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第1話 異世界転移

 目が覚めると俺は見覚えのない路地裏に横たわっていた。

 

 この細い路地はレンガ造りの建物に挟まれ、その僅かな隙間から太陽の温かい光が差し込んでいた。

 そのせいなのか周りは昼間にも関わらず薄暗く、ひんやりとした空気が流れていた。

 

 俺の周りには生ゴミやヘドロのようなものが散乱していて、ものすごい腐敗臭がしてくる。

 (ここは……?)

 

 そもそも俺はここにどうやって来たんだ? 

 しばらくその場で考えるが、その答えが出ることはなかった。

 (……やっぱり思い出せない)

 

 これから俺はどうしたらいいんだ、それよりここは一体どこなんだ?

 幸い建物があるのでこの路地裏から出れば人には会えそうだ。


 さてこれからどうしよう

 ……いやマジで……



 路地裏から出ると予想どおり「人」には会えた。

 それもめっちゃいっぱい。

 

 しかし、この世界の「人」は俺が知っている「人」とは少し違うようだ……

 もちろん俺の知っている日本人のような外見の人もいたが、三分の二くらいの割合で猫の耳が生えていたり、尻尾が生えていたり、「獣人」のような外見をしている人がいたのだ。


(なんなんだよここ……夢でもみてるのか?) 


 一度目を擦ってみるが夢から覚めることは無かった。


 俺が現実を受け入れられないままその場に立ち止っていると……突然、人混みを掻き分け、一人のおじさんがにこやかな表情でこちら近づいてきた。


「やぁ君君どこから来たんだい?」


 唐突にそのおじさんが話しかけてきた、どうやら辛うじて日本語は通じるらしい。 

 これで言語が通じなかったらそれこそ終わりだっただろう、俺は内心ちょっとほっとする。

 それより普通に日本語で話しかけてきたということは……日本のことを知っているのかもしれない。

 俺はそう思い質問に正直に答えた。


「日本です」

「にほん? 聞いたことないところだな~」


 残念ながら日本のことはしらないみたいだ。

 じゃあやっぱりここは《異世界》ってやつなのか?


「じゃあ君の着ているその服もにほん? というところで作られたのかね?」


 おじさんが目を輝かせながら質問をしてきた。

 今俺が着ているのは高校用の学生服だから……まぁ日本製ってことになるのか。


「はい、そうですけど……」

「いやーそうなのか君の着ている服にひどく心を打たれてねー、もしよかったらうちで買い取らせてくれんかね? もちろん代わりの服を用意するよ」


 いや……これごく普通の学生服なんだけど……

 こっちの世界だと学生服みたいな生地は珍しいのか?

 

 だとしてもだ……いきなり会った知らないおじさんに付いて行っても大丈夫なのか?

 小、中学校ではあれほど知らない人には付いて行くなと言われてきたが……


 そんなことを考えながら俺は冷静に今の自分の立場を振り返る。

 いきなり知らない土地に来て、一文無しで、帰り方も分からない……

 うん、付いて行こう。


「もちろんいいですよ」

 

 これから帰るための手段も見つけなきゃいけないし、生活費もいるだろうから……断る理由なんかないんだけどね。


「早速だがすぐにでも売ってくれないかね?」

「いいですよ」

「おーそれはよかった! では、すぐに私の店に行こう」


え、『私の店』?


「えーと、そのお店はあなたが経営しているお店なんですか?」

「あーそうだね 一応支店もいくつか経営しているんだが今から行く店が一番広いかな? そーいえばまだ自己紹介をしてなかったね。私の名前はウォルテットだよろしく頼む」


 いや、ちょっとまて支店もあるって? ウォルテットさん……もしかしたらめっちゃ金持ちの人なんじゃないのか? 


「僕は如月佑といいます」

「そうか如月佑というのか珍しい名だな……それじゃあ早く店に行こう!」


 そう言いながらウォルテットさんは俺の腕を力強く掴んできた。

(この人結構ぐいぐいくるな……本当について行って大丈夫か?)

 こうして俺はウォルテットさんに連れられ店へと向かった。



 5分ほど歩くとウォルテットさんの店らしきものが見えてきた。

 近づくにつれて俺はある違和感を覚えた、最初はあまり気になっていなかったが、店の外観がはっきりと見えるくらいまで近づいた時、俺はその違和感の正体に気付いた。


 (あれ? なんだこの文字?)

 看板らしき物に謎の文字らしきものが書いてある。

 いや……らしきものじゃなくてこの世界の文字なのだろう。

 (言葉は通じたんだけどな~)

 そう静かに呟いたが……この世界はそんなに甘くないようだ。



「ウォルテット様おかえりなさいませ あれ? そちらの方は?」


 店に入ると俺たち2人をを受付らしきお姉さんが出迎えてくれた。

 それにしてもウォルテット様って……ホントにこの人の店だったんだな……

 やっぱり人は見た目で判断しちゃだめってことなんだろうなぁ~

 パッと見た感じただのおっさんだったし……


「ああ、この子は如月佑君だ この子に新しい服それとこの子の服を買い取るから金庫から金貨をもってきてくれ」


 まてまて金庫? 普通服って高く売れたって2~3千円くらいだろ? それを金庫からって……この規模の店の金庫って言ったら〇千万くらい入ってるんじゃ無いかな~(願望)


「えっ……この服そんなに高く買い取ってくれるんですか?」

「もちろんだよ、そんなきれいな生地このあたりでは絶対に手に入らないからね」


 まぁ異世界ものだからね……。


「それじゃあ着替えてきてもらおうか」

「それでは佑様、こちらに」


 俺は言われるがままに更衣室に連れて行かれた。



 俺がウォルテットさんから頂いた服は綿に似た素材でできたとても動きやすい服だった。


「おーよく似合ってるね、それとこれは君の服の買い取り金だよ」


 そう言ってウォルテットさんは見るからにめっちゃ重そうな袋を渡してきた。

 この袋にはこの世界の金だろうか? とにかく大量にはいっていた。

(これだけあれば何日かはもつんじゃないかな……あくまで俺の感覚だが)

 でも、いくら金があったって寝る場所がなきゃな、この世界にはホテル的な施設はあるのかな?

 まぁウォルテットさんに聞いてみるか……


「あのーこの近くに宿泊できるような宿屋はないでしょうか?」


 俺が質問するとウォルテットさんはすぐに答えてくれた


「宿泊所ならこの前の道の先を曲がればすぐだよ」


 あっ、結構近くにあるのね今日は最悪野宿を覚悟してたけど大丈夫そうだな……


「じゃあ僕はこれで行きます、いろいろとありがとうございました」

「そうかい……またうちの店にもきてくれよ」


 俺が店を出て行ってもウォルテットさんはずっと手を振ってくれていた。

 なんか名残惜しいな……まぁ異世界に来て初めて話した人だったし、今後の生活資金もくれたし結構いい人だったな……いつか恩返しできるといいな

 その時まで俺が生きてればだけど……

 こうして俺はウォルテットさんの店を後にした。


(さてこっちで生活するための資金も手に入れたしさっそく宿泊所に向かうか、異世界って始めは結構ビビったけど案外楽しそうだな……)

 できるだけこの異世界生活を楽しめるようにがんばりますか……


 このとき俺は異世界転移したという事実にすこし浮かれていたのか、こちらを見ている無数の人影に気が付かなかった。


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