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第14話 無理やり解決

 今、俺は非常に困っている。


 目の前には土下座するレベルで俺たちに謝っている怖い男の人、それを必死に止めているこれまた怖い2人組、

しかし、この人たちは俺のことを殺してしまったと誤解しているだけであって、別にここまで謝る必要は無いのだが……それをこちらがいくら伝えても気を使っていると思われているようで全く聞き入れてもらえない。


俺はコミュ障……とまではいかないが、正直人と話すのはあまり得意じゃない方だ。

それでも普通の人だったらまあ何とかなるが、今回の場合相手はめっちゃ怖いヤンキーだ。

考えてもみてほしい、無理だろ?

以下の理由でこの人たちに説明するときどうしてもしどろもどろになってしまい、余計誤解が深まっていってしまっている。

さて、これからどうしよう?



突然、物静かな空間にバシッという鋭い音が鳴り響いた。次の瞬間、俺の背中に強い痛みが走る。


「痛って、いきなりなにすんだよ!」


驚いて後ろを振り返って見ると、そこにはこちらを怖い目でにらんでいる白の姿があった。

目を見れば分かる、これは「早くどーにかしろよ」と思っているに違いない。


「そんな目で見るくらいなら代わりに説明してくれよ」


俺がそう返すと白はめんどくさそうにため息をつき、


「しかたないな~、ちょっと手荒くなるけどいいよね?」


と提案してきた。

手荒くなる? ちょっと不安があるがこの際そんなことは気にしていられない、

 というか正直不安しかないが俺一人ではどうしようもないので、仕方なく俺はこの提案を受けることにした。


「ああ、大丈夫だろ」


俺の言葉を聞くと白はグラスに小声で何かを頼んでいた。

その時グラスが一瞬、「え? いいの?」って顔をしてたが……まあ大丈夫だろう。

 うーん……きっと……多分。


「それじゃあタスクくん、いくよ」


(え? いくって何が?)

そんな俺の質問は白に届く前に轟音にかき消され、それと一緒に俺の意識も暗闇の中に飲まれていったのだった。



(あれ……? 俺は一体何を……?)

まだ、ぼやぁーとしている頭でさっきまでの記憶を思い出す。

(確か俺は白の提案で……)

そこまで思い出し俺ははっと我に返る。最後の記憶は確か……氷?


氷? 白の提案? グラス?


「あっ! あいつか!」


俺は勢いよく体を起こし、辺りを見回す。どうやら俺の部屋のようだ

何が起きたかを確認するため俺はすぐに一階に下りる。


「おい! 白! お前なんてことをやってく……」


俺はそこまで言いかけて言葉を詰まらせる。

(あれ? あれってさっきの怖い人たちだよね?)


動揺している俺の目線の先には、怖いはずの男の人たちが顔を真っ青にしてコーヒーを啜ってる姿があった。

そのうちの1人であるバンが俺の声に気付いたのか一度こっちを見て、なにやらほかの2人と話し始めた。


「あのー? どうしましたか?」


俺が近づきながら何があったのか聞くと、逆にバンが質問をしてきた。


「お、お前……無事だったのか?」


 無事だった? まぁ大体想像がつくけど……そうゆうことなんだろうな……

俺が苦笑しながら頷くとバンは驚く半面、安心したような表情で話し始めた。


「あのドラゴンがあんたを凍らせちまった時はどうしようかと思ったぜ……」


あ……うん……まぁそういうことだよね。大体予想はしてたよ?


「しっかし、白さんには驚いたな……あそこまで凍ったあんたをここまで治すなんてな」

「でしょでしょ~やっぱりそうだよね~」


突然白が満面の笑みで会話に割り込んできた。

(いや、別に褒めてないからね?)


「おい! 白なにしてくれ……」

「ね! この人ちゃんと生きてたでしょ?」


俺の質問は白の言葉にかき消されてしまった。

そんな白の言葉を聞き、バンは静かに頷く。


「ああ、信じがたいがこれほどの魔法を使えるなんてな、この兄ちゃんが上位モンスターの毒をくらっても生きてたってのも納得だな」


どうやら白は俺の体(・・・)を使ってバン達の誤解を解いていたようだ。

 誤解を解いてくれたことには感謝するけど、何も全身凍らせることはなかったんじゃないのか?


