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夕焼けの森の優しいオオカミ

作者: 月雲 燎

あるところに、小さな村がありました。その村には小さな女の子がお父さんとお母さんと仲良く暮らしていました。


小さな女の子は、この村には1人しかいないので、皆から「ロッテ」と呼ばれています。


ロッテはお母さんががとってもだいすき。


そんなロッテが暮らす村には


「夕日が沈み始めたら、あの森には行ってはいけない」という言い伝えがありました。


その森は、おいしい林檎の木がたくさんあることをロッテも知っていました。


あるひ、ロッテのお母さんはたいへんな熱をだしてしまい動けなくなってしまいました。

お父さんは、村から町へ切った木を売りに出ているため、今日は帰ってきません。


「おかあさん!わたしもりへいってりんごをとってくる!あまくておいしいりんごをとってくるから!」


お母さんが小さな声で呼びとめるのも聞かずに、ロッテはいちもくさんに森へとかけだしていきました。


森の中、バスケットをもったロッテはりんごが1個でもなっていないかと、森の中を必死でさがしまわりました。


真上にあったお日様は、どんどん遠ざかっていきます。

ロッテは悲しくなって、涙がぽろぽろとこぼれてしまいました。


泣いて泣いて泣き疲れて、ロッテはねむってしまったのです。



目が覚めると、辺りはすっかり暗くなっていましたが、ロッテは森の入り口にいました。

ふしぎなことにバスケットいっぱいのりんごと、1枚のおてがみとともに。


-いまはりんごはなっていないので、ぼくのおうちのりんごをもっていってください。-


優しくやわらかい文字でえがかれたおてがみをだいじにしまいこんで、ロッテは家へとむかいました。


家に帰ると、ロッテのおかあさんは泣きそうになりながら娘をむかえました。

「おおかみに食べられたんじゃないかと心配で心配で・・・」

おかあさんはそういいながら、ロッテがもってきたりんごを1口かじり、うれしそうな顔をうかべました。


次の日の朝、おかあさんの熱はすっかり下がって元気になり、たくさんのりんごがあまったのでアップルパイをつくってくれました。


ロッテはそれとちいさなおてがみをバスケットにいれ、またあの森へとむかいました。

森の入り口にバスケットをおいて、ロッテは村へと帰っていきました。


その次の日の朝、バスケットの中にはたくさんの木の実と、お礼のおてがみが。

その次もその次も、ロッテはバスケットのお土産とおてがみをもって、まだ見知らぬおともだちへとどけにいきました。


おてがみには、見知らぬおともだちが森の中でひとりでくらしていること。

今年の冬はすごく寒くなること、でも来年のりんごがとっても甘くておいしくみのること。

りんごのジャムはとってももちがいいこと、木でつくった食器はとてもあたたかいこと。

ロッテのしらないことがたくさんかいてありました。


ロッテはいつしか、見知らぬおともだちに会ってみたいとおもうようになったのです。


季節がめぐって、冬がきて、雪がつもった日。

おともだちのおてがみにはこう書かれていました。


-さいしょのまんげつのひ、ゆうひがしずんだころにあいましょう。-

ロッテのこころはとてもウキウキしました。


ランプとコートをもって、バスケットにはロッテのおかあさんがこさえたパンとロッテがいちばんすきな絵本をいれました。


ロッテは森のおくへとすすんでいきます。

白い雪に、ゆうやけのオレンジがそまって、とてもふしぎなこうけいでした。


森のさらにおくへすすむと、木でできたテーブルといすがありました。

「とってもすてきなテーブルといすだわ!」

ロッテはうれしそうに雪をのけ、バスケットをテーブルにおき、おともだちを待ちました。


そのうち、夕日が落ちはじめましたが、ふしぎとあたりは暗くありませんでした。

ロッテがこわくて泣きだした、あの夜とはちがうけしきでした。


夕日が落ちても、あたりはずっとゆうやけのオレンジいろだったのです。

そして、雪をふむあしおとが、小さく、でもたしかにきこえたのです。


そのあしおとの主が、ロッテの前にあらわれたとき、ロッテは思わずいすから立ちあがりました。


4つのあしをちにつけ、ふさふさのしっぽをゆっくりゆらした

オオカミがこちらをみつめていたのです。


ロッテはいいました。

「まぁ!わたしのはじめてのおともだちはオオカミさんだったのね!」

きっとロッテのえがおに、オオカミさんもびっくりしたのでしょう。

そこからうごけずにいました。


けれどロッテはかけよって

「ありがとう、とってもやさしいオオカミさん!わたしのママあなたのおかげでいまとってもげんきなの!」

とオオカミさんにだきつきながら、おれいをいいました。


すると、とてもちいさな、けれどとてもやさしいこえがしました。

「ぼくも、はじめてのおともだちですごくうれしい…。ごめんね、ぼくは

ぼくはとてもこわがりだから、きみがぼくをみてにげたらどうしようって、ずっとずっとこわかったんだ。」


ロッテはいいます。

「そうね、さいしょにあったらきっとこわくてにげてたわ!でもあなたのおてがみがあったから、あなたのりんごがあったから、わたしたちこんなになかよくなれたのね!」


オオカミさんはそんなロッテのことばに、うれしそうにしっぽをふりました。


それから二人は、ロッテのおかあさんがこさえたパンを一緒に食べ、オオカミさんがもってきたあったかいスープを飲んでぽかぽかな気持ちになり、オオカミさんに絵本をわたして、ロッテは村へともどっていきました。


「オオカミさん、わたしの村ではオオカミさんはとってもこわいと言うの、でもそんなことなかったわ!でもオオカミさんとともだちになったのはふたりのひみつね!」

ロッテはえがおでオオカミさんに告げました。

オオカミさんは応えます。

「きみがもしも苦しくなったり、悲しくなったり寂しくなったらぼく、ぜったいにロッテのところにいくよ!約束する。

ぼく、あまりうまくしゃべれないけど、忘れないで ぼくはいつも きみのそばにいる。」


こうして、夕焼けの森で小さな女の子と優しいオオカミさんは本当におともだちになったのでした。

これからいろんなことがたくさん、たくさんあることでしょう。


でもふたりなら大丈夫。


だってこんなにも仲良くなれたのですから。


黄昏の森の優しいオオカミのスピンオフというよりは、要となる大事な物語です。

こちらを先に読んでもらっても構わないように作りましたが、できれば両方読んでいただけると嬉しいなと思います。


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