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冷やし善哉の傍ら

翌日の昼になって、槇達は家に戻ってきた。

特に伊里塚が酷くくたびれた様子で、明崎達との会話もそこそこに槇の部屋に敷いてあった布団へ入ってしまった。

布団は事前に槇から指示があったので、明崎が先に敷いておいた。


「……伊里塚君、どうしたん?」

「充電中。疲れてるから、そっとしてあげて」


そう言われてしまうと、昨日何をしていたのかを聞くのは憚られる。

恐らく仕事だったのだろう、と思うことで済ませた。


「行ってきます」

「えっ、今度君出掛けるん!?」


一方の笠原は、いつの間にか竹川医院へ行く支度をしていて、しかも明崎が気づいた時には玄関でスニーカーを履いていた。


「気をつけて〜」

「夕方には戻りますので」


3・4日に一回の医院通い。

槇などは聞かずとも分かっているので、当たり前のように送り出している。

笠原は2人に微笑むと、ドアを開けて出て行った。


「笠原君、生き生きしてるね」

「うん」


槇の言葉に明崎も頷いて、2人で今に戻った。

笠原が毎日楽しそうにしてくれるのは、確かに嬉しい。

勿論それ以外に他意なんか無いつもりだが……

こちらにばかり"意識"を向けられると、どうも落ち着かなくなってしまうから。

ほんの少しホッとしている自分が、何処かに居た。



──────



竹川医院最寄りのバス停に着こうという頃。

財布から小銭を出して、ふと窓に視線を投げた笠原は、バス停付近に意外な人物を見つけた。

今日も来るとは聞いていなかったが……

笠原が小走りでバスから降り立つと、丁度その出口前の位置に立った人物──浅井はニコリと人好きのする笑みを浮かべた。


「やぁ」

「こんにちは。……あの、もしかしてバス、」

「いやいや。笠原君を待ってたに決まってるじゃん」


笠原の問いかけに、首を振ってカラカラ笑った浅井。

それから、いきなりこんなことを告げられた。


「あのね。俺、帰ることになっちゃったんだ」

「えっ……」


笠原はびっくりして、目を見開く。


「ホントならもう少し滞在するつもりだったんだけど、新しく仕事入っちゃってさ。残念だけど、多分笠原君とは今日でお別れかな」

「そう……ですか」

「んにゃ悲しそうな顔しなくっても〜。嬉しいけど」


浅井のあっけらかんとした性格と軽快な話口調に、笠原はとても好感を覚えていた。

それが急に会えなくなると言われて、心に隙間が出来てしまったような寂しさを感じてしまう。


「そうそう。笠原君、お昼食べた?」

「お昼は、食べてきました」

「そっか。うーん、そうだなぁ……とりあえず、どっか涼しいトコ行こうか。笠原君は、洋菓子と和菓子だったらどっちが好き?」

「えっ」

「今までのお礼」

「そんな、いいです!元々、俺が勝手にやったことで……」

「大人はねー、そういう訳にいかないんですよー。1番は俺が気になっちゃうからさ。ここは1つ。ね?」


で、どっちがいい?と改めて聞かれ、笠原は「わ……和菓子」と答えるのであった。


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