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第15話 グラスの提案

少し遅れました。申し訳ないです……


「「は?」」


グラスの言葉を聞いた一同全員が一瞬言葉を失った。

 え? 俺の聞き間違いじゃなかったら何? 町をぶっ壊すって聞こえたんだが?

俺が混乱していると突然、白がグラスの肩に手をポンと置き、


「グラスそれはちょっと……」


と一言。その言葉で俺もグラスの言葉の意味を再認識し白のことを支援する。

 よしいいぞ白、そのままグラスを止めてくれ町を壊すなんて正気の沙汰じゃないそこはこいつの管理者として説得してくれ!

俺は白を全力で応援した。しかし、事態は俺の想像の斜め右下くらいに動き出す。


「壊すのはいいけど、後始末が面倒でしょ?」


 終わった……

白ならグラスを止めてくれると思ってたのに……まさかそっち側の人間だったとは……

これは……俺が止めなきゃいけないやつか?


「なぁグラス、さすがに町を滅ぼさなくてもいいんじゃないか? ちゃんと話合えば……」

「タスクくん、なに言ってるの!? こんなカワ……いたいけのある少女が泣いてるんだよ?」


グラスが泣いているシャルの方をチラッと見ながら言い返してきた。

 うッ……そんなこと言われたら何も言い返せないじゃねーか……

でも、さすがにやりすぎだとは思うんだけどな……だって町だぞ町

もし俺が白達の味方をしたらマジで町ひとつがなくなりそうな勢いだ。

なんとしてでも止めなくては……


「おい、お前ら……」


今まで黙っていたバンが突然会話に入ってきた。

その声を聞いた瞬間、俺の背筋に冷や汗が流れる。

バンの声には怒りの感情が含まれているようだったのだ、

以前の会話の中でバンのお父さんの組織が今まさにグラスがぶっ壊そうとしている西の町と関わっていると言っていた。つまりは西の町を壊すということはバンの組織と敵対するということになる。

それだけは絶対に阻止しなくてはいけないのだ


……だが、どうやらそんな心配をしていたのは俺だけだったようだ、

正確には俺はまた《別の心配をしなくてはいけなくなった》なんだけどな……


「頼む、俺たちもその計画に入れてくれ」


バンの発言は俺の予想とは全く違う物だった。

そんなバンの爆弾発言に俺は戸惑いを隠せない。


「え……? お父さんの組織が町と関わっているって……」


俺が思ったことをそのまま言葉にすると、バンは当然のような顔をして答えた。


「関わっているからこそだ、あの町の奴らがこの子を傷つけたのならその落とし前を俺がきっちりつけさせなきゃならねー」


(おお、かっけー)

一瞬俺もそう思ってしまったが、そんなイメージは次のバンの発言により音を立てて崩れることになった。


「こんな天使のような子に傷をつけるなんて……身の程しらずもいいところだ! そんな奴らは俺が徹底的にぶっ○す、泣いて謝ったとしても絶対に許さん! そいつら全員ボコボコのギタギタに……」

「「「「……」」」」


そう演説するバンの目にはシャルへの愛の炎がメラメラと燃え滾っている。

その姿に俺含め白とグラス、そして、バンの部下であろう男たちまでもがドン引きしてしまっている。

当の本人のシャルはというと目の前で燃えているバンを見てもその無表情を貫いている。

逆にここまで無表情だとそこにいる次期組長さんが少しかわいそうになるほどだ。


しかし、本人は自分の心配している人が全くの無表情ということにも気付かず、『西の町』への怒りをあらわにしているのだった。


「と、とにかく! バンさんも協力してくれるみたいだし、今日の昼にでも『西の町』に向かおうよ」


バンに呆気にとられていたみんなをこっち側に戻したのは白だった。白が話を仕切り直したことで、みんなが正気を取戻し会議を再開する。しかし、その真後ろには怒りに身を任せて大声を上げる悲しい次期組長の姿があった。


「それより白、町に行くのはいいが一体どのくらいの時間がかかるんだ?」


場の雰囲気がやっと会議モードになったので俺は単刀直入に気になったことを聞く。

この世界には当然と言えば当然だが車のようなものは無かった、今日行った市場で馬が荷物を背負う姿が見えたのでこの世界での主な移動手段は馬などの生き物だと考えられる。

その馬で『西の町』まで行くのにどのくらい時間がかかるのかどうしても気になったのだ


「私が連れてこられた時には3日くらいかかった……荷物の時間もある……明日の朝に出ていくのは難しいと思う……」


俺の質問には白ではなく今までずっと無表情だったシャルが代わりに答えてくれた。

その表情はどこか暗く、何かを必死に心配しているがどうしようもないような、そんな悲しい表情だった。そんな表情を見て白はシャルを安心させるようにニコッと笑い、シャルの両肩を掴んでギュッと抱きしめてこう言った。


