表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/234

竹川医院にて

竹川医院は、昨日バスで走った国道を逆戻りして、途中の道を曲がったその先にある。

敷地自体は一軒屋が2件分程だが3階建てである。

個人の診療所としては、大きい所だ。

車を降りて、明崎たちは槇の後についていく。

今日は午前の診察だけで、時間が空いていると言われたそうだ。

中に入ると、待合室には誰も居なかった。

受付のカウンターには事務員さんらしき女性が2、3人で何やら書物をしてる。


「こんにちは」


槇が声を掛けると、顔を上げた1人の女性が見知った様子でにこやかに挨拶を返した。

「奥へどうぞ」と言われると、槇たちは勝手知ったる様子で、診察室があるらしい奥の通路へ進んでいく。

一番最後に笠原がついていくと、槇が既に診察室の扉をノックしていた。


「先生、こんにちわ」


引き戸を開けて、槇が挨拶しながら入っていく。

其処に居たのは、半袖の衣服を着た大柄なお爺さんだった。


「おう、来たんか」


どっしりした身体で椅子から立ち上がるお爺さんこそが、恐らく竹川先生なのだろう。

頭は禿げ上がり、薄く白髪を纏っている。


「先生久し振り!」

「おー、介坊!また大きなったか!」

「先生よりまだ小さいで」


明崎が前に出て来ると、竹川先生らしきその人は明崎の頭をわしゃっと撫でた。

明崎は嬉しそうに笑った。

そこへ「せんせー!」と宙も飛び込んでいったものだから、お爺さんは小学生と高校生に挟み込まれる形になる。


「宙坊も元気にしとったんけ?」

「うん!」

「そらぁ何よりや」


ガハハハッと笑った先生は、今度は槇を見て──その後ろの笠原に目を留めた。


「お前、まだ子供隠しとったんか」

「あー、実は次男が居まして」

「お前にそんなデカい子供居って堪るか!」

「ははは」

「ほんで名前は?」


最後の部分は、笠原に向かって問われたものだった。


「笠原 紫己です。初めまして」

「……聞いた覚えがあるな」

「ああ、ほら。前にお話したじゃないですか」

「そうけ?」


槇ともそんな遣り取りをした後、お爺さんはやはり竹川と名乗った。


「……あー、思い出した!前言っとったなぁ。水の子か」


笠原が思わず槇を仰げば、「ずっと前だけどね」と槇は答えてくれた。


「先生には君の能力のこと、ちらっと話してたんだ」

「能力……」


一瞬不安を覚えたのが顔に出てしまったらしく、槇は慌てたように「うん、ホントにちらっとだよ?」と言う。

笠原もハッとして、「いえ!」と首を振った。

……よくない癖を持ってしまった、と思う。

ここに来てから気が緩んでいるのか、明崎や槇に気を遣われてしまっている。

何だか、心まで読まれているみたいだ。


槇と笠原の遣り取りを眺める竹川は、特に口は挟もうとしない。

隣で一緒に見ていた明崎は、ちらっと竹川を見て、また前に視線を戻した。

きっと竹川は観察しているのだろう。


「よし」


槇と笠原の会話が途切れたところで、竹川が声を出した。


「向こう行くで」


向こう、とは応接室のことである。

竹川が診察室を出ると、その後をぞろぞろと皆でついて行く。

槇は竹川の隣に移動して、何か話し始めた。


「竹川先生、全然硬くなる必要とか無いからさ」


後ろで明崎は笠原にそっと耳打ちする。


「大丈夫やで」

「……大丈夫」


笠原はコクリと頷いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