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「そう言うてくれて、安心したわ」

「錦野さん……ありがとうございます」

「何でや、私は何もしてへん」


錦野さんは指で笠原の頬を伝った涙を拭う。

それでハッとした笠原も慌てて自分で涙を拭った。


「アンタ、替え持っとるんか?」

「替えは、持ってます」


人工皮膚のことだ。


「さっきは上手いこと隠しとったけど、化粧やな」

「はい、コンシーラーで。今は持ってきてないんですが」

「どれ。やったろか」

「い、いえ!」


なんてことないように言った錦野さんの申し出に、笠原は恐縮してふるふると首を振った。


「また貼らなあかんねやろ?」

「いや、お手を煩わせるほどのことでは」

「なに、お婆が上手にやったるやないか。ほれ、出しぃ」


困った。

笠原は槇に視線を送るも、ずっと見守っていた槇はにこにこしている。

テレパシーもしてこない。

大人しく錦野さんの好意を受け取りなさい、ということなのだろう。

笠原が遠慮がちに頷けば、錦野さんは備え付けのの引き出しから、何やらちりめんの巾着を取り出した。

紐を解いて開けると、中には化粧道具が入っていた。


「まさかこれが使えるとはなぇ……」


錦野さんの娘さんが置いていったのだそうだ。

笠原は予め切って持っていた人工皮膚のシートを錦野さんに渡す。


「じぃっとしといてや」


錦野さんは人工皮膚をシートから剥がして、鱗の部分にゆっくり貼り合わせた。

空気が入らないように注意深く指でなぞり、それからクリームタイプのコンシーラーを使って、境目を丁寧にぼかしてくれる。

その優しい手つきの心地良さに、笠原はそっと心を委ねた。


──笠原の頬が綺麗にヒトの肌に戻ると、笠原と槇は錦野さんに挨拶をして、病室を出た。

錦野さんは「もうアンタは孫やねん。またいつでもおいで」とまで言ってくれて、笠原はまた泣きそうになってしまった。


「笠原君、どんどん家族が増えてきたね」

「……どんどん?」

「僕にとってもウチの子だもの」


こんなに幸せなことがあっていいのだろうか。

医院を出る前に竹川へ挨拶をしに行くと、笠原の晴れた表情を見て分かったらしい。

満面の笑みを浮かべてくれた。


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