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「アンタら、こないに仰山……」
錦野さんは案の定、とても驚いた様子で目の前に広げられた粘土セット一式を眺めた。
絵の具・樹脂粘土・下敷き・めん棒・パレットなどなど……
絵の具と樹脂粘土以外は全部浅井の持ち物である。
「綾さん、前に約束してたじゃないですか」
「約束?」
「光にあげるって言ってたやつ」
「ずぅっと前の話やないか。よう覚えとったな」
錦野さんは浅井の言葉に目を眇めて、口を窄ませた。
この2人の間で時々上がる、”光”という人物の話題。
どうやらその人が、錦野さんのお孫さんらしい。
今はアメリカに行っていて、浅井とも仲は良いようだが……
笠原はずっと気になっていたことを、2人に聞く。
「……そういえば、お孫さんってお仕事何されてる方なんですか?」
「あれ?綾さん話してなかったんだ」
「ああ……せやったか?」
はて、と首を傾げる錦野さんに代わって、浅井が答えてくれた。
「マジシャン」
「マジシャン!」
意外な名前に驚いた笠原は、思わず言葉を繰り返してしまった。
「うん!すっごいんだ〜。トランプ持たせたらね……うーん、何て言ったらいいのかなぁ、カードで”あやとり”しちゃうような人」
「あやとりっ……!?」
全くもって想像がつかない。
「で、出掛け先でも『練習』とか言って、何も無い掌からいきなり缶コーヒー捻り出したりするんだ」
「何も無い掌から……」
笠原は思わず自分の両掌を見下ろす。
何も持ってない状態で。
……どうやって?
早速頭上にハテナマークを飛び交わせる笠原を見て、浅井が笑った。
「そうそう、俺も毎回それやっちゃう。高校からの付き合いで、ずっと隣で見てたけど、もう全然トリックが分からないんだよね。魔法を見せられてるみたい」
「それは……凄いですね」
是非、見てみたい。
思えば間近にマジックを見る機会は、今まで無かった。




