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思うようにはいかない

時間とは酷なもので、早く何とかしなくてはいけないことを「どうしようどうしよう」とあれこれ思い悩んでいる人間を置き去りにして、地球をとっとと一周させてしまう。

早く過ぎないか、と思う時には辟易するほどのろのろ遅い癖に。

そんな訳で明崎が宮野と別れてからの時間は恐ろしい速さで過ぎていき、気づけばさらっと一週間が経過していた。

つまり明崎は置いていかれた側で、自分を取り巻く環境は何も変わっちゃいない。


けれど周りはそうでもないようで、この一週間の間に意外な事実も明らかになっていた。

霧ケ原の過去視によって、以前鳥潟に狼藉を働こうとして捕まった男が、やはり益田をつけ回す組織に関係していて、鳥潟を誘拐しようとしていたこと判明したのだ。

偶然その男の記憶を覗いたらしい。

ただ、男は金で雇われていただけのようで、あれ以来組織とは連絡を取っていない様子だという。

保釈金も本当に親族が払ったらしく、男はこのままお払い箱になったという訳だ。

これに至っては霧ケ原が見ただけで、証拠も何も無いので再逮捕まで至ることは無いものの、今後覗くことで組織の情報が少しでも得られるかもしれないという期待が高まった。


大きなニュースといえばそんなものだろう。

後は、鳥潟に寮の部屋替えの話が再び持ちかけられていたくらいだ。

霧ケ原の部屋に移動してはどうかというものだったが、鳥潟はというと。


「……ここがいい」

「Noォォオォォオオオ!!!」


引き続き真っ黒屋敷で暮らすことになり、霧ケ原の断末魔が外の道路にまで響いたらしい。


「いいのか」

「はい。ここだったら皆居ますし……それに笠原君から、お料理教えて貰えるので」

「鳥潟ァ〜……!」


伊里塚の問いにも笑顔で答える鳥潟に、霧ケ原は涙を禁じ得なかったそうだ。


「ふぅん……まぁ、替えたかったらまた声掛けろ」


ちなみに伊里塚は、昨日から関西の研究所へ出張に行っている。

明後日まで帰ってこないという。

益田は相変わらずシイナの元へ通っていて、土日も長く滞在している。

話を聞く限りシイナは元気そうだ。


そして肝心の笠原とは、ますます距離が広がったような気がしていた。


明崎と同じ空間に居ても、一切目を合わせることが無ければ話し掛けることもない。

それは居間に居ようが教室に居ようが変わらず、丸でお互いが存在しないかのように振る舞う日々が続いている。

最早取り返しのつかないことになっているのは誰の目から見ても明らかだ。


──そして。


「……トラえもん出てこうへんかなぁ」


学校の食堂にて。

宙に視線を泳がせ、今日は未来のネコ科型ロボットに思いを馳せることでほんの1・2分、現実逃避を試みていた明崎だったが……

がっくりと力無く項垂れた。


「埋まりたい……」

「また始まったぞー」


明崎のテンションは、この一週間だだ下がりの死にたがりモードである。

一緒に昼食を摂っていた須藤がげんなりした笑みを貼り付けて、隣の霧ケ原に話を振った。

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