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「鐘代に?」
「ほら、映画に出てくる特殊メイク用の人工皮膚ってあるやん。そういうの手に入れられるか、聞けへんもんかってな?」
「人工皮膚……」
「そう。ペタッと貼れそうなやつ。……それか、何やっけ。化粧品……せやコンシーラー!ファンデーションみたいなやつ。あーゆーのとかで、その、工夫して誤魔化せへんかなっても考えててんな」
ああ……なるほど、そういう手も有るかしれない、と。
笠原が僅かに希望の光を見出した瞬間であった。
しかし一方で明崎は、言いながら何故か自信が揺らいだ様子で、段々と声が小さくしていく。
「実際化粧したこと無いし、まぁ……その辺りはやってみやな分からへんってか……ごめん、そこまで期待出来るモンちゃうかもしれん」
そこまで言って、明崎は一旦言葉を切った。
それから笠原を窺うように見て「どうやろ……?」と聞いてきた。
「無理にとは絶対に言わんで。多分奏女王もコレのこと知らんと思うし、知ってる人間を最小限にしたいっていうなら、そんでもええし。……君に任せるわな」
「……すぐには答えを出せないが」
「すぐとは言わへんよ。ちゃんと紫己にとってええ風に判断して貰ったら、それで」
「そう、か……」
笠原は「分かった」と、頷いた。
……それにしても。
「アンタ、化粧品とか……調べてくれてたのか」
普通、男であれば化粧品のことなど余り分からないものだ。
「……まぁ」
言葉少なに認める明崎。
笠原が避けている間でさえ心配して、明崎はこんなにも色々と考えてくれている。
改めて、申し訳ないと思う。
けれども、それと同時に嬉しかった。
笠原の中にゆっくりと温かいものが満ちていく。
笠原はそろそろと腕を伸ばし、自分から明崎の首に腕を回して抱きついた。
「……ありがとう」
「………」
「心配、掛けてしまったな」
答えの代わりに、笠原を抱き締める腕に力が籠る。
「……めっちゃ心配した」
「すまない」
「……ううん」
笠原は、明崎の肩にそっと顔を埋めた。
……再び沈黙が降りた。
もう重苦しいものではない。
笠原はその姿勢のまま動かなかったし、明崎も笠原の気が済むまではこうしているつもりである。
……良かった。
明崎はぽつりと思った。
多分、上手くいったんやな。
とにかく喋ったし、物凄く頭を使った。
……疲れた。
多分今日は、このまま寝れる。
これから先、どうしていくかはまた明日考えよう。




