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……ほほう。

あの池上坊ちゃんが。


やはる面白くなってきて、事の成り行きを見守るスタンスに戻った執事。

言い出すにはかなりの勇気が要たはずだろうが……それよりも恐らく、笠原の無言の非難に耐えきれなかったのだろう。

それでもちゃんと笠原に顔と身体を向けた辺りは良い。


「……もし予定が入っていたら、どうするつもりだったのだ」


対する笠原は池上を見ようとせず、正面を見たまま言葉を返した。

……彼の言うことはごもっともである。


「……すまん」


池上が頭を下げた。

執事も倣って頭を下げた。

最初は執事も止めたのだが、まぁ雇い主が強引に事を始めたからには仕方がない。


「……それで、今回はどうして俺を連れ出した?」


そして質問をされると、池上はぐっと言葉を詰まらせて黙り込んでしまった。

えっ、とびっくりしたのは執事である。


うっそ、ソコ……ソコで黙るぅ?

言っちゃえばいーじゃんもう〜、「デートです」って。

正直に言っちゃえよ青春なんだから。


内心、ただの野次馬でしかない。


「いや……実は、その。お前とは一度出掛けてみたいと」

「出掛けてみたい?……俺と?」


結局池上が選んだのは随分無難な答えであったが、笠原は毒気を抜かれたように、きょとんと目を瞬かせた。


「そ、そうだ!じっくり話したかった。学校では、中々そういう機会もないからな」


池上の言葉に軽く瞠目した笠原だったが、、やがて不思議な物を見るような目で池上を見つめた。


「……アンタ、変わってるな」

「なっ……か、変わってる訳ないだろ!俺はずっとそう思ってた!」

「そ、そうか……。そういうことなら、まぁ」


笠原の語気が柔らかくなった。

嬉しかったのかまでは分からないが「次から、連絡は入れるように」と言って許してくれた。

それだけでも良かったというのに、池上は更に”正規のルート”を通して、初めて笠原の連絡先を手に入れることが出来たのだ。

本当はこっそり調べて知っていたことは、内緒である。

実に大きな快挙と言えた。


「それで、今日は何処へ?」


笠原の興味がようやくこちらに向いた。

「それだが」と池上はスマホを取り出して、ネットのページを開く。

断然話を進めやすくなって、池上の口取りも軽くなる。


「この辺りに行こうと思ってる」


指で拡げたとある街のマップには、主要な娯楽施設とイベントの一覧が載っている。


「この一帯なら、動物園とかショッピングモールもあるぞ」


言いながら池上は笠原の様子を窺った。

笠原はじぃっとマップを見つめていたが、やがて「これ……」と言って、ある場所を指差した。

美術館だ。

展覧会の内容が彼の気を惹いたようだった。

それも内容が。


「刀……?」


中規模ではあるが、室町時代から近世に掛けて造られた刀を中心とした展覧会があるらしいのだ。


「いや、アンタが興味無いならそこまで……」

「何を言う。言ったからにはそこまで興味を持ったんだろ。行く」

「だが、」

「二度は言わん」


こうして池上と笠原の初デート(?)は美術館での刀鑑賞に決まったのだった。


それにしても、やっぱり武士なんだな……

池上の興味はまだまだ尽きない。


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