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第13話 謎の誤解

翌日、

 俺たちはシャルが抱えている事情、なぜ怪我をしていたのか、その他諸々を聞きだすため1階の食卓に集まった、ようするに会議というやつだ。

この会議には俺、白、グラスそして、シャルが参加する。

俺たちが座っているのはいつもお客さんが座っている4人掛けのテーブルだ、今はまだ開店前なので広い店内には俺たち以外誰もいない。そんな静かな朝の店内で俺たちの会議は始まったのだった。



「この人誰?」


グラスが目の前に座っているシャルを見てポカーンとしている。

グラスは昨日寝てたから初めて会うのか……そのせいで俺が荷物全部運ぶはめになったんだけどな


「そういえばグラスは知らないね、この子は吸血鬼のシャルだよ、実は昨日ね……」



《説明中……》



「あ~そうだったんだ~」


説明が終わるとグラスはすべてを理解したようで、うんうんと頷いた。

 グラス軽いな……吸血鬼だぞ? もうちょっと驚いてもいいんじゃないか? 


「いやいや僕は伝説のドラゴンだよ? 吸血鬼の一人や二人で驚くわけないでしょ~」


 あ……そうですか……(諦め)


「ともかく、シャルちゃんどうしてあんな怪我してたの?」


やっと白が本題に入ってくれたようだ

白の問いかけに、今までだまっていたシャルが震えながら口を開こうとした次の瞬間、



バタンッ!

……カランカラン


ものすごい勢いで喫茶店のドアが開いた、ドアが開いた音が部屋中に響いた後、少し遅れてドアに付いている鈴の静かな音が響く。

 なんだなんだ? まだ店はオープンしてないんだけど、こんな朝から一体だれだよ……


《ただ今の時間午前7時前……》


そう思いながらドアの方を振り返ると、そこには身長190センチはあろうスキンヘットの2人組が立っていた。その服装は黒で統一されており、ただ立っているだけでも脅せるじゃないか? と思ってしまうほどの威圧を放っている。


「兄貴! どうやらここで合ってるようです」


片方の大男が大声で誰かに話しかける、どうやらもう片方のスキンヘットの2人以外にも誰かいるらしい

(それにしても大きい声だな……シャルなんて白の後ろに隠れて震えちゃってるし……)

白は案外驚いて無さそうだったが、シャルの場合は余程驚いたのかドアが開いたと共に白の背中に隠れ、片目だけちょこんとこちらに向けて小刻みに震えていた。


「そうか……やはりここだったか……」


声が聞こえた次の瞬間、スキンヘット二人組の後ろからさっき兄貴と呼ばれていたであろうこれまた大柄の男がなにやら険しい表情でゆっくりと現れた、後ろにいる二人とは違いその頭には黒色と金色が混じり合い照明に照らされキラキラと輝いている髪があった。

その目はとても鋭く、真っ直ぐに俺たちだけを捉えている。


さっきまで辛うじて頭だけは出していたシャルも男がこちらを見た途端、白の背中にスッポリと隠れてしまった。


 その男は2人よりは少し小さかったが二人が黒で統一されたビシッときめられた服装に対し、完全に私服のような服を着ていたのでたぶん立場的には上なのだろう。

 なんの目的かは知らないが雰囲気的にただの客ではなさそうだ(開店前に入ってきたし……)


「あの~」


最初に白が声をかける、見た感じただものじゃなさそうだしさっさと追い返してくれるとありがたいんだが……

俺はそう白に期待したが……そこはさすが異世界クオリティー、俺の中の常識は全く役に立たないらしい。


「ご注文はなににしましょうか? あ、今は朝なのでミルクコヒーとかがおススメですよ♪」


(いや、違うだろ! そこは追い返そうよ、あとミルクコヒーとか絶対飲まないでしょ? 少なくともブラックとかの方がいいような気がするんだが……)


「いや確かにミルクコヒーはいいが今日は別の要件があってだな、今日のところは遠慮させてもらおう」

「あ、でも兄貴、俺たち朝食はまだですし、ついでにどうですか?」

「いい考えっすね、兄貴そうしましょう!」

 

黒服の2人の御陰で少しだけ場の空気が和む。

(いや! 和んだのはいいけどあんたらはそれでいいのか!?)


