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第12話 吸血鬼だからね……


誤字、脱字等がありましたらご気軽に指摘してくださるとうれしいです!

よろしくお願いします。

ホワイトルームについたときには俺はもうヘトヘトだった。

荷物を奥に運び、少女を喫茶店の中にあるソファーに寝かせると俺もその横に座り込む。

荷物だけでも大変だったのに女の子一人プラスだぞ!?


「やっぱり男の人は強いね~お疲れ様」


本当に大変だったんだからな、グラスなんて白のフードの中でずっと寝てるし……

俺がそんなことを考えている間にもグラスはスースーと寝息を立てている

なにがドラゴンだよ全然役にたたないじゃないか!


「それにしても白この子なんだか痩せてないか?」


そう言いながら俺はソファーで眠っている少女の方に視線を向ける。

運んでくるときに感じたんだが妙なくらい軽かったんだよな、いくら子供だからってあれは軽すぎるだろ?(体感なんだが多分30数キロぐらいだと思う……)


「奴隷っているのはろくにご飯も食べさせてもらえないんだよ、たぶんその子も当分食べてないと思うんだけど……」


奴隷を扱う又は、買う人たちは奴隷のことを人として見ていない

そもそも奴隷に成り下がった時点でそれらの人たちと奴隷には圧倒的な格差が生まれてしまう、それの格差「主」と「道具」である。その関係だけは絶対に破られることはない、例えその奴隷がどんなに子供でも……


そう思いながら俺は女の子の方をまじまじと見つめる、女の子は安静に寝ているがその顔は少し強張っているようだった。


「さて、僕はその子が起きた時にすぐ食べられるように夕食を作ってるよ、タスクくんちゃんと見ててね」

「はいはいわかりましたよ」


隣で寝息を立てて寝ているこの子はまだ起きなさそうだし俺も一眠りするか、そう思い立ち俺はゆっくりと目を閉じる。


ガタンッ……


静かな空間だからこそなのか普通より大きな音が響き渡る。

俺はなにかが倒れる音で俺は目を覚ました。


「あれ……寝てたのか」


寝起きでボーっとしながらも辺りを見回すって、あれ? 隣で寝ていたはずの少女がいつの間にかいなくなっている。

俺は一瞬焦った、しかし、すぐに近くの椅子が倒れていることに気付く。どうやらあの何かが倒れる音は近くの椅子が倒れた音だったようだ。


「こっちか……?」


俺は立ち上がり椅子が倒れている方向に歩いていく、すると、予想どおり倒れた椅子の近くの部屋の隅で少女は小刻みに震えていた。

まぁふつうに考えて起きてみたら知らない場所にいた、なんてことがあったら怖いだろう、もっとも今回の場合は他の理由のありそうだが……とりあえず安心させるため声をかけてみる。


「俺の名前は如月佑よろしくね、それで君の名前は?」


俺が質問しても少女は何も答えず、あいかわらず震えている。その姿はとても弱々しく、どこか寂しいものだった。

とは言ってもずっと床に座らせておく訳にもいかない


「とりあえずそんなところにいないでこっちに座りなよ」


そういって俺は手を差し出す。


ガブッ!!


「痛ったぁー!」


手を差し出した瞬間俺は女の子に思いっきり噛まれた、そういえばこの子吸血鬼だったな……すっかり忘れてたよ。静かに反省する俺だったがそんなことはお構いなしに傷からはだらだらと血が流れ出てくる。

俺を噛んだ張本人とは言うと自分の手に付いた俺の血をペロペロと舐めている。(その姿を見て一瞬、カ、カワイイ…… と思ったのは秘密だ)


その瞬間チラッと鋭い八重歯が見えたような気がしたんだがよくよく考えたら吸血鬼なんだから当たり前か。

その後、俺の悲鳴に駆け付けた白により少女に噛まれた傷は治ったが、少女はまだ部屋の隅で震えている。


「で、タスクくん状況はどんな感じ?」


白が俺の耳元で小声で囁くように聞いてきた。

 う~ん、状況ね~?


「一応名乗ったんだがこのざまです……」


そう言って俺は傷は治ったがまた痛みが残っている気がする右腕を白の前に差し出す。

普通に痛かったよ……血も結構出たし、


「よし! じゃあ次は僕がいくよ」


そういって白は少女に近づく、そして手を差し出しながら……


「僕の名前は白よろし……」


ガブッ! 


「痛ったぁ~!」


知ってた……

いやいや、今の結果は分かりきってただろ! 俺がダメでも白ならワンチャンとはならなかった。


「いやちょっとまってふつうに痛いんだけど!?」


噛まれた白が涙目になって訴えてくる、だが、その腕の傷はもうとっくの昔に治ってしまっている。

まぁ吸血鬼だからね牙あったし……


「しかたないな~じゃあちょっと待ってて」


そういって白はキッチンから夕食のスープを持って来て少女の前に置いた。


「おいしいから食べてね、お腹すいてるでしょ?」


そういってから白は自分もスープを持ってきてテーブルに座って食べ始めた。


「おい、いいのか?」

「うん体の傷は癒せても心までは僕でも癒せないからね~」


そうか……かといって俺もあの子の心を癒す自信はないし……ここは白に任せるしかないか



夕食を食べ終わり俺が自室でくつろいでいると廊下から話し声が聞こえた。

(この声は……白と……あの子か)

ど~しても気になってしまったので俺はそっとドアを少しだけ開いて話を聞く。


「そういえば君の名前を聞いてなかったね、名前は?」


白が優しく質問すると少女は少しの間戸惑っていたがすぐに震えた声で答えた。


「私……シャルって言います」


それを聞くと白は笑顔で


「シャルちゃんかいい名前だね」


と一言言っていた。それを聞くとシャルは少し安心したのか少しずつ話を始めた。


「白さんは……なんで私を助けてくれたんですか……ケガだって見えてなかったでしょう?」


あ、確かに俺も知りたい

あの時は檻まで結構距離があったし服だってきてたんだぞ、両目が視力Aの俺でさえ見えなかったしな

それを聞くと白は平然と答えた。


「それはシャルちゃんの服に血がにじんでたからだよ」


そうだったの? 全然見えなかったんですけど……?

