聞きたくなかった
「……そういえば」
「うん?」
車に乗ってから、ふと気になっていたことを思い出して槇に聞く。
「どうして、錦野さんが俺のこと……その、化け物みたいに思っていないのが分かったのですか?」
「ああ〜」
槇は頷いて答えた。
「最初に僕の顔を見た時から、全然敵意を感じなかったんだ」
「え?……でも、それは槇さんだけのことでは」
「本当に嫌なら、「お前も仲間か!」って気持ち向けられるものだからさ。寧ろ僕の顔を見て安心されてたよ」
「安心、ですか?」
意外な言葉に、笠原はきょとんと目を見開く。
「心配してたんだよ。ほら、錦野さんにしてみれば、笠原君は顔の見られるなり部屋出ちゃったから。その時から、君が鱗のことで相当嫌な目に遭ってきたのは、分かられてたと思うなぁ」
「……そう、なんでしょうか」
「実際そうだったでしょ?」
確かにそうだったので、笠原も頷いた。
「どっちかといえば笠原君の方が、凄く悶々としてたからね。だから……ごめんね、急にあれ剥がしちゃって」
言うまでもなく、あれは本当に心臓に悪かった。
正直、かなり強引な手段だったと思う。
「でも、お陰で錦野さんがどう思ってらっしゃるのか分かったので……寧ろ、あれで良かったです」
「そう?ホントは結構びっくりして文句あると思うんだけど」
「……少しだけ」
答えたら槇は笑って「お詫びに、何か好きなの買いに行こうか」と言ってきたので、笠原は慌てて辞退を申し入れた。
「笠原君のそういうトコ、ほんと偉いし好きだけどね。でも、たまには我儘言わなきゃ」
「う……」
似たようなことを明崎にも言われたと思う。
とりあえず言われた通り、何か欲しいものを考えてみるが……
言われて、パッと浮かぶ物が何一つ無い。
「……全然、浮かばないです」
「じゃあ今日のところは夕飯に反映しようかな」
スーパーに寄るね、と槇は告げて、車を走らせた。
──そして明崎は。
家に戻ると、何事も無かったように宙と一緒に出迎えに来た。
槇もいつものように明崎に接していて、夕飯の話をしている。
「……ごめんなぁ、あの時」
「いや、それは……俺こそ」
謝る所から始まったものの、笠原とも話した。




