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第20話 扉……閉まってるんですけど……

今回は少し短めです。

 町に入るための準備を終えた俺たちは、地上に降りた場所から少し歩いた位置にある門のような建物の前に立っていた。

 門の左右には、俺の身長より少し高いくらいの柵が立ち並び、ずっと向こうの方まで続いている。恐らくこの町全体を取り囲んでいるのだろう。


(近くで見るとまぁまぁ大きいな……)

 そんなことを考えながら俺は自分より倍の大きさはありそうな門を見上げる。

 

 しかし、少し視線を下にずらすと、そこには俺たちを拒むように固く閉じられた木の扉が佇んでいた。

 


「あれ? 扉閉まってるね……」


 白は不思議そうな表情で大きな扉を見つめる。

 なんだかバン達も何か考えているようだし……扉が閉まっているのが普通じゃないのか?


「普通だったらこんな感じの門の扉は開いているものだけど……何かあったのかな?」


 どうやらいつもだったら開いているものらしい。

 今日だけは特別に閉まっていたのか、それともずっと前から閉まっているのか、俺には分からなが……これってちゃんと入れるのか?

 もしこのままこの扉が開かなかったら、唯一の手掛かりになりそうな情報屋の人にも会えなし……シャルのお父さんも探せなくなってしまう。

 それは不味い……


「すいませ~ん! 聞こえますか~?」


 俺も扉に向かって叫んだり、どんどんと叩いてみたりしたが、ぴたりと閉じた扉は開くどころか中からの返事すらない。


「ったくよぉ! こんな扉開かないんだったらぶっ壊しちまえばいいじゃねーか!」


 中々扉が開かないことに嫌気が差したのかバンは突然そう叫び拳を振り上げた。


「やめてくださいよぉ兄貴!」

「そうっすよ!」


 あ、止められた。

 部下の男の人2人係でバンの両手を押さえている。

 その間もバンは「離せ! おらぁ!」とか叫んで暴れていた。

 正直……怖いね。

 この人達、根はやさしい人達なんだと思うけどな……

 

 

「誰だ!? さっきから門の前で騒いでる輩は!」


 突然、門の向こうから人の怒鳴り声が聞えたと思うと、門の横に付いていた小さな扉がバタン!と音を立てて勢いよく開いた。

 その中から現れたのは初老くらいと思われる一人のおじさん。

 多分、この町に住んでいる人なのだろう、俺たちが騒いでいたからなのか、なんかイライラしている。

 おじさんは出てくるなり、睨み付けるようにして俺たち全員を見回す。

 

「全くこんな昼間っから……うぇ!?」


 おじさんとバン達の目があったその瞬間、おじさんは何やらうめき声に似た変な声を出して固まってしまった。

 全員の動きがぴたりと止まり、風の音しか聞こえなくなる。

 そんな中俺はバン達の方に目を移す。

 何やら揉め合っているうちに3人共なんかすごい体勢になってる。

 多分おじさんはこの3人に驚いたのだろう。

 

 何秒か全員の硬直状態が続くと、おじさんはゆっくりと動き出し扉を閉め始めた……

 

 

「ちょっとストープ!」


 閉まるギリギリで白が扉を掴んだ。

 おじさんは扉から手を離し、数歩後ろに下がる。


「なんなんだよお前たちは!?」

「ちょっとこの町に用があるんですー!」


 俺たち……不審者にでも思われてるのか? 

 まぁバン達の見た目とか見た目を見たら驚いてもしょうがないの……かな?

 

 俺たちは別に怪しい者じゃないし、なんか出発前に町潰すとか言っていた人がいたけど、全然争う気はないので、そのことをちゃんと説明すれば信じてくれる……はず!