それを聞くとシャルは少し困った顔をして


「それにしたって……なんで大金を払ってまで私のことを」


シャルが質問すると白はフッと笑って、


「昔僕も似たようなことが……!?」


ガタンッ!


白が何か言おうとした瞬間、多分ドアに寄りかかりすぎたのだろう、突然ドアが開いてしまった。


「うお!?」


その勢いのまま俺は床に叩きつけられる。


「イタタタ……あれ?」


床に向いた目線を上に戻すとそこには犯罪者でも見るような白の姿があった。


「タスク……くん? 何をしているのかな?」


シャルの前だからだろうか? 白はいつもどうりの笑顔だがその真紅の目だけは真っ直ぐに俺を見ている。一言で言ってとても怖い……


「あはははは……あれだよ、あれ ト、トイレに行こうてしてねちょっと焦っちゃったんだよね……」


俺は出来るだけ全力で誤魔化そうと努力する。

しかし、その努力も虚しく、すでに白の目には女の子2人の話を盗み聞きしていたやばい奴という俺の姿が映ってしまっていた。


「ふーん、で……一応聞くけど僕たちの話聞いてない……よね……?」

「は、はい! もちろんです!」

「……」


俺が元気よく答えると白は少し迷ったような顔をする。

よかった……まだ何とかなりそうだぞ

白もまだ……ギリギリ俺の事をやばい奴とまでは思っていないらしい。

そう考えた俺は何とかしてこの場を切り抜けようと頑張ってみる。


「じゃ、じゃあ俺はもう寝るから2人ともオヤスミ~」


そういって俺はそそくさと自室に戻る。

その間、白からは疑いの眼差しが向けられていたが、俺の鉄壁の豆腐メンタルの前ではそんな眼差しは全く持って無意味だ……

何故かとても悲しくなりました。



タスクが部屋に戻った後、白は大きなため息をする。


「はぁ~ほんと、油断も隙もないね」


その姿は怒っているいるようだが、どこか楽しんでいるような雰囲気も感じられる。


「ふふッ」

「え?」


そんな白の姿を見てシャルは思わず吹き出してしまった。

白が驚くのも無理はない、なにしろシャルはこの喫茶店に来てから一度も笑っていなかったのだ。


「ご、ごめんなさい……つ、つい」

「あ、いや、別にいいからね!、うん……」


この場に気まずい雰囲気が漂う、そんな雰囲気の中で最初に声を出したのはシャルだった。


「仲……」

「えッ?」

「仲いいんですね」

「えッ!? いや、そんな全然だよ?」


白が明らかに動揺の色を見せるとシャルは白の方をジーっと見つめ始める。

その目は好奇心で一杯です! と言わんばかりにキラキラ輝いていた。

白はそんなシャルの目を見て何かを察したのか無理やり会話を終わらせようとする。


「そ、それじゃあもう寝ようか、シャルちゃんも疲れてるでしょ?」


シャルは少し物足りなそうな顔をしたが疲れていたのは事実なので小さく頷く。

それを見て白はうんうんと満足すると、


「じゃあ……部屋はこっちでいいかな?」


そういって白はタスクの部屋の横の部屋にシャルを連れて行った。

そしてドアに手を付いて、「取り敢えずここでいいかな?」と一言いうとドアを全開に開ける。


「じゃあ何かあったらすぐに言ってね、ねおやすみ~」

「……」


白が自分の部屋に戻ろうとドアノブに手を掛けるとシャルは白の袖をギュっと掴んだ。

そのシャルの目にはさっきの好奇心の色は見られなく、うっすら涙が浮かんでいる


「しょうがないな~」


白はシャルの手を包み込むようにして握ると一緒に部屋へ入っていった。



その一部始終を密かに聞いていた者がいた。

そう、俺だ

白が言いかけたことを最後まで聞こうと、壁に耳を当てて聞いていたがそれらしきものは聞けなかったのだ。

なぜこんな変態じみたことをしてまで聞きたいのか、他人が聞いたら多分そう思うだろう。

俺もただ気になるだけでこんなことをしていた訳では断じて無い、それにはちゃんと理由というものがあるのだ

あの時、白が何か言いかけた瞬間、たった一瞬だけその目がとても悲しいものに見えたのだ、その目は昼間の奴隷の人たちとは比べ物にならないくらい、何か途轍もなく不安になるような目だった。


あの目は一体何だったのか? それは結局分からないままだった。


俺はベットに横になりゆっくりと目を閉じる。

白とシャルは今頃一緒に寝ているだろう、案外白も優しいんだな……

さて、今日も疲れたし休みますか……



俺ハブられてね?



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