第7話 異世界料理
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「それじゃ、おじさんありがとねぇ~」
「おうまた来てくれよ~」
こうして俺たちは鍛冶屋のおじさんのもと後にした。
なんだか得たものより失った物の大きい気がする……(金)
「よしそれじゃあさっそくクエストにレッツゴー! って言いたいけど……」
そこまで言いかけて白は掛け声と共に振り上げた腕を胸の前で組み直し、少し悩んだような顔をする。
その理由は明白だ。
俺の武器作りに想像以上の時間を使ったので辺りはもう暗くなり始めてしまっている。
今いる場所が路地裏ということもあり、レンガ造りの建物の間から差し込んでいる月明かりでかろうじて足元が見えるくらいだ。
これからクエストを受けるなんてことは……まぁ無理かな?
「まぁ今日のところは帰りますか」
「ああ、そうするか」
「暗くなったら危ないもんね」
白の意見に俺とグラスが賛同し、3人? 一致の意見で今日のところは帰ることになった。
日が沈み、人気がなくなった道に俺と白の足音だけが響く。
ちなみに何処ぞのチビドラゴンは「飛ぶのめんどくさ~い」とかほざいて白のフードの中で眠っている。
月を見上げながら歩いていた俺はふと前の世界のことを思い出す。
いつも一緒に遊んでいた友人、ちょっと気になっていたクラスのマドンナ、一人寂しく歩いた通学路
思い返せばやり残したことなんて数えきれないほどある。
両親も、いなくなった一人息子を必死に探してくれているだろう……多分。
……でも、今こうやって白達と一緒にいるってのも案外悪くないかもな……
『ホワイトルーム』に戻るとさっそく今日の夕食作りが始まった。
「今日はタスクくんがこの喫茶店に入ってくれたお礼に豪勢な食事を作ろ~」
「「おー!」」
「って……えぇ―――!?」
いつから俺がこの喫茶店で働くことになってるんだよ?
俺が困惑しているとそれを察したように白が、
「別にいいじゃん……どうせここを出て行っても行くあて無いんでしょ?」
白の言葉が俺の心に突き刺さる。
うっ……それを言われるとなにも言い返せない……でもまぁ行くあてがないのは事実だしな
この世界についてももっと知りたいし、ここにとどまるのもありかな……?
俺は額に手を置き目を瞑って考える。
確かにこの世界に来たばっかりの俺では正直、普通に暮らしていくは難しいだろう
これから先安定した職に就けるとも限らないし、白たち以上に頼れる存在も多分できないだろうな。
そういったことを考えればここにとどまるのもあり……かな?
「本当にここにいてもいいのか?」
一応白に確認を取る、いきなり「クビ!」とか言われたら困るしな……
すると白は安心したように笑うと
「もちろん」
と一言言ってくれた。
まさかこんな形で職にありつけるとは思ってもみなかったが、これも運命ってやつなのかもな
こうして俺の異世界での就職先が無事? 決まった。
「よかったよ、いや~前々から力仕事担当の人がほしかったんだよね~」
えぇ~ただの雑用係じゃないですか、ついさっき運命とか言ってた自分が恥ずかしいな……
まぁ実際女の子とチビドラゴンだけだったら力仕事とか難しいしな
「じゃあ白、これからよろしくな」
「うんうん、こちらこそよろしくね」
「さて、それじゃあ夕食作りを始めますか」
「「おー!」」
料理……って言っても俺はただ材料を運んだりとかお皿を出したりとかしてただけだが
ついさっき白たちが料理していたところをチラッと見たら俺の見たこともないような食材ばっかりだったんだよな、まぁなんとかなるだろ。
~小1時間後~
「やっとできたね~」
最後の料理をテーブルに置いた白が「ふぅ」と息を漏らす。
やっぱり三人でやると早いな~(俺はただものを運んでただけなんだが)
俺もできるだけ頑張った風な感じを出すため、かいてもいない汗を袖口で拭う。
「じゃあ食べますか」
「「「いただきまーす!」」」
異世界に来て初めて食べるごはんのメニューは、なんかわからない肉のステーキと、キャベツのような野菜のサラダと、普通のピザと、よくわからないスープと、その他もろもろ。
……てかなんでピザだけ普通なんだよ! ほぼ俺の知らない料理でテーブルが埋まってるんだが?
2人は先に料理を食べだしたが俺は異世界のよくわからない料理を目の前にして固まっていた。
「あれ、食べないの?」
白が心配そうな顔をしながら首を傾げて聞いてくる。
いやいやこれ、食べても大丈夫か?
「なに言ってるの大丈夫に決まってるでしょ」
白が笑いながら答える。
白たちも食べてるし大丈夫……かな? っていうか確か白って状態異常無効のスキル持ってたよな? 全然あてにならないんだが……
おそるおそるスープを口に運ぶ。
「なにこれ!? うまっ!」
このスープは口に入れたとたん何とも言えぬうまみが口いっぱいに広がり飲み込んだ後、すぐに全身がポカポカと温まってきた。
(うますぎだろ……この材料なんだよ)
「そのスープは北の方で捕れる『ライトサーモン』っていう大きくて、めっちゃ光ってる魚をにこんだ出汁で作ったスープだよ」
なにその光ってるサーモンって、怖いんだけど。
スープの説明が終わると次に白は謎のステーキのような料理を指差して説明を始めた。
「それで、こっちのステーキ肉が『ケルベロス』の肉だね」
あれ、ちょっと疲れてるのかな? 今ケルベロスって聞こえたんだけど……
「一応確認なんだが、ケルベロスってあの3つの頭を持ってるでっかい犬のことか?」
あのなんだっけ冥界の番犬っていわれてる、いやまさかねそんな怖いバケモンがね目の前にあるこんなおいしそうなステーキになんてなるわけないでしょ。
「そうだよ、この間グラスにちょっかいだしたみたいでさ、そうだよねグラス」
「そうそうこの前近くの草原でお昼寝してたらいきなり火属性魔法打ってくるんだよ、だれでも反撃するでしょ?」
グラスが「当たり前でしょ」と言わんばかりの顔で答える。
マジもんだったんだけど……いや、ケルベロスなんかに反撃すんのお前だけだよ、てかなんで草原にケルベロスがいんだよ!
ほら、もっと違う場所があるでしょ例えば薄気味悪い渓谷とか……
「いや~ホント大変だったんだよ? グラスったら周りの森まで凍らせちゃうんだよ、証拠隠滅に何時間かかったと思ってんの?」
これって話についていけない俺が悪いのか? 間違って森凍らすとかついていける方がおかしいだろ……
そしてそこ! 証拠隠滅とか言わない!
「あの時はびっくりしただけだよ、でもケルベロスの肉はおいしいよ~タスクも早く食べなよ」
「そうなのか……じゃあ一口……」
『ライトサーモン』のスープの時以上に警戒しながら食べてみる。
なんか毒でも入ってたらどうしよう、その時は白に助けてもらおう
パクッ モグモグ……
「うまっ!」
肉を噛んだ瞬間に肉汁があふれ出し、一瞬で口の中が肉汁でいっぱいになる。
(これ本当にあの怖いケルベロスの肉なのか? )
「ね、おいしいでしょ~」
白とグラスが自慢げにこっちをみてくる。
「くやしいがめちゃくちゃうまい」
「口に合ってよかったよ。おかわりはいっぱいあるからどんどん食べてね」
こうして俺の就職を祝う? 夕食は小一時間続き、俺たちが満腹になったところで今日の夕食は幕を閉じた。