表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/234

3

「何が、違うん?」


明崎は静かに聞き返した。


「こんなこと……」

「うん……」

「………」

「……こんなことって何?」


重ねて、聞いてきた。

本当に全部話すまで、帰るつもりはないのだろう。


「迷惑が、掛かる」

「それはもうええからって、さっき言った」

「アンタも、俺の言葉を聞こうとしない」

「………」

「……いつもそうだ。強引に自分の考えばかり押し進めて」


ああ。

どうしてこんなことを言い始めたのだろう。

分からなくなっていた。

けれど笠原の唇は、これまで思っていたことを、思いつくままに話し始めていた。


「自分のせいで他人が不幸になるのを見るのが、どれだけ辛いと思う?」

「…………」

「他人には分からないだろうし……特にアンタには理解する側にはならないで欲しかった」

「……それは、」

「さっきだって、水が暴走しかけただろう?」

「………」

「どうして、放っといてくれなかった」


初めて鱗を見られた時。

あれから全て始まっている。

笠原も悪かった。

明崎が鱗や水を操る力までコピー出来ることを知った時点で、やはり彼には近づくべきではなかったのである。

でなければ、こんなことにはならなかった──


「放っといてくれたら。俺は誰にも迷惑を掛けないように生きるのに」


涙はいつの間にか止まっていた。

笠原の声は、少しずつ低くなっていく。

それに比例して声量は強くなり、怒気すらも滲ませるようになった。


「……皆そうだ。どいつもこいつも”俺”だから……化け物だからと好き勝手に言って、散々罵って。……誰も俺の言葉なんて聞こうとしない。聞く前に”死ね”という」


生まれて来なければ良かったのに、と誰もがその意味を込めた言葉を吐き掛ける。

他人という存在は全て敵に等しかった。

……だから、今まで独りを望んできたのだ。


「ならば生まれなければ良かったか?言われた時に、その場で死ねば良かったか?……ふざけるな。俺だって化け物や人殺しになりたくて生まれた訳じゃない」


じりじりと灼けついた怒りを纏うそれは、最早明崎に向けて言っているものでは無かった。

長年に渡って、それも幼い頃から笠原は、いつ割れるとも知れない薄氷の上に1人で立っているのだ。

冷たい水の中に叩き落されるかもしれない恐怖や、誰にも助けを求められない孤独感、自分が傷つこうが死のうが皆には関係ないのだろうという寂しさ。

積もりに積もった悲しい思いの数々が、複雑に入り混じった激情となって、今笠原の口から飛び出していた。

明崎は黙って、激しく渦巻く憤りを笠原の瞳に見ていた。


「皆、皆お前らの言い分ばかりだ……何故”俺”なのだ?何故”俺”ばかりこうなった?」

「紫己、」

「……何で」


布団を掴んだ笠原の拳がぎゅうっと、更に握り込まれた。



「望んでいないのにっ……俺がこんなことを望んだ訳ではないのに!!」



有りっ丈の理不尽を叩きつけるような叫びが、部屋に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