「なぁ白、別に全身凍らせなくても腕とか、体の一部だけ凍らせて元に戻せばそれでよかったんじゃないか?」


俺が質問すると白はギクッとした表情をした後、ごまかすように口笛を吹きながらキッチンの方へ逃げて行った。

(あいつ……絶対いつか仕返しするからな)

俺は静かにそう誓うのだった。



「じゃあ俺の組のやつは兄ちゃんを殺しては……ないってことか?」


(いや、最初っからずっと説明してたからね? 聞いてくれなかったのはそっちだったから)

色々と愚痴りたいこともあるが今は我慢しよう

とりあえず誤解が解けてよかったね。ってことでいいのかな?

(あれ? 何か忘れているような……?)

隣で泣きながら喜び合っているバン達を横目に俺はふとあることを思い出した。


「おい! シャルの会議はどこへいったんだよ?」


よくよく考えればバン達が来たせいでシャルの事情を全く聞きだせていない。

俺がそう一声かけるとキッチンの方へ行っていた白とグラスが速攻でテーブルに座り、真顔で話を始めた。


「それでシャルちゃん、君はなんで怪我してたの?」

「あの……私が住んでいた西の町の人たちに……」


白の質問にシャルは震えた涙声で答える、その時のシャルの唇は震え、顔色も悪くなっていた。

そんな重々しい空気の中、静かに白たちの会話を聞いていたバンが突然立ち上がり声を上げた。


「西の町の人たち? そりゃあ一体どういうことだ?」


バンは西の町について何か知っているようだった、しかし、その町の人たちがシャルを傷つけていたことまでは知らなかったらしい。

そんなバンの純粋な質問に白は冷静な表情のまま答える。


「そのまんまだよ、この子は僕たちが奴隷市場で買ったときひどい怪我をしていたのそれも明らかに誰かにきずつけられたようなね」


白の答えを聞きバンは少し考えた後、静かにその口を開いた。


「いや……そんなことは無いはずだ。 あの町の人たちはみんな温厚だったと聞いているぞ、こんなかわい……少女を傷つけたりはしないはずだ」


 おい、本音が漏れたぞ……それにしてもバンは西の町にやけに詳しいみたいだな


「そうなのシャルちゃん?」


白が確認をとるとシャルは小さく頷いて、


「うん……最初はみんな優しかった……でもあの日に突然みんながおかしくなって

私たちの家に押しかけて来た。それをパパが止めようとして……」


そこまで話すとシャルは下を向いて黙り込んでしまった。

その目には大粒の涙を浮かべており、今すぐにでも零れ落ちてしまいそうだ。

白もそんなシャルの姿を目の当たりにして顔をしかめる。


「だってさ……やっぱり西の町の人たちがシャルちゃんをこんな目に……」


白がそう静かに、そして怒りを込めてつぶやくとそれにバンが反応した。


「実は俺の親父の組織がその村と関わりが深かったんだ、それで俺もその村には

何度か行ったことがあったんだが……まさかそんなことをする人達だったとはな」


 ふーん……って!? 親父ィ!? ってことはバンのお父さんが組織のトップってことか?

俺が一人で驚いていると白が冷めた目で俺を見てきた。


「タスクくん、結構最初の方で次期組長って言ってたでしょ?」


 あ……そういえばそうだったな……いや……本当にすみませんでした。


「まぁいいや、それでシャルちゃんのパパってどこに行ったか分かる?」


俺の謝罪を無視して白が話を進める。

白の質問にシャルは涙ぐみながら首を横に振った。どうやらお父さんの行方は分からないようだ。


「話は聞かせてもらった!」


突然、今まで一言も喋っていなかったグラスが大声を上げた。

その瞬間、その場にいた全員の視線が一斉にグラスに集まる。


「その……西の町だっけ? その町ぶっ壊しに行きますか」















次回は来週の土曜日の9時くらいに出すと思います。

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