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メイディ-ブラッド  作者: 綾
第一章:前編『吸血鬼、再誕』
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06「前夜」

すみません、今日休むとか言いながら書けてしまったので置いときます。

 壁の修復はケルディの使い魔のワーフルフに任せた。 使い魔と言っても、魔物を調教しただけだ。

 俊敏性と凶悪性を持った彼らが、せっせと壁の残骸を運んでいるのはシュールだ。戦と名のついた彼らが補修作業を行うことをどう思っているのか興味はあるが聞くつもりはない。


「勝手に決めちゃったけれど、いいのよね」

「……問題ありません。もう隠れるのは終わりです。次は戦うための兵隊を集めなければなりません」


 夜明けに街へ出掛けるため、戦士たちは既に眠りについた。カールには細胞の再成速度を一時的に上げる薬を与えた。とてつもなく苦いが、既に痛みは和らいだようで今は仲間達と眠っている。


「やはり、教えてはくれないのかしら」

「これは先代方の悲願ではありますが、方向性は任されています。あれの強さを知るということは、強さに対して目標をつけることになる。目標は、指針にもなりますが限界にも成りうる。メイディ様には限界を作っていただきたくはありません」


 ケルディはブラッド初代から支えている執事だ。その詳細を聞いても語ってくれない。主の命令だというのに。それにもきちんと理由がある。彼の過去を語るには"あれ"は避けて通れないかららしい。しかしそもそも"あれ"についてメイディは一切知らないので、推測することすら出来ない。

 一つだけ分かっていることは、ケルディと、先代は"あれ"を恐れている。強者である彼らが恐れるくらいなのだから、想像することすら不可能なくらい理不尽な強さを持っていると考えられる。が、そこまでだ。それしか考えることはできない。所詮ただの予想である。推測と予想は違う。予想はプラスの面でもマイナスの面でも拡大解釈をしがちになる。


「"あれ"が分からない以上、それに振り回されるつもりはないわ。まずは、緑狼の出所を叩く。100年も付きまとわれて、うざいったらありゃしない」


 街を襲うバケモノを処分する理由は3つある。

 一つは父の結んだ不干渉締結の解消のため。

 一つは緑狼の出所を突き止めて潰す。緑狼は、黒の館がある丘の、奥の森から来ている。そしてその森は湖へと繋がっており、街の領地に入る。つまり街に出入り出来ない今は緑狼を追うことは出来ない。

 一つは、"あれ"を考慮してだ。まずはこの街を手に入れる。私は街を隠れ蓑にしつつ、その支配地を拡げていくつもりだ。そうすればいずれは炙り出せるだろうし、引っ掛からなかったとしても数の上では勝利出来るだろう。


 まとめると、戦争を効率的に進めるために街を手に入れる。邪魔な奴は潰す。


「なんだか……嬉しそう。気のせいかしら?」


 メイディは窓から月を見上げていた。 季節はそろそろ冬になる。窓に写る滅多に喜怒哀楽を顔に出さない執事が、頬を弛ませていた。


「……気のせいではありませんよ」


 執事が踵を返し、部屋のドアへと歩んでいく。主に背を向けて会話するという暴挙は、二人がただの主従関係ではないことを物語っていた。


「あそこは、初代ブラッド、エンペラー様が造られた街であり、ブラッドが支配すべき土地です。再びブラッドの元に返ることが願いそうで、何よりも嬉しいのです」


 ブラッドが手に入れたものは多い。しかし今はこの館を含む領しかない。ブラッドと共に歩んできたケルディにとっては、全て奪われたも同然の感覚だ。そして執事として全てを取り戻し、元に戻したいというのも同然の願いだ。


「ロードの再構築をしてきます。明けには終わらせますので、それまでメイディ様はお休みください」


 メイディは振り返らずに、黒の館の5階から街を見下ろした。丘という高さがあるので、全域を見渡すことが出来る。その街を撫でるように窓へそっと手を添えた。


「……眠れないわよ。眠れるわけないじゃない」


 うっすら笑みを浮かべる。

 人間にとってのバケモノなどたかが知れている。それを処分するというロウコストで出入りが解かれる。気持ちは宛ら、遠足へ行く子供のようであった。

前回のジャンルの話です。


ファンタジー×戦略です。


戦略と侵略で言葉選びに悩みましたが、戦略のがかっこいいので戦略にしました。


戦略ファンタジー、どうですかね。

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