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3


「最初は流行りの刺青か、ボディーペイント言うやつか思っとったけどな。アンタは私が何も言わん内に出て行くもんやから……これは、どないしたんや?」

「……分かりません。生まれつきのものです」


そうけ。とだけ言って、錦野さんはそれ以上深くは聞いてこなかった。


「ヒトの身体に滅多にできるようなモンちゃうしなぁ……よっぽど苦労してやってきたんやろう」

「………」

「それにしても綺麗な、海の色やね。鱗みたいやけど、何だか宝石を見とるようや。……なぁ、笠原さん」


錦野さんは笠原に問い掛けた。


「これを見て、私と同じように綺麗言うた人は居るんか?」




笠原──




その言葉は、丸で魔法のようだった。




これ、綺麗やと思うで──




いつかの声が耳の奥で蘇って、笑った明崎の顔が浮かんだ。

出会ってからずっと、沢山のものを与えてくれて、殻に閉じこもっていた笠原を明るい外へ連れ出してくれた。

太陽みたいな、温かい人──


それから、波江高校に来て出会った友人たち。

須藤と霧ケ原は転校してきたばかりの時、必死で笠原の命を助けてくれた。

鐘代や鳥潟、柳田も……皆、心許せる人ばかりだ。


伊里塚や槇も、丸で家族のように気に掛けて、導いてくれる。

2人の温かい心遣いにも、幾度となく救われた。


身寄りのなかった、こんな自分を引き取ってずっと育ててくれたタエさんの姿も浮かんだ。


朧げに、両親の顔も浮かぶ。

2人も生前、大切に育ててくれていたと聞いた──




ぽつぽつと、仄かな光を纏って浮かんでくるそれらは、厚い霧に覆われた心を少しずつ、晴らしていった。




「……居ます」


笠原は、掠れた声で答える。

胸の奥から温かいものが込み上げて、唇にはそれが笑みとして灯った。

瞳からは、ぽろぽろと涙が零れ落ちて、錦野さんの手を濡らした。


「何人も、居ます」


そうだ。

もう、あの頃とは違う。

「綺麗だ」と心から言ってくれる人が、自分を人として接してくれる人が、こんなにも周りに居るのだ。

例えこれから先、世界中の人に「化け物だ」と糾弾され、嫌われたとしても。

きっと、大丈夫。

何度押し潰されても、自分は立ち上がれる。

生きていける。


その人たちの為に。

自分の為に。


気づけばそれは、限りなく幸せなことだった。


「……良かった」


錦野さんは微笑んでくれた。


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