真夏の夜空
明崎が目を覚ましたのは、それから2時間後のことであった。
起き上がると、何だか身体のあちこちが凝ったみたいに痛い。
前方のテーブルで宿題をしていた笠原が音に気づいて、こちらを振り返った。
「……身体痛い」
「そんな固いところで寝るからだ」
明崎の第一声に、そら見ろと言わんばかりの呆れた表情を笠原は浮かべる。
確かに、床で寝るのは良くなかった。
宙はまだ傍らで眠っている。
ちゃんと柔らかいトコで寝させやんな……
「……あれ、槇さんは?」
「伊里塚先生と出掛けられたぞ」
「出掛けた?」
明崎は思わず聞き返していた。
うそ、聞いてへんそれ。
「いつ?」
「14時半頃」
「え〜……」
今朝からずっと一緒に居たのに、全然何も言ってくれなかった。
何や、言うてくれてもええやん。
不平の声を上げる明崎だが、例え槇が言ってくれたとしても「あ、そうなん?行ってらっしゃ〜い」を言うか言わないかの違いである。
ちなみに今何時。と明崎が時計を見上げると、すでに時刻は16時半を過ぎていた。
「3時間も寝とったんや」
「宙も同じ位寝ているだろう?身体のリズムが崩れる、そろそろ起こしてやれ」
その後、笠原が宿題をキリ良く終わらせてから夕食の準備が始まった。
といっても、槇が作り置きした物を冷蔵庫から取り出して、温めるだけである。
「ところで、槇さんらってどこ行ったん?」
「仕事らしいが、俺も行き先は聞いていない。今日中に帰って来られないかもしれないと言っていた」
それはまた珍しい。
宙も居るので、普段槇が家を空けることは余り無いのだ。
明崎と笠原が居るからこそ、というのもあるかも知れない。
冷蔵庫から笠原は鍋を取り出した。
蓋には付箋が貼られている。
笠原がゆっくり読み上げた。
「”生姜たっぷり 鶏ガラ野菜スープ”……」
「"あっためて食べてね"……めっちゃ美味そう」
エアコンで冷やした身体を労るために作ったのだろう。
……笠原が小さく、クスリと笑った。
「え?」
「いや……」
そっと首を横に振った笠原。
やがて、
「美味しそうだな」
と言って、電子レンジに掛けるためにおたまで中身を掬い、器へ注いだ。




