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「……あの、団之介は?」


明崎の様子も気になった。

よくよく思い返せば……様子がおかしかったかもしれない。

聞くと、槇はちょっと困った表情になった。


「あの子……他人の能力をコピー出来ちゃうでしょ?」

「はい……あ」


そこで1つの答えが笠原の脳裏に浮かんだ。


「……槇さんの力を」


テレパシーや、心を読む力をコピーしていたのか。

槇が頷いたのを見た途端、笠原の心が何とも言えない恥ずかしさと戸惑いで揺れた。


「で、では……俺のこと、」

「あー、えっとね。大丈夫……って言っていいのかな。僕の場合はね、相手が僕のことを考えた時しか聞けないんだ。だから団之介も僕も四六時中君の心を覗けるとか、そういう訳じゃないんだよ」

「……今も」

「……ごめんね、聞こえちゃうんだ」


槇は慌てて補足を付け加えたが、それでも知らぬ間に本心を覗かれてしまっていた笠原にしてみれば動揺するのも致し方ないことである。

きっと失礼なことは考えていない。

けれど……


「……すみません」

「違う違う、笠原君が謝ることじゃない」


項垂れる笠原に対して、槇は手を振って言い消した。


「……団之介なんだけど、」


槇の視線がチラリと、キッチンから明崎の部屋に通じる扉を見遣った。

笠原も槇の視線を追って見た。


「笠原君、さっき凄く悲しくて辛い気持ちだったでしょ」

「はい……」


嫌な予感が笠原の胸で騒めく。


「団之介のことだから、そのまま君の心を覗いてしまったと思うんだ。……君の気持ちを知って、かなりショックを受けてる」


笠原は思わず息を詰めてしまった。


「大丈夫。君が気に病むことじゃないから」

「でも……」

「あの子はこれまで、余り悲しい目や苦しい目には遭ってこなかった。確かに他人を笑顔にさせるのは上手だよ。でも君に比べたら遥かに苦労知らずなんだ。……団之介の将来の夢って、聞いたことある?」

「……槇さんと同じ保護観察員になりたいと、聞いています」

「そういえば伊里塚君の子供の頃の話も、聞いてたんだよね。……あの子がこれから向かい合っていかなきゃいけないのは、君と同じように辛くて苦しい思いをしている子たちだ。それ以上に可哀想な目に遭っている子だっている。そんな子たちに歩み寄ろうと思うなら、自分もそれだけの悲しみを苦しみを知っておかなくちゃならない。……君の気持ちも勿論、すぐに受け止めるだけの器が無いと務まらないよ」


槇の口から連ねられる、いつにない手厳しい言葉。

自分にも聞かせながら、これは明崎にも聞かせているものだと笠原は途中から気づいた。


”君にはちょっと申し訳ないけど……良い経験だよ”


最後にテレパシーでそう締めくくった槇は、にこりと笑った。


「一回顔洗っておいで。あったかいお茶も飲んだら少し落ち着くよ」


笠原を立たせて洗面所に送り出すと、槇は電気ケトルにスイッチを入れて、今度は明崎の部屋へ行った。

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