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犬犬犬

音楽が聞こえない人には、ダンスを踊る人が狂ったように見えるだろう


 初手でゲームオーバーって言うのは、無い話じゃないと思う。

 あの有名な『配管工が主役』のゲームだって、一番多くプレイヤーを殺したのはボス亀じゃない。1面の最初の雑魚キャラだって誰かが言ってた。

 操作に慣れてなければ、そういうことだってあるのかもしれない。

 クラスの男子たちに言わせれば、死にゲーだとか覚えゲーだとかで何度も繰り返す事でゲームをクリアするのが普通だそうだ。

 私にはよくわからない。だってソシャゲちょっとやるくらいだし。

 死にゲーて何さ?死にゲーって。

 一回死んで()()したって言ってたけど、二回目死ぬの早すぎない?

 何も覚えることないんだけど。

 せいぜい、あの、変なの……なんだっけ?まぁ、いいや……

 

 三首犬は噛みついた獲物が抵抗しなくなるのを確認すると、それを四つに噛み千切った。

 一つは左の自分のもの、一つは右の自分のもの。一つは真ん中の自分のもの。残りが仲間のもの。

 多く頂けるのは、獲物を仕留めた者の特権だ。

 広大な砂漠の中で獲物を見つけるのは困難で、仲間を喰うこともある。

 だから、今日は運が良い。

 仲間たちに合図を送り、自身は仲間たちから少し離れた岩陰に向かう。

 あまり近くにいると、興奮した仲間に自分達の分まで奪われかねない。


 彼らは砂漠を往く者に『断罪者』と恐れられた。

 獲物を喰らう様が罪人の四肢を捥ぐように見えることから、そう呼ばれるようになった。 

 土佐犬を大きくしたような筋骨隆々の体躯に、ドーベルマンのような精悍な顔つき。黒い砂漠に良く馴染むまだらな灰黒色の体毛は、熱い砂漠の中でも不思議と熱を吸収することがない。

 中でも長にあたる彼は、その平均的な三首犬より更に一回り大きく毛並みもいい。

 ぐちゃり、ぐちゃり、ぐちゃりと三匹分の咀嚼音をたてる。

 体は一つ。されど意思は三つ。肉の好みも違う。

 左右は柔らかいもの。真ん中は歯ごたえのあるもの。

 そしてこの獲物は格段に美味い。今まで喰らってきた中で一番かもしれない。

 肉はとろけるように柔らかく。毒もない。

 たまに砂漠にくる奴らに似てたが、それよりも美味い。

 ただ、残念なことが一つあった。

 味は良いが、あまり喰うところがない。

 もっと量があれば最高の食事だっただろうに。

 これなら仲間に譲らず独り占めした方が良かったかもしれない。

 そうだ。こんな肉、仲間に譲るには勿体ない。

 それなら、奪ってしまえばいい。

 彼らの様子を見るために、一旦食事を中断。

 腕は半分ほど喰ったが、頭部はあまり手をつけないでおいた。

 どんな生き物だって、そこにあるのは珍味で、デザートだ。他には替えられない。

 もし、既に肉がなくなっていても(この獲物ならありうる)、これさえあればまだいい。

 はやく戻って確かめねば。

 利己的な感情もそのままに、犬は来た道を戻った。

 そして、手つかずの獲物を見て、歓喜に震えた。

 何があったかは知らないが、仲間はまだ食事を始めていない。


 だが、すぐに違和感に襲われる。


 彼の知っている生き物は。頭を食いちぎれば棒きれのように死ぬ。彼らを除いて。


 殺したはずの生き物は、棒切れのままそこに立っていた。


 そして自分たちを見つけると?ゆっくりこちらに向かって歩き始め、、、


 気づけば自分達の通った道を辿り、食後にとっておいた頭部を抱えていた。


 あまりの事に呆然とし、今度はこちらが立ち尽くす。


 そんな様を嘲笑うように、それは動き始める。


 狂ったように、跳び刎ねながら。

 

********************************************************************************

 

>> Tutorial Start

 >> Set DefaultProgram

 install element->Blood

 uninstall element->unnatural.death

uninstall element->natural.human

uninstall element->natural.timeSpec


 

 ごきげんよう。お父さん、お母さん、天国の弟。

 今、私は私の生首を抱えたまま犬と戦っています。

 意味がわからないと思いますが、私もよくわかっていません。

 あ、私は生首で、戦っている私のからだは勝手に動いています。

 戦いはそれはもう壮絶で、私は何度気を失いかけたか分かりません。

 そこいらには犬の死体が四匹転がっています。

 殺したのは私。私・ザ・ボディ。血が一滴も流れてないけどどうしたの?

 格好は寝たまんまの姿。下着だけ。もう、服を着て寝なさいってあれだけ言われたでしょ!

 しかし、下着だけだと動きやすいのもまた事実?きっとそうだ。

 あぁほらすごい。宙を舞って、犬の頭部に蹴りをいれた。

 腕も頭も無いので、蹴ることしかできない!

 ここで逃げの選択肢はないのでしょうか。ないですか、そうですか。

 ただ、負けじと犬も三つの首で喰らいつきます。

 あぁ、主を失った体も頑張っていましたが、流石に万事休すか!?