「大丈夫、今日の昼に出れば夕方にはあっちの町に着くよ、そうすればもしかしたらお父さんを助けられるかもしれないから、ね?」


その白の言葉にシャルは力強く頷き、今まで我慢していたのだろう涙を目一杯に溜めている。

そんなどこか安心できてなんだか場が和むような空気の中、突然、後ろから声が聞こえてきた。


「なぁ、その西の町に半日で着くって……そりゃあどうゆうことだ?」


その声の主は紛れもなくさっきまで燃えていたバンである。どうやら今は落ち着いたのかいきなり真面目な話をしてきた。

その態度の変わりっぷりに全員が驚いていたが、バンとしては白の言った、半日あれば西の町に着く、ということに驚いているようだった。

それもそのはず、シャルが言うにはここまで来るのに西の町から3日はかかったという。

白の言っていた半日で着くというのはさすがに早すぎるというものだ。


その場にいる全員が白に「どうゆうことだ?」の目線を向けると白は当然のような顔で答える。


「それならグラスに乗っていけばいいんだよ、グラスならここにいる6人くらい余裕で乗せられるから」


白が「ね? グラス?」と視線を向けると、グラスはドヤ顔でうんうんと頷く。


「「「は?」」」


これはこの場にいた全員一致の意見である。あくまで白とグラス以外だか……

……いやいや、さすがにこいつじゃあ……無理だよね?

俺がグラスに視線を向けるとグラスは、「は? 何だよ?」みたいな顔をされてしまった。


そんなみんなの心境を察したのか白は


「まぁ、細かいことはお楽しみで!」


と、一言言い放った。

 なんかみんな納得してなそうだけど、取り敢えず白曰く、半日もあれば西の町には着くらしいのでその言葉を信じる他ないだろう。


「とにかく! 昼には西の町に出発するから、えーと……確かバンさん達も行くんだよね? それじゃあみんな早速準備しよう!」


白のこの鶴の一声でこの会議はとりあえず解散になったが……バン達はイマイチ実感が湧いてなさそうだし、シャルもなんだか不安そうな顔をしてるし、というか俺もめちゃくちゃ不安だし、色々とガバガバな感じで終わった会議だった。



会議が終わった後、バン達は準備があると言って出て行ったが、なにやら悪巧みしてそうな顔だったので不安が残るが……そこら辺は後々聞くとしよう。


俺は白に細かいことなどを聞くために白のもとへ向かったが、なにやら先にシャルが話していたので俺は近くで静かに会話を聞いていたのだった。


「な、なんで、そこまでしてくれるんですか? あの町まで半日って……いくらなんでも早すぎじゃないですか……そんな大変なこと……」

「それはね、シャルちゃんのお父さんを少しでも早く助けに行くためだよ」

「……」


白がそう言うとシャルはすごく驚いた顔をしていた、


「え……? なんでそのことを……」

「そんなこと見てれば分かるよ、シャルちゃんが昨日から元気が無いのはもちろん自分の身に起こった事もあるだろうけど、お父さんが心配だったからでしょ?」

「……でも、お父さんはもう……」


重々しい空気が漂う、俯いているシャルの頬には一粒の小さな涙が光っていた。


「大丈夫」


白は一言そういいながらシャルの頬の涙を手で拭いた、シャルは顔を上げると白の顔をじっと見つめる。


「お父さんはちゃんと生きているよ、こんな可愛い子を置いて死んじゃう訳ないでしょ?」


そう言いながらシャルの餅並みに柔らかそうなほっぺたをギューとつねった。

シャルは涙目で「痛いですよぉ~白さん」と叫んでいたが、その顔は少しだけ笑っていたようにも見えた。その後白はシャルのほっぺたを離すと、今度はシャルの肩に両手を置いて、


「それじゃあお昼までまだ時間はあるし、出発前に少しでも休んだら?」


シャルは小さく頷くと近くのソファーに横になった。

白はそんなシャルを確認するとやっと俺に気が付いたのかこっちを向いて、


「あれ? タスクくん居たの? それでどうかした?」

「あ、ああ、ちょっと確認したいことがあってな」


ほんの少し傷ついた俺だったがすぐに気持ちを立て直し白への質問に入る。


「なぁ白、本当に西の町をぶっ壊すのか?」


白は少し悩んだ表情を見せるとその表情のまま、


「ん~、それは話を聞いてからかな? あっちが一方的にシャルちゃん達を傷つけたとしたんだったらやっちゃうけど……まぁその可能性が高そうだしね……」

「やっぱりか……」


俺としてはなるべく破壊しない方向でいってもらいたいんだけど……反省の色ナシ! って感じだったらやむお得ないのかな?


「白達も少しは休まないのか? グラスとか大変なんだろ? 運び方は知らないけど……」

「いやいや、そんなことくらいじゃあボクは疲れないから」

「あっそうですか……」

「僕もお弁当とか作らなくちゃいけないから、タスクくんの方こそ結構大変かもしれないから休んだら?」


 これから一つの町を破壊しに行く人達がお弁当作りとは……やっぱり俺がおかしいのかな?


こうしてこれから起こるであろう大仕事に向け、俺はゆっくりと体を休めるのだった。





































来週も9時前後に出します。

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