虫食事人記 1日目-1(練集)
ある朝に目が覚めて、虫しか食べられない身体になった事について話そうと思う。
この話は、ある家庭の平凡な青年に起きた。
不運な、不運な、ほんのささいな出来心です。
いつもの通り、目を覚ますと私は食卓へと向かう。
そして、私から愛しい妹に「おはよう」と声をかける。
そうすると『おはようお兄ちゃん!』と返してくれる。
しかし、今日は妹から気持ち悪い目で、見られているのは心苦しい。
私は一瞬、不審に思うが気にもしなかった。
イスに腰掛け、焼きたてのトーストを一口食べるが、気持ち悪くなってトイレへ向かう。
向かった先に父が居たが、父は私を見て真っ青な顔をして、台所へと走り去る。
訳が分からない為に仕方なく食卓へ戻るが、父は包丁を取り出した。
そして訳も分からずに大声で「く、来るな!」と言われてしまった。
父の横に居た母は、私を見ると悲鳴を上げて倒れてしまった。
母からは悲鳴を上げられ、父からは、包丁を取り出されて『く、来るな!!』と言われる始末。
なぜ、こんなことになったのか分からない。
「お、お前は誰だ!」
父は包丁を両手で強く握りしめている。
私は、ますます訳が分からなくなってしまう。
「やだなぁ~父さん。からかっているの?」
「うるさい化け物め!」
「訳が分からない……」
「そ、それ以上近寄るな!」
父は包丁を振りかぶり攻撃してきた。私は攻撃を避けて外へと走り出した。
外へ出ても、道行く人々や近所の人は、私を見て悲鳴を上げて逃げたり、驚きに満ちた顔をしている。
「本当に今日は何なんだ!?」
訳も分からず道を歩いていると、サイレンの音と共にパトカーが3台近づいて来て、私を取り囲む。
警官が拳銃を構えて声を張り上げた。
「抵抗するな、化け物が!」
「え……化け物って誰の事ですか?」
「お前の事だ。化け物!」
「え、そんな事ある訳ないじゃないですか!? 善良な市民ですよ!」
また冗談を言っている。私は人間なのに……。
「とぼけるな、化け物に市民権がある訳ないだろ! ともかく身柄を拘束する」
私は手錠を掛けられてしまった。