 しかし、あぁ!何と云う事でしょう。

 、、、犬の首の一つが吹き飛びました。

 中で何かが弾け飛んだように。潰した残骸は柘榴のように甘酸っぱそう。

 何がどうしてそうなったのか、さっぱりわかりません。

 犬は痛みに悶え転がります(死なないのが驚きですが、残り二つあるので、そういうものなのでしょう)

 ただ、闘志は衰えず、すぐさま立ち上がります。

 今度は警戒しているのか、不用意に噛みつきません。ぐるぐると唸っています。

 そうです。彼らには爪も牙もあるのだから、持久戦に持ち込んだって良いのだ。

 弱らせてから、喰う。戦術としては正しい。

 周りにはもう元気な仲間が一匹も残っていないのだから。

 両者見合ったまま(片方は一応私が見てる)。緊張の膠着状態が始まった。

 解説・実況はこのまま私、生首がお送りします。

 おぉっとーここで動きが!!

 私の躰が高々と私を投げ上げた!そんなに高くないけど怖い!!

 投げる?投擲かな?あ、でも肘から先無いや。

 あと、出来たとしても、それは怖いからできればやめて欲しい!!本当に!!

 投げ挙げた頭を、体は器用に首元でキャッチ!

 これで見た目生首じゃなくなった!……で!?

 あ、なんか首元ちょっと変な音がする。何コレ気持ち悪い。あとちょっと痒い。


 じゅくじゅくじゅくじゅく(※音はかなりデフォルメされております)


 ……あれ、音がやんだと思ったら、なんかさっきまでと違う?

 あ、なんか体が軽いかも。ん?からだ?

 えぇぇぇぇ!!くっついてるぁぁああああああ!、、、、え、くっつ……えっ?えっ!!

 

 「生きてる!!!私すごい!!!くっついてる!!」


 感動に思わず跳びはねる。首から下がくっついてる喜び。


 「体もなんだかいつもより軽いし!!」


 ・・・あ、腕の無い分か。


 ッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おろろおろろおろろろろろろろろ(※音はかなりデフォルメされております)


 「痛い痛い痛い痛い!!!死ぬ死ぬ!!腕っ!!ない!!!」


 腕がない。ゲロまみれの口を拭う手段がない。だから、もがいて転がって砂だらけになる。

 そんな私の様子を気味悪がってか、単にゲロの匂いを嫌がってか、犬が近づいてこないのが不幸中の幸いか。


 涙と下呂に砂がくっついて、きっとひどい顔になっている。

 

 // チュートリアルしゅーりょーでーす

 // あとは**ちゃん自身ががんばってくださぁい

 // わたしは疲れたのでちょっとやすみますぅ


 忘れもしない癪に障る声。

 いつか絶対に張っ倒してやる。だけど今は無理。文字通り倒す手がないし。


 「あ、ちょっとまって!!せめてこの状況なんとかしてからにして!!」


 // えー、ここまで大サービスですよー?

 // わんちゃんも残り1、、、2/3?ですし、


 「腕っ!手っ!だって、、、、無い!!痛い!!」


 // うそうそー。適当に生やしてくださーい

 // ちゃんと()()()ので痛くもないはずでーす

 // それじゃあまたあとでしてー


 適当に生やしてって、プラナリアじゃないんだよ?うそでしょ?

 切ったら先から再生する微生物じゃないんだから、、、

 それに痛みがないなんて………


 「あ、本当に無い。え、これ大丈夫なの?人体に痛みはうんぬんかんぬんだとか……」


 まじまじと腕をみつめる。さっきも思ったけど、血が流れてないんだよなぁ

 不思議な力で流れがせき止められている。なにはともあれコレで死ぬことは無さそう。


 途端にほっとして力が抜ける。しかし、その弛緩も犬の咆哮によってすぐに緊張する。


 あっと、いけない。さっきは不意打ち喰らったけど、まだ犬がいたんだった。

 今度は一対一。ただの女子高生と首が二つの犬。


 、、、うん。それでも勝てる気しないんだよね。

 

 せめて刃物でもあればマシなのかもしれない。それとも素人に刃物なんて焼け石に水かな?

 でも、私はそうは思わない。使えるものがあれば使うべきだ。

 安心したら、不思議と頭は冴えていた。出来る事が、わかるという奇妙な感覚。

 妙に落ち着き始めたのも、そのおかげなのだろうか。


 // (エレメント)はあなたの望むままに。


 遠くであいつの声が聞こえた気がした。


 勝てる気はしない。だけど死ぬ気もない。だから、ただ戦う。


 私は無い右腕を挑発的に突き出した。躰は地面に転がったまま、姿勢は低く。


 その姿勢を降伏と見たのか、二首の犬が左右から首を引きちぎるため、飛び掛かってくる。


 それに合わせ、私は一方の首に腕を喰らわせた。


 噛みつかれた腕から、血が噴き出す。


 冷静気取っておいて、やっぱり怖いし痛い気がする。


 ()()が出来る気がするのは、それを私が観たから。


 そういう力が私に()()と、実感してしまったから。


 溢れた血を纏め、刃物を象るイメージ。


 「私は喰い物じゃない!!!」

 

 声と共に無い筈の腕から生えたそれは、犬の頭を口から脳天まで突き破った。


いっぱい書いたなーっと思って4000弱。万越えの投稿に戦慄してる

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