5
瞼が燃えるように熱くなる。
鼻の奥がツンとして、ぎゅうっと目を瞑れば涙が、今度は堰を切ったように溢れ出した。
頬を幾筋も伝っていく雫の感触に心が刺されて、身体中が悲しみに侵されてしまったように打ち震える。
今度こそ何と言っていいか分からなくなってしまった。
泣くことに、こんなにも力が要ただろうか。
さっきだってこんな風にはならなかったのに。
分からない。
でもとにかく辛いし、苦しい。
全部、全部何もかも吐き出したくて堪らなくなった。
小さく縮こまった身体から、食い縛った歯の間から、堪えきれなかった嗚咽が漏れた。
そして──
「……助けて…」
絞り出すように出てきた言葉は、今にも空気に呑まれてか細く消えてしまいそうだった。
「もう……嫌だ……」
1人は嫌だ。
これ以上、もう何も失いたくない。
「一緒に居った方が、楽？」
明崎の柔らかい声が、笠原の耳をそっと打つ。
笠原は小さく、コクコクと頷いた。
丸で、聞き分けの無い幼子の様だと思った。
でもこんなにも拙いのは、……きっと笠原が初めて言った我儘であったから。
それが紛れもなく、本当の気持ちだったから。
「うん。……分かった」
すると、肩から明崎の手が外れて離れていく。
1人にされてしまう、という恐怖を覚えて、笠原は弾かれたように顔を上げた。
明崎はこの場を立ち去るつもりなど微塵も無かったが、強い不安を露わにした笠原を見て、思わず戻し掛けていた手を止めた。
「何でよ。ちゃんと居てるって」
苦笑して宥めようとした明崎は、ふと思い直して今度は両腕を広げて見せた。
「ヘイ」
「………？」
笠原はよく分かっていない様子で明崎と腕とを交互に見遣る。
「カモン、紫己」
明崎はもう一度呼び掛けて、笠原をこちらに来るよう促す。
つまりは、ハグをしようという訳だが。
漸くそれに気づいた笠原は、涙で濡れたままの顔に戸惑いの表情を浮かべた。
「……え、今更"意味分からへん"って反応しやんといてな？」
「いや……」
「ほんじゃあ何よ」
「そうじゃなくて……別に、弱い者扱いされたかった訳では、」
「逆やって」
言ってる間にも明崎は彼を引き寄せるようにして、ぎゅうっと抱き締めた。
少し熱い体温に包み込まれた笠原は、大きく目を見開いて、束の間言葉を失ってしまった。
「君強いねんで？そらぁ、他人の何倍も頑張ってきたんやからさ。そうに決まってるし」
「………」
「この歳でいろんなこと覚悟してて、ホンマ凄いと思う。けど、その辺どうこう言う前に、君まだ高校生やからね。……しんどかったやろ？」
「……っ…」
「無理して1人にならんで、ええねんで」
また笠原の瞼を、熱の波が襲った。
泣き止んだ訳でもないのに、新しい涙が込み上げてきて、喉が再び塞がる。
笠原は明崎に縋るようにして、ジャージの胸部分を力の入らない手で弱く握った。
