8
「明崎、これ」
「あ、ぼ、僕も」
笠原がケーキを切り分けている間に、幾つもプレゼントが差し出される。
こちらでも早速明崎は、その場で包装を開けた。
「うっそー!俺欲しい言うてたやつや!わーっ、めっちゃくちゃ嬉しいねんけど!!」
今日は数々プレゼントを貰ったが、一番嬉しかったのは須藤が渡してくれたヘッドホンだった。
一昨日、ショッピングモールの電化製品店で見ていたものだ。
「ちょうど居たしな」
「いや〜、やっぱ欲しいもんは日頃から言うべきやな」
「おい返せ」
「やーだー」
笑っていると、明崎の前に切り分けられたケーキが皿に乗って置かれた。
プレート付きで、心なしかちょっと大きい。
「あ、中身チョコスポンジや!」
「すげぇ、いちご一杯だ」
「あー、美味しそうー」
「へぇー、どこのケーキなん?」
明崎が聞いたら、奏女王がそっと言葉を添えた。
「笠原君、作ったんだよ」
「えっ……!」
びっくりして笠原を見ると、笠原は顔を逸らしてしまった。
「すごいよね〜、スポンジもクリームも一から全部作ってたもん。……笠原君も言えばいいのに」
「いや……食べてくれたら、それで良い、から」
たどたどしく答える笠原。
彼が何も言わない代わりに、周りが答えを埋めていき……
「クリームとか、均等に塗ったり綺麗に飾り付けたりするの難しいよね」
「あ〜分かるわそれ。俺も前失敗した」
「何っ!?柳田もケーキ作るのか!」
「いや1回だけだけど。ケーキ作るの、マジ大変なんだぞ。……スポンジめっちゃふわふわだけど、これアレ?作り方違う?」
「……スポンジだけ、シフォンケーキの作り方を参考にした」
「なるほど、それで!道理でキメが細かいと思ったんだよね。シフォンってメレンゲの硬さ難しいじゃん?よく作ったね」
「ありがたく食うんだぞお前ら」
「「「いぇっさー」」」
笠原がどれだけ頑張って……つまりそれだけ気持ちを込めて作ったかを思い知らされる度に。
それらは幾つもの小さな針となって、明崎の心を刺していく。
……痛い。
丸で、裏切っているみたいだ。
皆がわくわくした面持ちで見守る中、明崎はケーキを一口食べた。
「どう、だ?」
少し自信なさげに、笠原がそっと聞いてくる。
「……美味しい」
クリームは程よく甘くて、いちごの甘酸っぱさと良く合っている。
スポンジはふんわりとした、その名のごとく絹みたいな口当たりだ。
本当に、美味しくて……
そう答えたら笠原は、はにかみながらも嬉しそうに笑った。
今までだったら、明崎も嬉しく思うだけで良かったのに。
もう、素直に喜ぶことができない。
何で、こうなってもうたんやろう──
こんなに泣きたくなった誕生日は、生まれて初めてだった……