「じゃあ後でコヒーをもらおう、あとこれとこれも、それとこれ……」

「はいはーい」


2人に押されたのか、兄貴と言われている男の人はコヒーだけでなく近くにあったメニューを手に取り追加でいくつか注文をしている。

大柄の怖い男の人が背の小さい白髪の女の子にコヒーを注文している、まぁなんともシュールな光景だな……

 いや、白も白で乗るなよ……というか本題が消えてるんだが……


このままでは不味いと考えた俺は白の耳元で囁くようにして指示を出す。


「白さん白さんこの人たちに要件を聞いてください ヒソヒソ……」


白ははっとしたような顔をしてやっと本題に入った。


「それでその要件というのは?」

「ああ、そうだったな……」


そういった瞬間、男の表情が急に暗くなる、明らかにこの場の空気が重くなった。


「実は……俺はとある組で次期組長をやってるバン・アンレスだ、気軽にバンと呼んでくれ……」


 どうやらこの人たちは何かの組に入っている人達らしい。

 このバンという人が次期組長ということが本当なら他の二人がずっと敬語だったり、兄貴! と呼んでいることにも納得がいく。


「どうやら俺の部下がお前達の連れを刺殺したみたいでな……本当にすまなかった」


そういってバンは頭を深く下げる。


「兄貴! 次期組長であろうあなたがそう簡単に頭を下げないでください!」


部下2人(多分)が必死に次期組長を起こそうとしているが一向にその人は顔を上げない。

だが、

今はそれよりももっと重要なことがある。


「おい白、その刺された人って確実に俺のことだよな? ヒソヒソ」

「絶対そうだって、ほら正直に言っちゃいなよ ヒソヒソ」


いやいやいやこれ正直にいったらマジでぶっこ○されちゃうやつだぞ!

俺は悲しそうな目で白に全力でSОSを送る。


「あーもうしょうがないなー」


無事俺のSОSが通じたのか、ちょっと嫌々感はあった気がするが白が説得してくれるらしい。


「あの~その連れの男の人ちゃんと生きて……」

「あいつらが持っていたナイフには上位のモンスターから採れた致死性の毒が塗ってあったんだ……どうやっても助かってない……」


俺と白の表情が一気に暗くなる。

 まじかよ……上位モンスターってあきらかにやばいだろ、白さんなんで治せたんだ……?

(白お前が治したんだろ、この状況どうにかしてくれよ)


「君君、何言っているんだい? 治して()()()んでしょ? タスクくんがどうにかしてよ」


 どうにかしてって目の前でヤンキーのボスが頭下げてんだぞ俺一人じゃあどうしようもないぞ?

しかし、

そんな俺に追い打ちをかけるようにバン達の勘違いは悪化する。


「この件については俺が責任を取る、お前ら今までありがとな」

「やめてください兄貴! 責任なら俺たちがとります!」


うわ~もっとめんどくさくなちゃったよ……


ジィ~~

 ん? なんだか視線を感じるぞ……

隣を見ると白が俺の方ををめっちゃ睨んできている。


「おい頼むから、『お前なんで生きてんだよ』みたいな目で俺を見ないでくれ……」

「じゃあこの状況どうするの?」

「……」


 うう、何も言い返せない、しかたない……ここは俺が正直に話すしか……ないよね?

確かに真実を言うのは怖い、下手すればマジで殺されるかもしれない……でも、このまま死んだことにするのはこの人たちがかわいそうだ。実際このままにしておくとこの人たち切腹でもしそうだし……


「あの~」

「あ? なんだ兄ちゃん? そういやぁお前も、もしかしてあの兄ちゃんの知り合いか? それだったらほんとにすまなかったな……」


 心が痛い……


「あ、いやその刺された本人です」

「「「は?」」」


俺が真実を話した瞬間、その場にいた全員がその場に固まった。


「だから、その刺されて死んだっていう人は僕なんですよ、あの後なんやかんやあって助かりました」


俺があははは~とさらに説明を続けるも3人に至っては全員、「えっ」って顔で固まってるし、白もそっぽを向いて『僕は関係ありません』みたいな表情をしている。

そんなよくわからない空気の中、最初に声を出したのは3人の中で一番ショックを受けていたバンだった。


「そうか……そこまでして俺たちのことを……」

「えっ……?」


話を始めたバンの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

そんな男の涙に俺は嫌な予感がし、全力で頬を引きつらせる。


「連れが殺されたってのによ……俺たちが自分を責めないように気遣ってくれたんだろ?」


どうやら俺の予想は当たっていたらしい。

あれ~? おかしいな? 話がもっと変な方向に行っちゃったぞ……


「あ、いや……本当に死んでませ……「いや、いいんだ俺にはその気持ちだけで十分だ、ありがとう」


俺の言葉が完全に遮られた。


(もうだめだこの人たち完全に俺が死んだと思ってるよ……どうしよう?)



次回も出来るだけ早くに投稿します!

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