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5

神秘的に照らし出された浮御堂を通り過ぎて、橋を越え、その先の幅の広い階段を上がった。

岸に沿うように伸び上がった階段からは池が見下ろせる。

けれど今は見る気になれず、人の波に押されるようにして、歩いた。

俯いて一段一段過過ぎていく階段を見ている内に、気づけば池も見えなくなって、桜と梅の木が辺りに幾本も植えられた場所へやって来た。

広い芝生が広がっているし、道も3つに別れている。

芝生にはぽつぽつと、あの灯籠が置かれていた。

少し先には、竹で鞠のように編まれた灯籠のオブジェが幾つも見える。

人々は個々に散っていき、明崎たちが歩く道は、人がまばらになった。

ここも会場の1つであったが、2人は黙々とその中を突っ切っていった。


誰かの楽しそうな笑い声が、遠く聞こえる。

周囲の人は誰もが笑顔で。

美しい灯籠の世界を次々に渡り歩く。

そんな中で自分たちは、灯りに見向きもせず、ただ歩いている。

優しいぬくもりを伴った光が、辺り一帯に満ちているのに。

2人の纏う空気は冷たくて、無数の小さなトゲを内包しているようだった。


歩く度に痛くなった。

時間が経つごとに、傷は抉られて広がった。


やがて春日大社の一の鳥居に続く参道に差し掛かり、ずらりと犇めく煌びやかな屋台通りを抜ける。

興福寺の傍の道まで来る頃には、再び静けさが戻っていた。


更にしばらく歩いて、猿沢池の畔まで来たところで……ついに笠原は足を止めた。


明崎は3、4歩先に進んでから、気づいて振り返った。

笠原はじっと明崎を見つめた。


「……もう俺とは、友達としていたくないのか?」

「……そういうこと、ちゃうよ」


小さな2つの声は、夜闇に紛れた。

傍を幾つもの囁きと足音が通り過ぎる。

誰も2人には気を留めない。


「このままがええねん」

「このまま……?」

「今までと何も変わらんってこと」


明崎は困ったように笑った。


「ごめん、変な言い方してもうたな。深い意味は無かってん」


そんな訳がない、という声が笠原の中で響く。


それじゃあ、何故あんなことを言い出したのか。

急に黙り込んだあの時間はなんだったのか。


あの悲しそうな笑顔はなんだったのか──


「………」


それでも笠原は、言い出すことができなかった。

明崎にこれ以上遠ざけられるかもしれないと思ったら、怖かった。


「……そう、か」


声は掠れていた。

明崎が歩み寄る。


「何か美味しいモン買って帰ろ。全然出店とか、寄ってへんかったな」


もういっかい回り直そう、とは言わない。

それで良かった。

言われても、とてもじゃないがそんな気分になれない。

再び隣に連なって、ゆっくり足を進める。

明崎の隣を歩きながら、笠原は明崎の存在が離れているように感じた。


そんな言い知れぬ不安に揺れる、笠原の心そのものを表したように。

真っ黒い夜空を映した池の水面は、小さくさざめいて、幾重にも折り重なった波紋をぶつかり合わせた。


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