第22話 酒場のおじさんからのありがたい情報①
「あれはつい三日前の事だった……
この町は事件や争いなんてものとは無縁といえるほど、ごくごく普通で穏やかな町だった。
目立つ物は何もなく、特徴も無い、この町を訪れる人も年々減ってきていて、いつしかそれが町全体の問題になるほどだった。
しかし、そんなこの町に奴らはやってきた」
―三日前―
タスクがこの世界にぶっ飛ばされた国から西へ数十キロ……旅人の休息の場所と知られるありふれた町、《ウェストタウン》……この町は旅人達から西の町と呼ばれ、旅の休息の場所として親しまれていた。
そして、この日もこの町の住人達は普段通りの生活を送っていたのだ。
そんな中、奴らは二十人ほどの人数でこの町にやってきた。
その一人一人が十字架の刻まれた豪勢な鎧を纏っていて、明らかに旅の者……という雰囲気ではなかった。
当時、町の人々にとっては武装した集団といえば国と国とを行き来する兵隊くらいなもので、万が一そうだとしても今回はいつも来るはずの申請すら来ていない。
普段から争いとは無縁だったこの町は、初めての事態にそれはもう大騒ぎで、町中が混乱に包まれていた。
最終的には町長が出てくる始末で、町のみんなを中心の広場に集めて事なきを得たが……重要なのはここからだった。
「私はこの町の町長をやっている者ですが……今回はこの町にどのようなご用件で?」
町民の代表である町長がそう尋ねる。
すると、奴らの中から一人の男が出てきた。
その男は集団の中でも一際目立つ装備を付け、妙に赤い宝石の付いたネックレスを首にかけていた。
年齢は二十代前半くらいだろうか、周りの人に比べ少し若い。
男は集団の前に出ると深々と頭を下げ、礼をする。
「これはこれはウェストタウンのみなさん、大勢でのお出迎え感謝します」
そう言って男は顔を上げ、にこやかな表情を見せる。
一瞬、周りの人たちにどよめきが走ったが、それを断ち切るように男は話を進める。
「我々は決して怪しい者ではありません、私たちは十字団という者です。そして私はここの団長を務めさせていただいますザロクと申します。我々はこの地に住んでいると言われている吸血鬼を討伐しに来たのです」
人々はお互いの顔を見合わせ、口々に喋り出した。
「吸血鬼ってあの?」「ああ、この町のちょっと離れてるところにある城のな」「確か親子だったわよね」「あれぇそんな親子いたっけな~?」
各々が話し合う中、一人の若い男が声を上げた。
その表情はまるで納得がいかないと言わんばかりに曇っていた。
「でもよぉ~ザロクさん、この町の近くに住んでるっていう吸血鬼を討伐しに来たっていってもよ、別に俺たちには何にもしてこないし、今までだって実害なんて無かったんだぜ」
男の言う通りこの町の付近に住む吸血鬼の親子が町の人々を襲うなんてことはなく、むしろその姿を見る人も滅多にいないほどだった。
その為か町の人々の間でも吸血鬼が人を襲うという認識も薄れ、ちょっと普通の人よりも強いご近所さんというイメージが付いているほど……
そんな中突然、その親子を討伐しますと言われても、にわかには信じられないというのが町の人々の素直な思いだった。
人々の視線がザロクの一点に集まる。
そしてその近くにいる十字軍の兵士たちもその疑惑の眼差しを感じ、焦りの表情を見せていた。
しかし、その中でザロクは一人、誰にも見られず密かに微笑んでいた。
まるでここまでの流れが計画通りに進んでいると言わないばかりに……
「まあ、とりあえずみなさん落ち着いてください」
ザロクは自らに疑惑の眼差しを向けている町の人々に優しく声を掛ける。
そして騒ぎが小さくなったことを確認すると、わざとらしく表情を曇らせた。
「吸血鬼はとても危険なものです……例えば……」
「だ、団長ー!」
ザロクの話を遮るように一人の男が大声を上げて、こちらに走って来た。
その男の十字架が刻まれた服装、そしてザロクのことを団長と呼んでいたこと。
この二点からこの男が十字団の一員であることは誰の目から見ても明らかだった。
「一体どうしたんだ!?」
ザロクは手を膝につき、息を荒げている男に問いかける。
「はいッ!、実は……」
男はそこまで言いかけて、周りを気にするように見渡すと……その重々しい口を開いた。
「おそらく吸血鬼に襲われたであろう……人の死体を発見しました……」
お久しぶりです。
もうみなさんも気付いたと思いますが、今回は話がとても短いです。
前回までのお話が大体4000字くらいだったので約半分くらいになります。
ではなぜこんなにも内容が少ないのか……それにはとっても深いわけがあります……
投稿間隔がなげぇ……
↑これです。
さすがにこのままではマズイと思ったので今回からは少し文字数が少なくなります。
その分投稿を頑張るので何卒よろしくお願いします。(出来るとは言ってない)
長いほうがいいと思う方もいるとは思いますが、ご了承していただけると嬉しいです。
では! また次回もお暇があれば見に来てください!