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『ご縁ってやつなのかもねぇ』
「ご縁、ですか」
『思い掛け無い所に転がってるものさ。……それにしても、アンタから何かしようとするなんて、珍しいね』
「うーん、まぁ……そうですね」
『人様のお役に立てるなら良いさ。くれぐれも、ありがた迷惑にならないようにするんだよ』
タエさんは何処か面白がっているようで、少し笑っている気配が電話口から感じられた。
そこへ「錦野さん喜びそうな話題が何なのか浮かばない」と笠原が話せば、今度は大いに笑われてしまった。
『そりゃあアンタ!その人もう70越えてんだろう?幾つ歳が離れてると思ってんだい。合う話が無いなんて可笑しいことを言うね~全く』
「う……」
ごもっともだ。
これだけ歳が離れて、そりゃあ共通の話題が見つかる訳ないのだ。
しかし、
『その人、お孫さんは居るのかい?』
「お孫さんは……居るみたいです」
『もう働いてるのかい?』
「はい。今はアメリカに行ってると」
『ならアンタの話をしておやり』
「えっ……!?」
思い掛けない言葉に笠原は大きく目を見開いた。
「俺の話って……」
『無理に背伸びをする必要はないさ。向こうだって分かっちゃいるよ、相手は子供だ。だから、アンタは普段のことを話してやったらいい。……最近得意だろう?』
タエさんにいつも手紙で書く、普段の日常話のことを言われているのだ。
でも、あれは身内だからこそ通じる話であって……他人様に話すようなことでは。
『いいんだよ。お婆っていうのはね……それで孫がどんな風に過ごしてるものなのか、想像するもんなんだよ』
「………」
『聞いた所じゃ、ロクにお孫さんの顔も見てないようじゃないか。実の孫みたいに話しておやりなさい。きっと喜ぶはずだよ』
「……分かりました」
何だか、目から鱗だ。
それからタエさんには、関西での出来事をかい摘んで話して、『ゆっくり、楽しんでおいで』という言葉を最後に電話を終えた。
「俺の話、か」
柵に腕と頭を乗せ、それについて考える。
本当にそんなことで良いんだろうか。
「紫己ー」
ガラガラと後ろで窓が開いて、明崎が隣にやって来た。
「電話終わったん?」
「ああ。……なぁ、団之介」
「ん?」
「俺の話は、聞いてて楽しいか?」
「あー、うん。茶化したりいじったりしたら、より楽しめるかな。──イッタ!」
ふざけた返事しか返ってこなかったので、笠原はベシッと明崎の肩をはたいた。
……そういう風に気を遣われた返答なのが、ちょっと悔しかった。




