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竹川は、話し好きな人らしい。

槇は元々仕事の相談をするつもりでここに来たようだが、話が済むと今度は、大阪の何処そこのお好み焼きが美味いやら、いつぞや医院に誰々が来たやら、雑談が始まった。

もちろん槇や明崎には通じるようで、所々笑いを挟みながら応じている。

笠原には、竹川や槇が代わる代わる簡単に説明を入れてくれた。

話に参加出来るように、という気遣いからだろう。

竹川達の話を聞くのは、とても楽しかった。

……けれど途中で、笠原はお手洗いへ行くのに部屋から席を外した。

明崎にそっと聞いたら、2階にあると言っていたので、階段を上がる。

2階は入院棟に当たるらしい。

病室が廊下に沿って幾つか並んでいた。

白いリノリウムの廊下を通って、トイレに入った。


──本当は1階にもあったらしいが、もしこの時笠原が2階に来なければ、”あんなこと”は起こらなかっただろう。


お手洗いを出て、1階に戻ろうとした笠原の耳に、カラカラカラ……という音が聞こえた。

振り向くと、キャスター付きのポールを握ったお婆ちゃんが、よろよろと歩く後ろ姿が見えた。

ポールには点滴のパックが下がっている。

何処かへ行くらしい。

何と無くその様子を眺めていた笠原だったが、そのお婆ちゃんはどうも扉の閉まった病室に向かっているらしい。

最近の大きい病院では自動ドアになってきているそうだが、ここの医院はそうではない。

いくら開けやすいように軽量化されてるとはいえ、両手でキャスターのポールを掴むお婆ちゃんには開けにくいはずだ。

笠原は思わずそのお婆ちゃんの元に駆け寄った。


「開けます」

「は……?」


小さく聞き返す声を聞いたが、その時には持ち手を掴んでドアを開けていた。


「あ、ああ……ありがとう」


それで笠原がドアをわざわざ開けに来たのだと分かったお婆ちゃんは礼を言った。

呟くように。

そのまま歩いてドアを通過するのを見届けると、笠原は扉を閉めてお婆ちゃんの後ろをついていく。


「手を、貸しましょうか?」


この様子では、ベッドに上がるのも一苦労しそうに見える。

しかしお婆ちゃんは、カラカラとポールを支えに歩いて、ベッドに腰を掛けた。

よくよく見れば、ベッドは余り高さがない。

……ついて行かなくても、良かったか。

お婆ちゃんも反応しなかったので、些かの気まずさを覚えながら笠原は病室を後にしようとした。



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