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笠原もここで初めて口を開いた。
「……テスト勉強、しないのか?」
「そんなん。する訳がな〜い」
「とか言って一夜漬けでもすんだろ」
「ぎっくぅ」
「倒れても知らぬぞ」
「うわー、一般ピーポーの努力を踏みにじる行為だね」
「サイテーだな。クズの鏡だな」
「漂うダメ人間臭」
「ちょっ、ちょっちょっちょっ!何でそこまで言われやなあかんの!?」
笠原の「倒れても知らぬぞ」は分かるが、その他は言われる覚えが無い。
何やねんクズの鏡とかダメ人間臭とか!
「とにかく俺らは勉強するつもりだし行かねーよ。行くなら1人で行け」
「(´・ω・`)」
「ちょっとイラつくなぁその顔。殴っていい?」
「あ゛ーやめてやめて!勉強します!真面目にしますからぁ!」
持ち上げられた霧ケ原の拳を目にして、明崎はわたわたと後ずさった。
……って!
「何で俺ばっかこーやねん!」
「愚問だな。明崎の癖に調子こいてるからだろ?」
「明崎の分際で生意気じゃない?」
「意味わからーん!!」
ホンマ何やコイツらぁ!
「もーいらん!君らホンマにいらんわ!」
言いながら明崎は、少しぼぅっとしていた様子の笠原に近寄り、腕を取った。
「紫己ー、駅前の涼しいトコで勉強しよう?この人ら放っといて行こー?」
「え……」
「あーあ。お前笠原の順位まで落としたら承知しねぇからな」
「言われなくともですぅー。もう君らなんかな、”ぷーん”したんねん」
「3才児」
「何とでも〜!」
行こ行こ、と笠原の手を引っ張って、明崎は先に行ってしまった。
笠原は戸惑いながらも、明崎について行く。
……よく見掛ける図を見送った須藤と霧ケ原は、お互いに顔を見合わせた。
「……あれって気ィ遣ってるの?」
「だろうな」
「だよね」
多分、笠原のことを誰よりも心配しているのは明崎であることは、2人共分かっている。
このところの彼の憂鬱を取っ払ってやりたいと思って、気を回しているのだろう。
些かその強引さが気になるが……
「何か心配だなぁ」
「他人の心配もいいが、俺たちの将来も心配すべきだぞ」
「あー。テストめんどくさーい。須藤も僕んトコ来る?アイスあるよ」
「悪りぃ。俺柳田にライティングと現国教える約束してるから」
「……チッ。この似非リア充」
そして2人も寮棟へ向かったのである。




