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王国の君  作者: てんまゆい
二章 外へ
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27 食い違い

 判断と意思疏通は早かった。

 あからさまに危険のある相手を馬鹿正直に相手する必要はないのだから、方針は隠れる一択。

 けれどもここまで無理を強いてきた身体で、物音を立てずしかし迅速に身を隠すのは不可能に近かった。


「物音か?」

「あいつらが覗きにきたか」

「そういや上の方が騒がしいか……?」

「……見に行かせましょうか」

「必要ねえ。オレが行く」


 ――――一向に出来上がりゃしねえオモチャを見守るのにも飽き飽きしてたところだ。

 まるで獰猛な獣が待ちわびた退屈しのぎを見つけたようだった。


 ――――隠れる?

 ――――でも見つかった場合に逃げられるの?

 ――――不意打ち?

 ――――でも次また勝てる保証は? 複数人いるのに勝てる可能性って。

 ――――逃げる?

 ――――背中を追われる前に少しでも引き離すべき? 行く手で起きているはずの捕り物は突っ切れるの?


 隠れてもおそらく見つかる。積み上げられたあれこれの隙間に潜り込めても、身動きも構えもままならない状況では見つかった時点でいいようにされる予想しかない。

 戦うのは以ての他。一人でくる保証もない。こんなところで悪巧みをしている人間の実力が外の者に劣る可能性も低い。

 となれば、現状で最善の選択肢は一つ――――――


「――――逃げるよ!」

「――――隠れるぞ!」


 ――――――――――――。

 土壇場で食い違う意見の、なんと恐ろしいことだろうか。

 永遠にも思えるほど引き延ばされた一瞬が、捜索者の第一歩で強制的に断ち切られる。


 ――――続く轟音が度肝を抜いた。


「ハッハハァ! ここにも一丁前に鼠が隠れてやがった!」


 舞い上がる塵芥を引き裂いて、凄絶な笑みを浮かべた獣が二人を捉えた。

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