へと歩き始めた。歩いている俺たちの横を我先にと生徒たちが走っていく。


「なんであんなに走ってるんだろうな? どうせ混むのわかってるのに」


「だから先に買って教室に戻りたいんだろ?」


「それもそうか」


 のんびり歩いたわりに購買にはすぐに着いた。距離が距離だから当然ではあるだろう。


「じゃあ俺は外で待ってるから」


「おお。じゃ、ちょっと行ってくるわ」


 蓮を見送り、俺は購買部から少し離れたところにあるベンチに腰を下ろした。


「あ、先輩」


 購買部の中の様子を眺めていると、横から声をかけられる。声のした方を見ると、愛莉よりもすこし小柄な女生徒がそこにいた。


「おお、理香。お前もなんか買いに来たのか?」


 彼女は理香。高校二年の時に委員会の仕事で知り合った後輩だ。比較的おとなしい性格で、入りたい部活がなかったとかで部活には入っていないらしい。


「私はお弁当ですよ。友達がお昼ご飯ないからって言ってたので付き添いで」


 どうやら俺と同じ感じらしい。必要もないのについていってあげるなんてよくやると思ってしまうが、俺も購買に来る意味はなかったことを思い出した。


「先輩は中が空くのを待ってるんですか?」


 理香が購買部の方を見る。つられて俺も同じ方向を見ると、まだ購買部は人であふれていて、しばらくは空きそうもない。


「いや、俺もお前とおんなじで付き添いで来ただけだよ。あの人混みには入りたくないから購買なんてめったに使わないしなぁ」


「先輩らしいですね。……ところで」


 理香は無邪気に笑うと、少し顔を赤らめて真剣な表情で俺の顔を見た。


「先輩、今日の放課後ってお時間ありますか?」


「ん? ああ、別に大丈夫だけど、ってもしかして今日の朝に教室に来てたのってお前?」


「はい、いつもあの時間には教室にいると思ってお伺いしたんですけど……」


「すまんな、今日はちょっと寝坊しちゃってさ。結構ギリギリだったんだよ」


「そうだったんですか。病気とかじゃなくてよかったです」


「ん、ああ、ありがとう。で、放課後だろ? なんか用事?」


「あ、はい。大した用事じゃないんですけど、出来れば二人っきりでお話ししたいんですが……」


「別にいいよ。放課後空けとくわ」


 俺がそういうと、理香は満面の笑みに変わった。正直、彼女のあんなに真剣な表情は見たことがなかったため、少し戸惑っていた。放課後、何を話されるのか気になったが今聞いたところで答えてくれるはずもないので何も聞かないでおく。


「あ、友達来たみたいなんで行きますね。それじゃあまた後で」


 理香は早口にそう言うと走っていってしまった。


「あ、俺放課後どこに行けばいいんだ……?」


 肝心なことを聞き忘れていた。携帯で連絡を取ればいいので、後でメールでも送っておこう。


「待たせたなー」


 俺が理香と別れた直後、タイミングを見計らったように蓮が近づいてきた。


「教室戻ろうぜー」


「そうだな。俺も少し腹減った」


 俺たちは先ほどと同じようにのんびりと教室に戻ると、自分の席に着いた。


 蓮は購買で買ったパンを机の上に広げ、俺は鞄から家から持ってきた焼きそばパンを机に広げる。


「あんた達戻ってくるの遅すぎ。購買に行くだけでどんだけ時間かかってんのよ」


 愛莉がこちらを見てムッとした表情を浮かべていた。


「別に待ってくれって言ってなかったろ?」


「そうだけど、いつもはもっと早いから一緒に食べてたじゃない」


 そう、俺たち三人はいつも昼食を一緒に食べていた。特別遅く戻ったつもりはなかったのだが、思ったよりも時間が過ぎていたようだ。


「まあまあ、今日はいつもより混んでたんだよ。許して!」


 蓮が手を合わせて愛莉に謝る。愛莉も別に本当に怒っているわけではない。そして蓮も本気で謝っているわけではない。いつもの光景だった。


「まあいいわ。それより、ぼさっとしてると昼休み終わっちゃうわよ」


 言われて時計を見ると、あと十分ほどで昼休みが終わる時間だった。


「もうそんな時間か、早く食わないとな」


 俺たちは黙々とパンを食べ始めた。


「そういえばあんた、今日の放課後寄りたいところがあるから付き合ってくれない?」


「ん? ああ、すまん。今日は無理だ」


「あら、そうなの? なんか用事?」


 俺は何の用事かわからない。しかし、理香のことをこいつらに知られるとなると、茶化されるとしか考えられない。


「ああ、ちょっと学校でやることがあってな」


「さっきの女の子となんかすんのか?」


「え? さっきの女の子って?」


 突然、蓮が割り込んできた。やはり先ほどのやり取りを見られていたらしい。どういう話をしていたかまでは聞かれていないようだったが、これで誤魔化しが効かなくなってしまった。愛莉も蓮の発言に食いついてしまっているし、俺は話すことに決めた。


「朝、俺が学校に来る前に女の子が来てたって蓮がいってたろ? その子、前に委員会で知り合った子でさ。放課後俺に用事あるって言ってたんだけど、何の用事かは言ってくれなかったんだよ。二人っきりで話がしたいんだと」


「え……それって……」


 二人は信じられないものを見るように俺を見る。


「ん? 何だよお前ら。珍しいもの見るような目しやがって」


「お前、ホントに何の用事かわかんねーの?」


「わかんねーよ」


 少しイライラしてきて、吐き捨てるように言う。蓮は悪びれた風もなく、俺を見ていた。


「女の子が放課後二人っきりで話したいって言ったらお前、告白しかないだろ」


 一瞬蓮が何を言ってるか理解できなかった。告白? 理香が、俺に?


「いやいやいやいや」


 我ながら否定してて悲しくなるが、それはないと断言できる。


「まあ、お前には愛莉ちゃんがいるから関係ないよな」


「いや、こいつと付き合うくらいなら理香と付き合うから」


 俺は即答していた。愛莉と付き合うなんてありえない。お互いにそう思っているはずなのだ。


「そうね、私もあんたと付き合うなら蓮と付き合ったほうがまだマシよ」


 愛莉も同意しているが、蓮の方がマシと言われてちょっとへこむ。こんな奴の方がマシ。蓮には悪いが、そう考えてしまった。


「マジで? なら俺と付き合う?」


 蓮は調子に乗って愛莉に近づく。


「バッカじゃないの? 将太と比べたらあんたの方がまだマシってだけ。あんたと付き合うのもありえないから」


「ひどいなぁ」


 蓮は傷ついた様子もなく自分の席に戻った。俺は少し気持ちが和らいだ気がした。


「まあそういうことだから今日は一緒に帰れないわ。また今度な」


 俺が話を閉めようと愛莉に言うと、彼女は少し悩んだ後、納得したように頷いた。


「そういうことなら仕方ないわね。私もそこまで空気が読めない女じゃないわ」


「空気が読めないのは自覚してたんだな」


「それで、あんたは付き合うの?」


 俺のツッコミをスルーして痛いところをついてくる。


「それは……って、まだ告白されるって決まったわけじゃないだろ。もうこの話は聞かないでくれ」


 俺はこれ以上追及される前に机に突っ伏して寝たフリをする。二人がまだ何か言っているようだが、すべて無視した。

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