 説明中……



「なんだ、あんた等ただ観光客か」


 白と俺で説明すると案外あっさり信じてもらえた。


「はい、全然怪しい者じゃないので安心してください」

「そうか……さっきはいきなり扉を閉めてすまなかったな」

「いえいえ、さっきのはこっちにも非があったので……」


 そう言いながら白は横目でバン達の方を睨む。

 するとバン達はばつが悪そうにそっぽを向いて「あははは~」と誤魔化すように笑っていた。

 


 おじさんは俺たちへの誤解が解けるとすぐに町の中に招き入れてくれた。 

 

 小さな扉を通り抜けた俺たちの目の前に、木でできた家々が現れる。

 家の一つ一つは大きくないものの、中央の道には荷物を担いだ旅人や食べ物を売り歩く商人など、多くの人たちが歩いていた。

 

 俺には見慣れないものが多々あったが、この世界ではごく普通の街並みなのだろう。

 


「それであんた等、こんな辺鄙な町になんの用があって来たんだ?」

「いや~ちょっと知り合いに合いにね、そうでしょ?」

「あ……ああ、確かこの酒場にいると思うんだが……」


 白が言っている知り合いとは多分情報屋の人のことを指しているのだろう。

(別に情報屋の人と白は知り合いではないので、きっとおじさんに酒場の場所を聞くための嘘だと思うが……)

 

 そして、突然話を振られたバンは白の話に合わせ、あたふたとポケットを探り一枚の紙切れを取り出すとそれをおじさんに手渡した。

 おじさんはバンから紙切れを受け取るとその紙をまじまじと見つめる。


「こりゃあマーティーさんとこの酒場だな……なんならここまで案内してやろうか?」

「え、いいんですか!?」

「なーに久しぶりの客なんだから案内くらいさせてくれよ」


 なんか白がドヤ顔でこっちを見てくるが、こればっかりはおじさんの優しさに感謝だ。

 例え白の嘘がおじさんから情報を聞き出す為の作戦だったとしても……うん、おじさんに感謝だ。


 

 俺たちはおじさんの案内の元、ごく普通の街並みの中を歩いていた。

 子供たちの笑い声や、おばさん達の立ち話など、ごくありふれた生活音の数々が次々と俺たちの耳に飛び込んでくる。

 道行く人たちを見ていても、とてもじゃないがシャル達を襲うような人々には思えなかった。

 しかし、シャルが嘘をついているように見えない。

 

 シャルはさっきの門を潜ってからというもの、まるで人々の視線を恐れ、避けるようにして白の後ろに付き、俯きながら歩いていた。

 

 シャルを信じる気持ちと、目の前に広がる町の人々が平凡な暮らしをしているという事実が俺の頭の中で混ざり合い、さらに俺を混乱させる。


(でも……)

 初めてシャルと出会った日のシャルの目……

 あのこの世界すべてに絶望したような……それでいて助けを求めているような悲しい目を……俺は忘れることができなかった。


「さぁ着いたぞ、ここがあんたらの言ってた酒場だ」


 いろいろ考えていた間に酒場に着いてしまったらしい。

 木で作られた少し大きめの建物の正面には、この世界のよく分かんない文字で書いてある看板が立ててあった。

 文字は読めなかったが、俺のスキル:ガイドによって、俺の知っている日本語に変換される。

 文字から青い線が伸び、その線の先の先端に読み慣れた日本語が表示された。


「マーティ―の酒場?」


(マーティ―って……おじさんがさっき言ってた店主の人か……)

 

 なんだか、いざ翻訳してみたら普通の名前だったな……

 俺はもう一度看板の方の文字を見てみる。

 うん、さっぱり読めない!

 最初は俺も「異世界に来たんだしチート能力くらい欲しいなぁ~」とか思ってたけど……

 いくら強いもの(能力)を貰ったってまず文字が読めなければどうしようもないのだ。

 俺は文字が分かるガイドというスキルプラス、まぁ強いスキルももらったんだからあまり文句は言ってはいけないのだろう。(貰えることなら貰いたい)


「さて、じゃあ俺はここまでだ。 あんた等もここの町を楽しんでな」

「うん、ありがとね~おじさん!」


 ここでおじさんとはお別れのようだ、優しい人だったなぁ~

 みんなで手を振りながら、おじさんの後ろ姿を見送る。


「でも……おじさん昼間から門の近くで何してたんだろ~、仕事とかは大丈夫……」


 確かにおじさんは優しい人だったが……あんまりそこら辺には触れない方が……

 こうして俺たちは無しょ……おじさんと別れ、シャル達についての情報を得るために酒場へと足を踏み入れたのだった。


 


 

 

 

 






 


 

 

  


 


 

 


 


 

 

 



 

 

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