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「その時の明崎も心を読んでた訳だよね。もうこの際オブラートも何も包まず言っちゃうけどさ……笠原君、背負ってきたものがまず重たい」

「重たい……?」

「超重たいよ。だって、下手したら笠原君の生死に関わりかねないもん」


心臓がどきりとした。

そんな大袈裟な、なんて軽い言葉で打ち消すことは出来ない。

益田の言う通り、これの為に一体何回死ぬことを考えたか。


「笠原君は小ちゃい頃から大変な思いしてきたでしょ?で、言い方悪いけど……慣れてきてるよね。でも笠原君のそれって俺らみたく何事もなく生きてきたモンにしてみると、ホントに辛いことだし、恐らく耐えられなくて笠原君以上に絶望するヤツなんか一杯いると思うんだ」

「………」

「だから全然辛い思いしたことないヤツが一気に笠原君の悲しいとか苦しいとかを体験しちゃったら……うん。俺だったら無理って泣く。とにかく平静じゃいられないと思う」


──今まで俺、何も分かってやんと君に接してたな。


不意に笠原の脳裏に、あの夜の明崎が映り込む。


──君が思ってるほど、俺なんて全然強ないし、出来てへんよ。


あの時の明崎は笑っていたけれど。

その笑みは微かに翳って、何だか悲しそうな目をしていた。



きっと君が望んでるような関係には、俺ら……なれへんと思う──



──まさか。

笠原は自分の中で浮かんだ答えを、信じられない思いで見つめる。

あの時、笠原が抱えていた気持ちを感じ取っていたのだとすれば。


明崎は、笠原の抱えているものに動揺以上の”何”かを覚えて……それで離れた?


明崎には、自分のことをほとんど伝えたつもりだった。

明崎は話をちゃん聞いてくれた。

そんな姿を幾度となく見てきたので、彼はきっと自分のことを理解してくれているのだと思っていた……いや、今でもそう思っている。

だからこそ、益田の話を聞いて思いついてしまった答えは出来れば信じたくなかった。


「あくまで俺のは憶測でしかないから、真相は本人に聞かない限り分かんないんだけどさ」

「……こんなこと聞けると思うのか?」

「まぁ聞きたくもないよね、そりゃそうだ」


難しい顔付きになった笠原を見て、益田は「ハハハ」と乾いた笑いを零した。

最近よくこの笑みを見せるようになったのは、言うまでもなく疲れているからである。

ホント俺それどころじゃないはずなんだけどなぁ……

よく他人の恋愛なんかに首を突っ込んだもんだ、と益田は自分でも呆れ半分に思った。


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