異世界に転生させたのは、とある劇団でしたどうしよう
その時、王宮に衝撃が走った。
魔法陣に現れたのは、戦士と言うにはほど遠い格好のおっさん2人と、ひょろひょろの男と女、赤ん坊だったのだ。
皇帝が口を開いた。
「何でこんな弱っちい奴らを召喚した?」
魔導師のアザゼルは首を傾げ、嘆くようにこう言った。
「おかしいな……?私の魔法に狂いはないはずなのに……」
魔法陣の上に立っている5人のうちの4人は、何が起こったのかわからないようだ。
しかし、1人だけ、目をキラキラさせて興奮している奴がいた。
赤ん坊を抱いていた嶋本和也という男である。
彼は、「これが噂の異世界転生ってやつかぁ!!すげえなぁ……。」と興奮した面持ちでさっきからやかましいくらい喋っている。
「やかましい!こんな非現実的なこと、あってたまるか!」
和也の後ろから怒鳴ったのは坂木康介。物書きなのか、鉛筆と紙の束を持って何かを書いている。
皇帝が言った。
「お主ら、職業は?」
5人そろって皇帝を睨み、叫ぶ。
「役者だよ!!そして、俺たちは劇団組んでんだよ!」
目を見開き、驚く皇帝。
アザゼルも驚いてうごかない。
この後、召喚された者たちは皇帝の前で1本、劇を披露し、皇帝を大激怒させたという。その後、この召喚された者たちに関する記録は残っていない。打首になったとか、元いた世界に戻されたとか、色々な憶測が飛び交っているが、真実はわからない。その王宮に関する記録も、その時から途絶えている。
続きものではありません。一話完結です