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「おー……」
「意外といい感じ……?」
テレポートでショッピングモールまで飛んできた明崎と須藤は、程なく笠原と池上を見つけることになった。
遠巻きにこっそり眺める。
特に目的も無いようで、店々にふらっと立ち寄っては服や雑貨を見て歩いていた。
「あ、何か勧めとる」
「断られたな。何回目?」
「……4回目?」
メッセージによれば、今のところ特に問題無くデートは進んでいるらしい。
「しかし会長も粘るな。俺あんなに必死なトコ初めて見た」
「やんなぁ。……にしても、」
明崎は2人から目を離し、その周辺にも視線を巡らす。
彼らの周りには、多くの人が留まっている。
「注目度が……」
「ああ……すげぇな」
当たり前というべきか。
とにかく女性客の注目が半端ないのである。
世間一般でいう、とんでもなく麗しいお顔立ちをした2人だ。
彼らの容姿に見事乙女心を撃ち落とされた彼女たちは、彼らの行く先、立ち寄る先でどんどんとその人数を増やし、気づけば色めいた声を上げながら、ぞろぞろとついて行っている。
その光景たるや、何やら凄まじいものがある。
「どんなモテ方だよ」
「もう芸能人みたいな感じやんな〜」
池上がふと後ろを振り返って、辺りに目を走らせる。
声は掛けられていないものの、視線には気づいているらしい。
笠原は、全く気づいていないようだが……
「あ。どっか行くぞ」
池上が笠原の二の腕を掴んで、店から連れ出した。
笠原が戸惑ったように見上げるが、池上は短く言葉を発しただけで、どんどん先を歩いていく。
女性陣もその後をすぐさま追い出した。
「おおっと待って待って〜。どこ行くんや〜」
明崎たちも2人を追って、移動した。
池上は心なしか、足運びが速い。
どうも注目を嫌がって、女性陣から離れようとしているらしい。
……そんな彼が立ち止まったのは、
「……フォトスタジオ?」
ゴージャスなドレスを纏い、誘うような目でこちらを見る外国人女性の鮮やかなショットが壁一面に飾られた、いわゆる写真館の前だった。
池上は入り口傍の、メニュー表のような冊子を覗いている。
……何か惹かれるものがあったらしい。
池上は笠原を連れて、中へ入っていってしまった。
──────
何の事情も知らされないまま、フォトスタジオに押し込まれて1時間が経過した。
……笠原は今、人生で最も恥ずかしい目に遭っている。
「いやだわ〜本当に綺麗……」
「ねぇ〜!正直お化粧いらないぐらいよね、お肌スベスベだし。羨ましい〜」
中年の女性スタッフの1人がうっとりと感想を零した。
その他、2人の女性スタッフも頻りに何度も頷いている。
そんなお世辞を言われても……全然、嬉しくない。
困り果てて、化粧を施された目元を伏せる。
「あの、これ……」
「撮影行きましょうね〜」
フォトスタジオの内装は白と水色(と、少々のピンク)を基調にしていて、華やかな雰囲気が漂っている。
入り口をくぐった時は、どちらかというと女性向けの場所だという印象を受けていたが……その通りだった。
そもそも自分がフォトスタジオに連れてこられたとすら把握していなかった笠原は、何が何だか分からない内に、池上とスタッフによって話を進められ、気づくと女性スタッフ3人に別室へ連れ込まれていた。
鏡の前に座らされ、化粧が始まり……女装させられるのだと、その時になってようやく知ったのである。
あの男……!
手の込んだ嫌がらせか何かか。
訳が分からない。
一体何をしたいのだ。
しかし事が起きてから抵抗する訳にもいかず、じっと羞恥に耐えていたら……次に笠原が目にしたのは、純白の美しい着物だった。
……いわゆる、白無垢というやつだと一目で分かった笠原は呆然とそれを見つめるしかなく。
そして3人掛かりで強引に着付けされてしまった笠原は、仕上げに綿帽子を被せられ……そして今に至っている。
ずっしりと重い白無垢は歩きにくく、スタッフの手助けが無いとまともに移動出来そうにも無い。
笠原が酷く恥ずかしがっているのを分かってて連れて行くスタッフ達も、楽しんでいる節が見受けられ、更に居た堪れなかった。
「……綺麗だ」
撮影ブースで先に待っていた池上は、現れた笠原を見るなり、恍惚とした表情でそう言った。
ただし今にも恥ずかしくて死にそうな笠原には、その恍惚とした表情が視覚的情報として受け取れない。
今すぐ部屋に引っ込みたかったし、その前に何故かしっかり袴姿の池上を殴りたかった。




