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『プリーズテルミー 事情説明!』
辛うじて持っていたスマホに、明崎からメッセージが届いていた。
『俺も分からん』
正直な感想をそのまま送って返した。
いっそこちらが『プリーズテルミー 事情説明!』である。
車が動き出して、あれから何度か笠原は「車から降ろせ」と要求しているが、池上達は全く頑として受け付けてくれなかった。
要求を諦め、黙って窓の外を眺め始めてからおよそ10分。
何処に何の目的で連れて行かれるのかさえ教えてくれない。
そもそも池上は、機嫌が悪いのか仏頂面のままだし、まともな会話すらしていないのが今の現状だ。
本当に笠原が目的なのかすら分からなかった。
笠原はそっと溜息を吐いて、スマホをジーンズのポケットに仕舞った。
──────
実のところ。
池上は機嫌が悪い訳じゃない。
既に多大なる誤解を生んでしまっているが、ただ顔に出さないようにしているだけで、それはもう物凄く緊張しているのだ。
普段の池上であれば「取っ替え引っ替え・よりどりみどり・飽きたら捨てる」の三拍子で、もっと相手をぞんざいに扱っているし、相手も池上に縋りつこうと必死に媚を売る。
本来ならばそういう光景が広がっているはずだった。
それが今はどうだろう。
あの何様俺様池上様が、今や笠原の小さな溜息1つにその身体をビクリと肩を震わせているではないか。
そして笠原は、早くも池上にうんざりした様子で窓から見える景色を眺めている。
当然、池上に対する好意など1ミリも感じられない。
あの池上坊ちゃんをねぇ〜……
運転する執事も思わず苦笑いを浮かべた。
まぁ中々見れない光景だ。
自分はあくまで送迎係なので、車より外について行くことはないが。
果たしてどうなることやら。
車は間も無く、港へ到着する。
執事は面白がりつつ、素知らぬ顔で車を進めた。
──────
フェリー内に車を止められ、一旦車から降りた笠原たちは待合室へ向かった。
いつもの一般席……を通り過ぎて、池上たちが迷いなく向かったのは、いわゆるグリーン席と呼ばれる所だった。
一般席は椅子ばかりが列になって連なっているが、グリーン席は4人が対面で座れるようになってる上にテーブルが備え付けてある。
もちろん椅子だって質が良い。
連れて来られて戸惑う笠原は、当然ながら一度も座ったことがなかった。
「好きな所に座れ」
池上に促されて、とりあえず席に着く。
……池上は、どこかぎこちない様子でその隣に座った。
執事は対面の席に座る。
「………」
「………」
やはり笠原と池上の間に、沈黙が降りた。
いい加減、何か話を振ってやればいいものを。と執事も思う。
池上だって将来を約束された身だ。
それ故の人付き合いも高校生の身で既に行っているのだから、多少なりとも爽やかに弁舌を振るうことは出来るのだ。
さて……これは大人の自分から、話を振ってやるべきか。
考え始めた、その時だった。
「いきなり連れ出して、悪かった」
と池上が唐突に謝った。




