表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/234

3

「それ言うたら、アンタかて魔法使いみたいなモンやないか」


そこへ錦野さんから、笑みの含んだ声が掛かる。


「え〜?いやぁ、俺はほら。あれしか出来ることないから」

「この子はな、アンタぐらいの歳に絵画の全国コンクール出とったんや」

「えっ……そうなんですか!」

「いやいや、綾さん。そこは是非とも日展の話を……」

「ニッテンって、何ですか?」

「おや、アンタ知らんのか?日本で一番大きな美術展覧会やで」


浅井の作品はそこで何度も入選を果たし、更に賞も貰ったらしい。

錦野さん曰く、とても凄いことなのだという。

それを聞いた笠原が素直に感銘して浅井を見上げると、彼は「ホントそれ以外何も出来ないからね」と困ったように笑った。


「料理とか片付けとか全然ダメ。人間として根本的なものが出来上がってないからさ」

「でも、それだけ凄い才能をお持ちなら」

「それがね。光には『おいコラ』って、やっぱり怒られるんだ。その内死ぬぞ、って。マジシャンやってるのに一通り家事もこなすんだよ、偉いよね。ついでに俺のことも見てくれて。まぁ、それに甘えて未だにのんびんだらりとやっていられるんだけどね〜ハハハ」


それでも、凄いものは凄いと思う。

それに笠原は、浅井を羨ましく感じる所があった。

浅井は自身の人生について、余り難しく考えている様子は無かった。

何も考えていないとか、そういうことではない。

自分のやりたいように、気楽に。

少なくとも笠原のように、何か負い目を感じながら生きてはいないだろう。

……そんな風に、生きてみたい。


「で、そうそう!その話より粘土!綾さん、色どうしよう?もうここで作っちゃいましょうか?」

「ここでって、病院やで?やめぇや」

「そっか、流石に絵の具はアウトだ……。うーん、じゃあ何色系統がいいですか?淡いとか、濃いとか」

「……ほんじゃあ水色を作ってくれるか?濃い淡いは、アンタに任せる」

「オッケー。光に似合いそうな色作ってみます。ちなみに何作るの?」

「手品しとるから、花を考えとったんやけどな」

「なるほど。じゃあ茎とか葉っぱも作るよね。緑色も作っときます」

「せやな。……ああ、それと」

「はい?」

「紫も作ってくれるか?」

「あ、もう一個作る?了解です」


結局、今日は錦野さんと話をするだけで終わり、粘土を渡すのはまた次回となった。

でも錦野さんは何だか嬉しそうで、笠原は内心ホッと胸を撫で下ろしていた。

自分ではこれぐらいしか出来ることがないから。

余計なお世話にならなくて、良かった。

もちろん浅井の協力あっての賜物である。


──関西にやって来て、まさかこういうことになるとは思わなかったけれど。

笠原の心は不思議と温かかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