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「感染症とか、花粉アレルギーがね。NGらしいですよ」
「そう、だったんですね……知らなかった」
「代わりにプリザーブドフラワーなんてどうです?」
「プリザー……何ですか?」
プリザーブドフラワー。
日本人には言いにくい呼称だ。
見せる方が早いだろうと、沢崎は棚からミニバスケットを取り出す。
「これです。普通の花に見えるでしょう?」
中には青や紫を主体とした花々が盛られている。
色も鮮やかで、見た目の質感も生きた花と全く変わらない。
けれど。
「でもこれ、特殊な加工で花の水分抜いてるんですよ」
教えると、美人な男子は案の定目を丸くして籠の中の花をしげしげと眺めた。
「感染症の心配も無いんで、これなら持ってけると思います。水遣りもいらないし、生花よりずっと長いこと楽しめるし」
「そうですね……これなら」
「普通のお花よりお値段高くなりますけど、いいですか?」
「お願いします」
「それじゃあ、お色どないしましょうね」
同い年の方ですか?どんなお花好きそうですか?
そんな質問を重ねていく内に、意外な贈り相手がヴィジョンとして出てきた。
「一昨日が初対面……ですか」
「はい……」
贈り相手は何と、お婆さんらしい。
しかも見ず知らずにも等しい、一昨日出会っただけの人なのだそうだ。
「……勇気ありますね〜」
思わずそんな言葉が言葉が零れてしまった。
美人な男子は質問に答える辺りから自信なさげだったが、益々萎縮していく。
「……俺もどうしてこんなに気になるのか。分からないぐらいで」
「恋してるんちゃいますの?」
「いや、そういうことでは……!」
彼はバッと顔を赤くして首を横に振った。
ああ、いかんいかん。
つい同年代ぐらいやからって、茶化してしもうた。
「ただ……」
美人な男子はぽつりと言う。
「寂しそうだったというか」
「寂しそう……」
「ウチの家にもちょうど同じぐらいの歳の家族が居るので、それで気になったのかもしれないです」
「なるほど〜……」
自分ちのお婆ちゃん思い出しちゃった訳やな。
あれかな、今にも孤独死しちゃいそうとかそういうことかな。
「ほんじゃあ元気出る色も入れてみたらええかもですね」
なんか何処かのドラマみたいだ。
お客さんの身の上話みたいなのを聞いて、それに因んだ花束を作っていく感じ。
でもそういうの聞いてしまうと、やっぱり情が入るというか、力が入るというか……
とにかく沢崎は真剣になって、ミニバスケットの中に例のプリザーブドフラワーを並べ、盛っていった。
お婆ちゃんだから紫とかつい入れてしまうけれど、そこにオレンジやピンクを添えても良いと思う。
オレンジやピンクは、元気の出る色だ。
お婆ちゃん、喜んでくれますようにー!
「こんな感じで、どうでしょう?」
我ながら良い出来栄えやと思う。
完成した花籠を見せると、彼はここに来て二回目の微笑みを見せてくれた。
「そのお婆ちゃん喜んだらええですね。僕も応援してます」
「……ありがとうございます」
その微笑みが心做しか、嬉しそうに見えた。
……うん。
僕はきっと、良い仕事をしたんやと思う。
花籠を入れた紙バックを提げ、沢崎に会釈しながら店を出て行く美人な男子。
沢崎はその姿が見えなくなるまで見送った。
また来てくれへんかなぁ……
気づくと、そんなことを思っていた。




