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「それは……」


どういう意味で、答えろというのか。

戸惑い、明崎を見るも、明崎は何も答えてはくれない。


……笠原は、躊躇いながら頷くしかなかった。


「アンタのことは、そう思っているつもりだ」


──友達、として?


言いながら、自分の中で引っ掛かった言葉に気づいた。

けれどその時には、もう明崎は「そっか」と破顔していて。


「急にどうしたのだ」

「いや〜、もしここで嫌いとか言われたらめっちゃショックやんな」


若干ズレた答えを言いながら、何でもないように明崎は笑っている。


「俺も好きやけどさ……紫己」


明崎が呼び掛ける。

その笑みが、微かに翳った。


「今まで俺、何も分かってやんと君に接してたな。ホンマ、俺アホやなぁって思ってる」


話が見えない。

返事を返せずにいる笠原。

明崎は話を続ける。


「君が思ってるほど、俺なんて全然強ないし、出来てへんよ」

「団之介……?」


何故だろう。

聞きながら、笠原は不意にこの先を聞くのが怖くなった。

不安で心許なくなる。

そんな笠原と目を合わせた明崎は、どうしてだか悲しげに笑っていて。



「きっと君が望んでるような関係には、俺ら……なれへんと思う」



向こう岸を行き交う人々。

木の橋や、土の道が立てる無数の足音。

オールで掻き分けられる水の音。

揺れる水面のさざめき。


それらが、笠原から一気に遠のいた。


「………」


胸の中が冷水に晒されたようだった。

半ば呆然として、返す言葉が見つからない。


俺が望んでいるような、関係──?


「……何だそれ」

「………」

「アンタさっきから、何を言っている?」


笠原が問いただしても、明崎は視線を下げて何も答えようとしなかった。

……今までの自分たちを否定された訳ではなくて、これからの自分たちの関係を断たれた訳でもなかった。

ただ。


何かに対して、一線を引かれてしまったことだけは分かった。


「望んでるって、俺が何を望んでるというのだ?」

「………」

「なぁ、団之、」


名前を呼ぼうとした声は。

3番のボートの方、お戻りくださーい。という貸しボート屋の声に途中で遮られた。


3番のボート……自分たちの舟だ。


「……わっ」


舟が急に大きく揺れた。

笠原は思わず声を上げてよろめき掛けるが、明崎は動じた様子もなくオールを動かし出した。

進む勢いが妙に早い。

明崎が水を操っているのはすぐに分かった。

笠原が何か言う間も無く舟はあっという間に船着き場に着いて、貸しボート屋の人に迎えられる。

それからは無言で歩き出した明崎を、笠原は雑踏に飲まれないようにしながら、ついていった。

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