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〈LINEにて〉
明崎:おーい無事ー?
笠原:問題無い
明崎:あ、生きとる。今どこ?
笠原:×××美術館に向かっている
明崎:(・ω・)
明崎:((pωq))ゴシゴシ
明崎:(・ω・;) ん?
明崎:びじゅつかん?
笠原:刀を観に
明崎:刀ぁ???
明崎:どしたん?とうとう人斬りたなったん?
笠原:そんな訳あるか
明崎:前世武士やった記憶が揺さぶられてとるとか
笠原:馬鹿者
笠原:……何故かは分からないが、
笠原:俺が行きたい所に、といって連れて行ってくれてるのだ
明崎:あーらー……
明崎:……それ大丈夫なん?
笠原:今の所は
笠原:もう着く
笠原:また連絡する
明崎:あー待って待って
明崎:あー
明崎:あー……
「……×××美術館やって」
「それ県内じゃん。近くにデカいショッピングモールもあるだろ?」
「……あー、あるある」
「行くか?」
「どないしよう」
「乗り込む一択。行こうぜ」
「行こか〜」
──────
美術館に到着して、池上と笠原だけで静かな館内へ入場した。
執事はお留守番である。
黒の大理石を使った内装は落ち着いた雰囲気を醸し出しており、照明も柔らかだ。
壁が一面ガラス張りになっている所からは、趣のある日本庭園風の中庭が望める。
訪れた人々は、誰もが穏やかな面持ちで滞在していた。
余り騒がしい所に行きたがらない笠原にとっては、好ましいスポットと言えた。
そして。
目的の展覧会場へ足を運ぶなり、笠原は整然と並んだ刀に何か胸が踊るものを感じてしまい、あっという間に目を奪われることになった。
思わず隣の池上を忘れてしまったほどである。
「凄い見惚れようだな……」
呆気に取られた池上も、ついそう声を掛けてしまった。
ガラスケースから目を離した笠原が、こちらを見上げる。
「好きなのか」
聞くと、コクコクと頷かれた。
彼の両瞳が、とてもキラキラと輝いているように見えるのは気のせいじゃないはず。
そんな所に若干気圧されつつも、池上は彼の歩調に合わせ、ゆっくりとついて行く。
笠原は刀の柄から、鍔にあしらわれた装飾、美しい刃紋まで、一振り一振りをじっくりと眺めた。
それぞれが、丸で表情が違うのだ。
端麗な佇まいのものがあれば、華やかに着飾ったもの、職人の遊び心が溢れるものもある。
前から興味はあったが、見れば見るほど面白かった。
けれど中盤辺りまで差し掛かった所で、何かの拍子に池上に軽くぶつかった時、笠原はハッと我に返った。
……心配になって、池上を振り返る。
「退屈、してないか?」
「急にどうした」
「何だか俺ばかり楽しんでいる気がして……」
「全くそんなことはないから安心しろ」
寧ろ普段見ることのない、笠原の楽しげな様子をすぐそばで眺めることが出来て、池上は眼福である。
「にしても、そんなに好きだとは思わなかった」
「ああ……面白いものだな」
「よく来るのか、こういうのに」
「いや。初めてだ」
「え」
拍子抜けして、池上は間の抜けた声を上げた。
「……初めて?」
それだけ熱心なのに?
「中々来れるものでもないし……まさかこれだけの為に、はるばる家から来る訳にもいかんだろう?」
「そうか?少しでも興味があるなら、行くべきだと思うが」
「……金銭的な問題が」
「……なるほどな」
インドア寄りなのは、そういうことだったらしい。
つまり自分がこうやってリサーチして連れて行くようにしたら、好感度も上がるという訳だな。
下心しかない池上は、最早ギャルゲー脳に近い思考しか出来なくなっている。
「俺が調べておこう」
笠原が不思議そうに池上を見上げた。
「何故?」と目が問いかけている。
「また出かけるためだ、一緒に」
そう言ったら、びっくりしたように目を丸くされ……やがて困ったような、照れた表情を浮かべて、目を逸らされた。
あ、照れてるっ……こいつ照れてる!
可愛い……!!
池上の喜びがストレートに、笠原の心に届いたらどれだけ良かっただろう。
デレを拝めた嬉しさの余り、池上の腰は砕けかけた。




