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その後、シイナとの面会を終えて部屋を出た益田は、明崎を一旦待たせて隣接する研究室へ顔を出した。
「遠藤さん」
呼ぶと、髪型をシニヨンにまとめてデスクに向かっていた女性職員が1人、顔を上げた。
「──あら、益田君。もういいの?」
「はい、今日はこれで。明崎も来たので喜んでくれてました」
にこやかに声を掛けた益田は、挨拶ついでにシイナの様子も簡単に報告する。
シイナを担当しているその人は遠藤といって、時たま伊里塚とも一緒に居る所を見かける。
顔立ちが美人だ。
「益田君が毎日来てくれるお陰で助かってるわ。シイナ君、やっぱりあなたがいないと不安がるから。──須藤君と帰るの?」
「いえ。今日は用事あるって言ってたんで、タクシー呼んで帰ります」
「そう。2人共気をつけて帰ってね」
研究室を後にすると、待たせていた明崎に「お待たせ」と言って一緒に玄関ホールまで向かった。
その間に廊下を歩き、3階の階段から1階に降りていく訳だが……
「シイナって」
「うん」
「最近は未来視たりするん?」
「時々かな。霧ケ原みたく協力してもらってる訳じゃないから、大体俺らの何でもないようなことばかり」
「そうなんや。……組織の奴らとか、少しも視たりしぃひんの?」
「んー、多分ね。俺らに関係することだったら、絶対言うと思うし」
「ふぅん……」
「で」
内容そのものに問題は無い。
けれど明崎がやっぱり不自然なので、益田は一思いに核心をぶった斬る。
「アンタ最近様子おかしいけど、どうしたの」
うっ、と言葉を詰まらせる音が聞こえた。
笠原のことはなるべく話を避けようとしているのが見え見えである。
だが益田は、敢えて的を外して聞いてみる。
「何?喧嘩してんの?」
「えーっと……そんな分かる?」
返答に窮して、歯切れの悪さと言ったらなかった。
「そりゃ話にも聞くし、実際こんなだし……もういいや、めんどくさ。正直に聞くね。アンタさ、笠原君のことでどんだけ動揺してんの」
「………」
「いい加減どっちかに絞ったら」
っていうか宮野と付き合ってる癖に。
半分呆れて、半分意地悪い気持ちも込めて言う。
「分かりやす過ぎるんだっつーの。露骨に話逸らそうとしてさ」
「あー……」
明崎は返す言葉もなく、弱ったような声を上げて俯いた。
「笠原君の気持ち知ってるでしょ?」
「……うん」
「一回振っといてさ、何でアンタがそんなうだうだ引きずってる訳。っていうかそもそも選ぶ権利無いし。宮野に対しても酷だよ」
静かな声だが容赦無い益田の叱責に、観念した様子で何度も頷き返す。
「うん、うんうん……ごめん、言われて当然やと思う」
「じゃあ何で」
その様子に益々腹が立ってきて、益田は更に追及した。
「その……」
酷く言いにくそうに言葉を濁すが、益田の強い視線を受け、明崎は口を開いた。
「翔ちゃんとは……別れてん」
「……は?」
益田の心が、一気に氷点下まで温度が下がった。




