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槇の家は3DKで、基本的にどの部屋も共有して使っているらしい。

どこまでも出入りが自由だ。

玄関から廊下を隔てた先の2つの部屋に至っては、元々その間にあった引き戸を槇自ら取っ払ってしまったので、全くもってオープンな状態である。

槇と宙は、大体この二部屋で生活をしているそうで、仕事をするにしても寝るにしても一緒に使っているそうだ。

こう言ってしまえば、何だか境界線という概念が全く無いようにも聞こえてしまうが、家具や物はきちんと整理されている。

こまめに掃除もしているようで、そういう辺りから槇の性格が何処となく窺えた。


そして明崎と笠原が今回泊まる部屋も、ダイニングキッチンと廊下に面して出入り口がある。

ただこちらは、ドアで仕切られているので唯一個室と呼べる場所であった。

幾らオープンな環境であったとしても、年頃の男子には何かと配慮したらしい。

そこは元々明崎が使っていた部屋なのだそうだ──



──────



「団之介と笠原君って、明日空いてるかな?」


風呂から上がって、服も新しいものに取り替えて。

少し遅い昼食を明崎と笠原が摂っている時だった。

テーブルには、ごまドレッシングを絡めた夏野菜サラダに、生姜の効いたつゆと冷やし素麺が並んでいる。

槇に聞かれた2人はお互いに顔を見合わせた。


”……何も無かった、はずだな”


「何も無いで」


明崎が答えると、「お昼から竹川先生の所に行こうと思ってて」と槇から返ってきた。

その馴染み深い名前に、明崎はパッと顔を輝かせる。


「えっ!竹川さんトコ!?」

「一緒に来る?」

「行く行く!行きたい!」


明崎は槇の誘いに何度も大きく頷いた。

この竹川先生というのも、明崎が尊敬し慕う大人の1人だ。


「宙も行くよね?」

「行くー!」

「竹川さんとか会うのメッチャ久し振りやん。元気してはんの?」

「相変わらずだよ。この前も島根へ講演に行ったみたいで」

「全然心配いらんな。もう六十ならはったんちゃうの?」

「ぴったり還暦」

「元気やな〜」


槇宅で囲む食卓は、いつもこんな感じである。

槇相手にはやはり気心が知れているので、余り遠慮もしなくていい。

気楽だ。


「………」


隣の笠原は、明崎と槇を交互に見て会話の内容を把握しようとしているらしい。


”タケカワ先生。学校の先生だろうか?それとも……”


……笠原の心の声が、思い切り聞こえてくる。


”団之介とはどんな関係なのだろう……”


そしてこのノリで笠原から、ちょいちょい感じるのである。

純粋に真っ直ぐな、好意を。


あー!

あー、あー、あー!


さっきも感じてしまったそれを思い出した明崎は、思わず声を上げて激しく被りを振りそうになった。

正直、かなり動揺している。

まさかそんなに自分のことを好きだと、思っていたなんて。


や、やっぱり良くない。

勝手に人の心聞けてまうの良くない!


しかもそれが、本人は自覚も無い状態で思ってるようだから尚悪かった。



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