精霊
孤独とは死に至る病である
うーん、服は何とかなった。
大事なとこを隠しただけの、見た目完全原始人。
あ、腕?生えたよ。えー、生えましたとも。
一時間くらいしたらにょきにょきと。もはや何も驚くまい。
女子高生としての大切なものを二次曲線的に失ってる気がする。
そんなことないと誰か言ってくれ。いや、本当に。
// 似合う~かわうぃ~
……ただし、テメーはダメだ。
「ありがとう。それと死んでくださる?」
// ええ!なんでなんでひどぉい
// 愛され系精霊には優しくしないとダメなんだぞ☆
「あ”あ”あ”あ”?あ”んだっでぇぇ??」
// ひぇ、顔が怖い。ごめんって。
// でも、ちょっとくらい褒めてくれてもいいじゃん?
// せっかく一生懸命 **ちゃんの体治してあげたのになー
// 頑張りすぎて疲れちゃったなー。
「え、それはどういう……?」
// ???
// 言葉のまんまだよ?生えてきたでしょ?
「…………生えた」
// それ、わたしがやりました。
「…………まじか。ありがとうございます」
// **ちゃん。腕生やす前に毛皮で服作り始めるんだもん
「だって、流石にブラとパンツだけじゃ恥ずかしいし」
// 誰も見てないとこでも気にする**ちゃん好きぃ
// 女子力感じるぅ
「あ、ほんと?感じちゃった?なんだ、ひょっとして話わかる系?」
なんだ意外といいやつ?っと思いそうになって踏みとどまった。
危ない危ない。あやうく流されるところだった。
緩い口調ではあるけれど、そもそもこいつが元凶なのは変わりない筈だ。
それに腕を治したといったが、一体どうやった?そもそもこいつがどこから話しかけているかも分からない。存在そのものがうさん臭くて仕方ないのだ。
// 腕はぁ、体組成を上手く配分して治したよぉ
// てゆーか薄く伸ばしたって感じ?だから今、ちょっと血が足りないかもぉ
思考を読まれた!!??
// んー?無意識だったのかな?気づいてると思ったけどぉ
// 私は今、**ちゃんの頭の中にいるのでしてー
・・・
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・「寄生虫?」
// わー、ざんしーん
「あ、頭に住み着くタイプのやつ。いつだ?昨日スイーツ食べた。それ??」
混乱する。驚くことは無いと言ったな。あれは嘘だ。
現実的に、頭の中で奇妙な声が聞こえたり、『頭の中から語りかけています』と言われたら結構怖い。
っていうか、この今考えていることも全部筒抜けってこと?
// それはモチのロンでしてー
「…………これから、ずっと?」
// はいでしてー
(女子高生が悶えております。絵面が汚く皆様のイメージを損ねる恐れがあるため少々お待ちください)
(綺麗な海とか、動物の写真を眺めなら、ゆっくりお茶なんかもいいですね)
「あ”あ”あ”-嘘だー。人権侵害だぁぁ!!私のプライベートの時間を返せー」
// 精霊だからぁ
// そういうものだと思ってくださーい
「無理!!無理!!本当に無理!!いきなり頭の中に住み着きましたって言われても無理!」
// うーん。いきなり住み着いたわけでもないのだけどぉ
// **ちゃん的にはいきなりだよねー
// 生れたときから、ずっと一緒だったんだよぉ?
え、あ、はい。それは生まれた時から私はおかしかったってことですか?
// **ちゃんはおかしくないけどぉ
// ここに来るときに私が精霊になったから話しかけられるようになったのでしてー
// ほらぁ、私って**ちゃんの『血』だからぁ。
「ん?んん???また話が分からなくなった。あんたって私の『血』なの?」
// そうでーす。『血』の精霊でーす。ぶぃぶぃ!
姿は確認できないが、両手でピースサインしてる気がする。腹立つ。
「あぁ、なんかもう頭痛くなってきた」
// 治す??
「…………いい」
仮に本当にこいつが私の『血』だとして、私は今、自分の『血』と口論している。
どういうこっちゃ??
「……あのさ、じゃあさっき『血』で刀を作ったのもあなたなの?」
// それは**ちゃんだよ?
// 私は**ちゃんの願いを事象に変換する函数みたいなものでしてー。
// **ちゃん上手くできたなーって感動したもん
お、おぉよく分からないけど、あれは私がやったのか。凄いな私。
「はぁ……なんか、もういいや」
お腹一杯とはこの事。整理しなきゃいけないことが他にも山ほどある。
命に関わることから優先順位をつけていけば、とりあえずこの精霊の順位は低い。
脳内に語り掛けてくるのは非常に嫌だが、死ぬほどじゃない。
// あげてこー、私の優先順位あげてこー
無視だ。無視。
私のこと、これ以上どうこうするって気はないんでしょ?
// ないよー。てゆーか私も『私』だもん。
// **ちゃんが死んじゃったら私も死んじゃうよー
そういう事なら、こいつの事はドラ〇もん的な便利ロボだと思っておこう。
傷も治してくれるし、生きるための戦うこともできる。
「現状、一番問題なのは、やっぱりこの場所のことなんだよね」
見渡す限り広大な砂漠である事はわかる。オアシスもあるし、食料も……まぁ無いこともない。
私が生きていくのに、少なくとも数日はもつと思う。
ただ、それだけではダメだ。
自分の置かれた現状を把握するために、国や街に行って情報を集めたい。
そのためには、やはりこの砂漠を脱出する必要がある。
あんな犬のいる世界だ。国や街だってどんな物かはわからない。
そもそも存在しているかだって、怪しい。
それでも、何もしないよりは遥かにマシだ。
私はこんなところで死ぬ気はない。
っと、一応聞いておくけど……
「あなたは何か知らないの?この場所の事」
// うーん。この世界のことまではちょっとぉ
// 砂漠ってことはわかるのでしてー
情報は無し。うん、なんかそんな気がした。
だって精霊っていったって私の『血』なんでしょ?
それなら『私』については知っていても、この世界の事までは知らなくたっておかしくないよね。
// 役に立たなくてごめんね~
「はぁ、いいよそんなの。私の『血』なんでしょ?じゃあ適材適所。『血』の役割は私を守ること
。考えたり、何か決めたりってのは多分本体の私がやらなきゃいけないんだ」
それでも、健全な女子高生の置かれる境遇じゃないよねぇとも思ったりする。
しかし何はともあれ、砂漠を越えなきゃいけなくなった。
それも、化物がいるこの砂漠を。
「そういえば、あなたのこと私の『血』っていうのもアレだし、それに出来ればあなたとかじゃなくて、ちゃんと呼び方を決めたいんだけど、なんて呼べばいいかな?」
私がそういうと、しばらく沈黙した後、そいつは言った。
これから先、どんな時もずっと一緒にいることになる相棒の名。
// うーん、じゃあ『血』の盟約からとってぇ
// メイちゃんで!!
「はい、却下ぁ!!」
22時投稿目指してたけど、だらだらしてたらこうなった。
反省はしてる。後悔もしてる