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──やがて真っ黒屋敷が見えてくる。

けれど、部屋の電気が何処も点いていない。

真っ黒屋敷ならぬ真っ暗屋敷だった。

スクーターを走らせながら、ん?と明崎は首を傾げる。

須藤はともかくとして、笠原は今日バイトなど入れていただろうか。

多分、休みだったはず……

家のそばにスクーターを停めた明崎は、訝しく思いながら玄関の鍵を開けた。

ガラガラガラ……

真っ暗な廊下に、引き戸の開く音が何処か虚しく吸い込まれた。


「ただーいまー」


声を掛けても、返事は返ってこない。

言うまでもなく、踊り場に須藤と笠原の靴は無かった。


「……出掛けとる、か」


自分も出掛けていたので、こんなことを言える立場でもないけど……

今日は色んな人に祝ってもらって、嬉しかったし楽しかった。

その気持ちは本当だ。

けれど、自分の中で一番「おめでとう」と言って欲しかったのは、真っ黒屋敷の同居人を始めとしたセカンドチャイルドの仲間たちだった。

……正直、須藤が明崎の誕生日を全く覚えていないことに、かなりへこんでいる。

何と言っても入学当時から一緒に過ごしている友人だ。


覚えとって欲しかったわ〜……

あー……

誰も居うへん。

なんかちょっと、寂しい。


玄関から上がって廊下の電気を点けると、まずは自分の部屋へ行こうと居間に向かった。

ガチャッとドアを開けると……酷く冷たい空気が明崎を襲った。

そうして鳥肌が立ったのは、足元を見た時だった。

手から紙バックが、落ちた。


「え……」


廊下から差し込む明かりに照らされて、床に倒れ伏している人物が居る。

こめかみにはべったりと紅い血が付着していて──


誰か察した瞬間に明崎は絶叫した。


「うわぁああああああぁぁあっ!!!」


信じられないことに、それは須藤だった。

明崎は我を忘れて須藤の元に駆け寄った。

虚ろに目を開けたまま微動だにもしない彼の肌は心無しか青白く見えて──


「須藤!?須藤っ……!」


呼び掛けても全く返事がない。

膝をついた明崎は揺さぶろうとして、ハッと思い留まる。

そういえば、揺すっちゃいけない場合もあるって……!

混乱した頭ながらに思いつくも、しかし結局おろおろするだけ。


「あ、ああっ……」


恐怖に視界が狭まっていく。

丸で全身の血管が心臓になってしまったかのように、ドクドクと激しく脈打っていた。


どうしよう、どうしよう、どうしよう……!!


「あ、せ、せや、救急っ、救急車……救急車や!」


明崎は震える手でポケットからスマホを取り出し、119番を呼び出そうとした。


「──おい」


突然冷たい手が、明崎の手首をガシッと掴んだ。


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