8月19日
ついに、……ついに来てしまった。
俺はこの日を待っていた。
8月19日。
俺の、誕生日!
ハッピーバースデー!
イェーーイッ!!
そんなテンションで明崎は目を覚ました。
もちろん気分はすこぶる良かった。
高校に来てからというもの、バイトが出来るようになったのと友達がやたらと増えたのもあって、明崎は誰かしらの誕生日の日にサプライズを仕掛けているのである。
1人で仕掛けることもあれば、数人、時にはクラスぐるみでケーキや菓子を購入して、何も知らない本人をあっと驚かせるのだ。
そうすると照れながら嬉しそうに笑ってくれたり、たまに感激して泣かれたり。
彼らの反応を見る度に楽しくなって、やり甲斐を覚えてしまった明崎にとって今や趣味になりつつある。
しかも見返りを求めたつもりはなかったが、去年の誕生日にはあちこちから声が掛かって、会う度にプレゼントを貰い、ずいぶん盛大に祝ってもらった。
最早学年ぐるみといってもいいくらいだった。
まぁ結局何が言いたいのかというと、今年も若干気になっている訳である。
サプライズは前年より多くやってたと思うし、今回も恐らく盛大だろう。
そんな期待を抱いて、明崎はこの8月19日を迎えたのだ。
一番最初に誕生日を祝ってくれたのは槇だった。
いや、今日の0時丁度から既に何人かが誕生日メッセージを送ってくれているのだが、それらを差し置いて槇のメールを真っ先に開けたのである。
「お誕生日おめでとう」から始まる、槇からの心温まる祝福の言葉。
明崎は早速にやけて、布団の中で撃沈した。
それから一通り送られたメッセージを読んで返信を済ませてから、「よし、起きるか」と明崎は布団を出た。
ちなみに、時刻は朝の10時過ぎである。
部屋を出たが、笠原は居間に居なかった。
ひどく静かで、なんら変わりないいつもの居間である。
「……あれ?」
けれどいつもなら笠原がこの辺りで何かしている時間帯である。
「紫己ー?」
笠原の部屋の前で呼んでみるも、返事が無い。
何処かに出掛けたのだろうか。
……明崎の耳に、階段の軋む音が聞こえた。
廊下を見遣ると、居間の入り口から須藤が姿を現した。
「はよ……」
須藤は眠たげに背中をボリボリ掻きながら、生あくび付きでそれだけ言った。
「……おはよ」
のろのろと冷蔵庫に向かっていく姿を、拍子抜けした思いで明崎は見送る。
目で追われていることに気づいた須藤が振り返った。
「……何」
「いえ、何も」
言いながら「あるぇー?」と内心首を傾げる明崎。
須藤は去年祝ってくれたというか……寧ろサプライズ企画まで仕切ってくれてたのだ。
……あー、忘れられるもんなんか〜。
別に強く望む訳じゃないにしても、去年やってくれたから今年もつい期待してしまうのである。
……ちょっと子供っぽいわな。
まぁ、ええか。と思い直した明崎はその場で流すことにしたのである。




