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「せやけど、アンタも気ぃ遣って来やんでええねんで。遠いやろ?」
「いつでも来れる距離なので、大丈夫です」
「旅行で来てる言うてたやないか。あちこち行ける所に行かんな、時間が勿体無いわ」
「……あの、」
躊躇いがちに声を出した笠原は、小さい声ながらも言葉を継ぐ。
「来ては……駄目ですか?」
何処か傷ついたようにすら聞こえる声音が、表情が。
……どうしてだか明崎の胸に刺さった。
「ちゃうやないか。アンタは自分の時間を大切にしぃ言うてんねや」
「俺は、自分の時間を大切にしているつもりです。今日は……錦野さんに花を届けに来ました。錦野さんにお会いしたかったので」
「………」
「錦野さんとお話するのは……俺、楽しいです」
笠原がこうして、明崎以外の誰かに言い返すのは初めて見る。
その訴えには微かに切実な響きがあった。
お婆さんにとっても思わぬ言葉だったのだろう。
部屋の中で言葉が途切れた。
見つめ合っていた2人だったが、やがて笠原が立ち上がった。
「また来ます」
それだけ告げて、笠原はベッドから離れた。
こちらにやって来る。
まずい、と慌ててドアから離れた明崎たちに出来ることは、それとない位置に立って明後日の方向を見遣ることだけだった。
もちろん何も知らずにドアを開けた笠原は、出てきて早々目に入った明崎達にびっくりしてその場で凍り付いてしまった。
「……何、なさってるのですか?」
「と、通りすがったんやぁ?」
笠原の問いに竹川が苦しい回答をする。
ひとまずドアを閉めた笠原は、次いで明崎を見た。
「いつから?」
「え〜っと……5分前ぐらい?」
「………」
「……ごめん、覗いてました」
「……そうだな」
紫己の声のトーンが、若干下がった。
うわぁぁ……ちょっと怒らせた、ごめんなさい!




