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大人も子供も変わらない

益田が謎の男達に尾行されていた日から、2週間。

鳥潟が襲われてから……1ヶ月半。

分かってはいたが、調査は思うようにはいかない。


「伊里塚君」

「……遠藤さん」


呼ばれて振り返ると、女性が缶コーヒー片手に立っている。

先輩研究員の遠藤だ。

彼女はシイナの観察と教育を担当している。

伊里塚はこの時になって、身体があちこち固まりかけていることに気付いた。

何時間も研究所のパソコンの前に座っていたので、無理もない。

唸りながらぐーっと伸びをすると、遠藤は艶やかな唇に苦笑を浮かべて缶コーヒーを伊里塚の机に置いた。


「聞いた?例の奈緒ちゃんの」

「朝、連絡が来ました」


昨日付で、鳥潟を襲った男は釈放されたそうだ。

多額の保釈金を積んだらしい。

聞くところによれば、金を出したのは彼の親族だというが……


「捨て駒じゃないのか、余計な情報が拡散されるのを防いだのか……」

「本当にただ変な気を起こした放蕩息子ってだけかもしれない」

「だといいんですがね」

「伊里塚君、あなたっていつも最悪の展開ばかり考えるわよね」

「性分です。俺超ネガティブなんで」


備えておくに越したことは無い。

何もなければそれで良いのだ。


「シイナのこともありますからね」

「そうね。……で、そのシイナ君のことで報告までにだけど」

「伊里塚君」


もう1人、伊里塚の名前を呼ぶ者がいた。

話を遮られ、部屋の出入り口を振り返る2人。

……伊里塚の眉間にほんの一瞬、険が走った。


「そんな嫌そうな顔をしなくてもいいだろ」

「何のご用ですか、原田さん」


薄ら笑いを浮かべる男の研究員。

後ろに撫で付けた髪、銀のフレーム眼鏡を掛けている。

彼は原田と言って、遠藤とは同期に当たる先輩だ。


「用というか、調査の件はどうなっているのか様子を見にきただけさ。伊里塚君は、ほら。力技が多くて見てるこちらがハラハラするんだ」

「あなたにはご迷惑をお掛けするつもりはありませんので、ご心配なく」


遠藤も警戒を表して、目が細くなる。


「私たち仕事の話をしてるから、後にしてくれる?」

「僕のコレも仕事の内だよ。渡辺さんには、くれぐれも後輩の面倒はよく見るように言われてるもので」


いや、お前全然関係ねぇし。

伊里塚は内心で舌打ちをする。

渡辺というのは、原田の属している研究チームのリーダーで、2人して伊里塚を何かと目の敵にしてくる。

大体はこんな風に渡辺が原田をけしかけてくるか、嗅ぎつけたミスを引っさげてこれでもかと伊里塚を詰るかで、正直仕事の邪魔しかしてこない。


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