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ジレンマ

それから4日、5日と経った。

頬の鱗が消える気配は全く見受けられなかった。

ただ幸い、鱗がそこから範囲を広げる様子も無い。

今の所は、現状を維持している感じだ。

明日からの土日を挟めば、次は期末テストが控えている。


「笠原君、大丈夫?」

「え……?」

「顔色凄く悪いから」

「いや、大丈夫だ。いつもと変わらない」

「そっか。なら、いいんだけど」


笠原は、酷く精神を消耗している様子だった。

それは身体にも出始めていて、彼を目下苦しめているのは恐らく不眠だろう。

今もクラスメイトから声を掛けられていたが、笠原の目元には濃い隈が目立っている。


「テスト前だからな。……少し夜更かしが過ぎたかもしれん」

「テスト前じゃあ、そうだよね」


顔色も良くないし、何処かやつれた雰囲気を隠せないでいる。

加えて、一昨日から終始怠そうな様子を見せていた。

きっと体力も落ちている。

どれぐらい寝ていないのか。

それを明崎が窺い知ることは出来ない。

これまで述べてきたことだって、明崎が遠巻きに眺めて得た視覚的情報に過ぎなかった。


──思った以上に、笠原は明崎をあからさまに避けるようになったのだ。


「明崎。……おい」

「………」

「見過ぎだって……」


須藤が困り果てた様子で、明崎に呼び掛ける。

笠原は他の人に対しては、普通に接するのだ。

須藤や、霧ケ原ともちゃんと喋る。

だが明崎だけは、徹底的に避けた。

あの翌日から、笠原は朝早く学校へ行くようになり、夜もバイト先でいつも以上に残って遅く戻ってくる。

食事も、いつも作り置きだけが冷蔵庫に残されている始末で、おかしなことだが一緒に住んでいるはずなのに学校に居る時より姿を見ないのだ。

体育や、選択授業のペアもそう。

とにかく明崎の傍に近づいて来ない。

離れられるのであれば、10m以上距離を取られる。


これには流石のクラスメイト達も気づいて「何かあった?」と聞いてくる奴も少なくなかった。

これだけあからさまでは、無理も無い。

しかし何を思ったのか最終的には「夫婦喧嘩か。そーかそーか」で落ち着いて、大体の人間は帰っていった。

……夫婦喧嘩って何や。


「……どうしたもんかな」

「………」


昨夜は笠原が帰って来るのを、リビングで待っていた。

いい加減、避けるのはやめろと言うつもりだった。

──しかし明崎は、その時既に失敗を冒していたのである。


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