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「おはようございます」


戸口に立っていたのはスーツ姿の、やはり若い男だった。

整った顔立ちに爽やかな笑みを浮かべ一礼するや、「ささ、こちらへ」と執事(仮)は笠原を外へ出るように促した。

家の前には、黒塗りの車が停まっていた。

窓やドアのラインが銀縁で、傷一つない重厚な雰囲気の漂うそれは、見るからに高級車という感じで。

……そういえば、以前明崎が「あ、これ高いねんで!知ってる?社長さんとか乗ってるやつやで」と言っていたのは、この車種ではなかっただろうか。

気圧されている内に、執事(仮)によって後部座席のドアが開く。


──席のど真ん中には、仏頂面の池上が座っていた。


「……おはよう」


とりあえず、声を掛けてみる。


「……ん」


返ってきた返事はそれだけだった。

……一体何しに来たのだ。

笠原は少し身を乗り出して聞く。


「それで用、って……!?」


何故か、手首を掴まれた。

何が起きているのか分からぬ内に、あっという間に車内へ引きずりこまれ、気付くと笠原は座席に倒れ込んでいた。


バタンッ


えっ……!?


背後のドアが閉められた。

振り返り、急いで起き上がろうとする。


「待っ、何して、」


けれど池上がまだ笠原の手首を捕らえていて、思うように動けない。

振りほどこうともがいたが、その間にも運転席へ乗り込んだ執事(仮)がエンジンを起動させてしまった。


「あ……」


車が、動き出した。

ゆっくり流れ始めた窓の景色。


……何故?


笠原は呆然と、今の事態を眺めるしかなかった。



──────



話し声が聞こえる。

目を覚ました明崎の耳に入ったのは、笠原の声と、誰か知らない男の声。

引き戸の開く音が遠く響いた。


………?


むくりと起き上がった明崎は、寝ぼけ眼のまま部屋から出てくる。

居間のテーブルには、手紙が広げられたままだ。

それらを一瞥して、ふらふらと玄関へ向かう。

玄関の引き戸は開けっ放しだ……と思ったら、閉められた。

何で外出たんやろ。

後を追って、明崎も引き戸を開ける。

と。

家の前に、何だか高級そうな黒い車が停まっているではないか。


……ん?待って。

あれ池上会長んトコの車ちゃうん。


笠原はスーツの人に付き添われ、開けられた後部座席を覗き込んでいる。


「それで用って……」


と言った笠原のその身体が、突如として車内の池上に引きずりこまれた。


「えっ」


一気に明崎の眠気が覚めた。


うっそマジで!!?


しかし動こうとした時にはもう遅く、スーツの人は後部座席のドアを閉め、自分もさっさと運転席に乗って行ってしまった。


えーー…………


そのまま見送ることになってしまった。

その後、我に返り慌てて自室へ戻った明崎は、スマホを手に取った。


『プリーズテルミー 事情説明!』


メッセージを送って、すぐに須藤を起こしに行った。


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